本文へスキップ

ご訪問ありがとうございます。長野市議会議員の布目ゆきおです。市民の幸せと市民が主役のまちづくりをめざして、日々取り組んでいます。ご意見をお寄せください。

布目ゆきお・ご意見箱市民のひろば
ご意見はこちらまで

長野市議会トピックスTOPICS

2013年5月14日 3月議会の質問から…庁舎・市民会館の建設費17億円増大の問題を質す

 新年度予算などを議決した3月議会、一般質問で質したことを中心に報告します。

 第一庁舎・市民会館の建設事業費は、追加の工事等を踏まえ、当初の134億円から151億円に膨らむことになりました。私は3月議会で、「追加要因を除いても適正な事業費積算ではなく、経費を小さく見せる意図があったのではないか。市民の信頼を揺るがす大問題だ」と質しました。
 最近の庁舎・市民会館を巡る現況等と併せ報告します。

土留め工事始まる
 市役所第一庁舎・市民会館建て替えは、いよいよ建設工事が本格化します。更地となった敷地では、現在、「土留め壁工事」が盛んに行われています。
 駐車場が少なくなるとともに、第一庁舎と第二庁舎の往来が直接できなくなるなど、来庁する市民の皆さんにはご不便をおかけすることになっていますが、安全第一で工事が進捗するようチェックしていきたいと思います。
 新第一庁舎は防災拠点機能の強化と市民の利便性の向上を図るとともに、新市民会館は質の高い文化芸術施設として、H26年度の竣工を目指しています。7月から建設工事が始まる予定です。H25年度予算では、本体建設工事費などに19億6,500万円が計上されています。

実施設計固まる庁舎・市民会館
 4月中旬、建て替えを進めている第一庁舎・市民会館の実施設計が決まり、完成イメージ図が公表されました。昨年8月段階での基本設計に対する市民意見等を踏まえ、大ホール舞台奥行を約18m拡大、大ホールへのサブ搬入口の追加、楽屋の大きさの見直しが図られました。
 また、正面入口ロータリー内の車いす用駐車場や通路部分に屋根を設置するほか、各階に多目的トイレを設置するなど、ユニバーサルデザインに配慮したとされます。【写真は「実施設計概要」より】
 報道によれば、市民会館の屋根に太陽光発電装置を設置し、空調の熱交換には地下水を利用する予定で、エネルギーを節約し緑を増やすなど「エコロジカルな施設」としていくとされます。新市民会館大ホールは、壁面に県産材を活用し、信州の山並みを表現するそうです。
 基本設計を担当するのは槇総合計画事務所ですが、当該事務所が手がけた広島県三原市芸術文化センターの大ホールとそっくりです。山並みを表現する壁面のデザインが違うくらいでしょうか。全体的に「長野らしさ」のコンセプトがイマイチ伝わってこないなというのが第一印象です。
 ワンストップサービスの実効性など、総合窓口支援システムのあり方や来庁者の動線を見極めて検証したいと思います。とはいえ、実施設計図から「読み込む」のは、私にとっては至難の業菜なのですが…。想像力をフルを働かせなければなりません。
【参考】新庁舎と新市民会館実施設計の概要版

なぜ、建設事業費=151億円なのか
 さて、3月議会で取り上げた問題は、庁舎・市民会館の事業費増大が内包する問題です。
 新庁舎・新市民会館の建設事業費は、基本計画段階で新庁舎50億~65億円、新市民会館は約69億円程度とされ、合計で119億円~134億円と想定されると市民に説明してきました。そして、基本設計段階では、庁舎65億円、市民会館69億、計134億円の事業費、その財源等を示し市民の理解を得てきたものです。その際、さらに事業費の圧縮に努めるとの姿勢が強調された来たことは言うまでもありません。
 ところが、市側は3月議会の直前、実施設計に入っている段階で、総事業費が134億円から17億円増大し、最大151億円となる見通しを示しました。
 事業費増大の理由は、パブリックコメントや議会側の要望等を踏まえ、工区分割発注の実施(1.2億円増)や地下2階への小ホールの設置(3.5億円増)、ホール面積の増加(2.8億円増)、コンクリート・型枠工の相場高(1割程度の増)などによるとします。私は、こうした事業費増は、地域経済の振興と公共工事の品質確保のためにも、ある程度やむを得ないものと受け止めます。
 市では新たな国の補助金活用により、市の新たな負担額は当初の10億円から10.1億円に増えるものの、最終的には151億円からさらに圧縮され、市の負担額も減少する見込みとします。入札・契約を迎える段階でしっかり検証しなければならない課題です。

あり得ない「落札ベース」での事業費積算
 私が問題とした点は、これまでの134億円の事業費は、他市の類似施設の落札額から算出したもので、「落札ペース」であることを明らかにしたことです。151億円という事業費は、設計変更に乗じ、本来あるべき「予算ベース」の事業費に転換・修正されたものです。
 本来、入札を前提とする公契約における事業費は、設計基準や公共工事設計労務単価等をにより積算され、予算ベースで公表されることを前提としています。
 建設事業の場合、設計単価を積み上げ、予算ベースで事業費を見込みます。そして、行政が発注し、入札を経て落札します。落札率は概ね90%から95%となるでしょう。受注する事業者は、競争原理のもと、利益を見込んで落札するのです。例えば、100億円の事業費の場合、90億円が「落札ベース」ということになります。
 ところが、そもそも、行政が「落札ベース」の90億円を事業費に見込み入札したとしても、事業者は利益が出ませんから、入札が成立しないことになってしまうのです。

公正な入札を阻害する「イレギュラーな事業費提示」
 市の建設事務局は「イレギュラーな事業費提示となり陳謝する」としました。しかし、一方で市長は議会冒頭の施政方針で「建て替えの検討にあたり、現実の支出額である決算ベースで検討することが適切と判断」と述べ、公契約・入札において、公正性・競争性・透明性を担保すべき行政の責務を忘れ、開き直りともいえる答弁を行いました。
 百歩譲って、市行政内部で、現実的な支出を考え、落札ベースで検討することは十分にあり得るでしょう。しかし、市民に開示し約束する事業費は、「イレギュラー」であってはなりません。「無理な金額での設計は、市の工事発注としても不適切」(総務部長)とするように、入札行為に入れないのですから。
 「入札はまだだから、軌道修正し、実害はないのだからいいでしょう」みたいに開き直る市政は、無責任のそしりを免れません。

「事業費を小さく見せる意図が働いたのではないか」と指摘
 第1庁舎・市民会館の建て替えを巡っては、建設地に始まり、建設の是非を問う住民投票の如何を含め、紆余曲折を経てきました。
 私は、「市民の理解を得ようとする余り、経費を小さく見せる意図があったのではないか」と強く質しました。
 総務部長は「そのような意図は全くない」と否定しますが、釈然とはしません。何故、落札ベースのイレギュラーな事業費で市民の理解を得ようとしてきたのかとの責任ある説明にはなっていないからです。

市長に公式謝罪を迫る
 今回の顛末は、建設事業に対する市民の信頼を揺るがせることになります。市長に公式謝罪と市民説明を迫りました。市長は「正確な情報提供という点で、配慮に欠けていたことをお詫びする。施政方針市民会議等で市民に説明していく。今後も契約の公共性・透明性の確保を図る」と答弁しました。

注目される建設ラッシュの長野市だからこそ…
 大規模建設プロジェクトを10も抱える長野市は、ゼネコンをはじめ建設業界から注目されます。故に公契約・入札には最大の神経を働かせなければなりません。公共工事の発注において、予算の適正な執行が阻害され、納税者である市民の利益が損なわれるようなことがあってはなりません。
 今回は、課題を残しつつも、建設事業費が正常化されたとの認識に立ち、予算案には賛成しました。

建設事業に厳しい眼を
 しかし、予算原案に対する賛成討論で、改めて問題点を指摘しました。討論の内容は既に報告していますが、ポイントを採録すると…、
❶市側に求められた姿勢は、「基本計画・基本設計段階で示した建設事業費134億円という数字は、行政が市民に向かって、あるいは外に向かって、示すべき事業費としては不正常で不適切な数字であり、建設事業の発注に際し、今回、追加要因に伴う事業費増と合わせ、総事業費の見直し・正常化を図らざるを得なくなった。市民に誤解を与え、予算の適正な執行という点において課題を残した点を率直に謝罪し、見直し・正常化された総事業費において、さらに今後、実施設計を詰める段階で、事業費の圧縮に努めたい」とし、市民の深い理解を求める謙虚な姿勢で臨むことにあること。
➋今回の顛末を通じ、市民の信頼を揺るがせたことを深く自覚し、改めて市民に対し説明責任を果たすことが必要なこと。
➌さらに、建設事業の発注・受注、工事の進捗のプロセスにおいて、ブラックボックスがないよう、透明性・客観性が担保されるとともに、適正な価格のもとで公共工事の品質が保持されること。
…などです。
【参考】平成25年度当初予算原案に対する賛成討論[ブログページにリンク]

建設着工、文化芸術財団の設立に向かう中で
 いよいよ入札・契約の段階を迎えることになります。市側の説明責任を追及するとともに、公正な公共工事の契約、工事における品質の確保に向け、引き続き厳しい眼をもって臨みたいと思います。
 また、新市民会館を運営する新しい文化芸術財団の設立、芸術監督の選任なども大詰めを迎えます。長野市の新しい文化芸術活動の牽引役となりうる財団のあり方、プロデュースのあり方についても、間違いの無い道筋をつくっていくことが問われます。
 新しい文化芸術財団の課題については、別途報告します。