さいたま市議会(11月14日議会運営委員会視察より)
さいたま市はH13年に浦和市・大宮市・与野市が合併(H15年に岩槻市と合併)して誕生した埼玉県初の百万都市で県庁所在地。面積217.49㎢に53万世帯、人口123万人を擁する政令指定都市。財政規模も4400億円に上る。
さいたま市議会の視察テーマは➊議会運営・議会の活性化、➋インターネット議会中継・市議会テレビ広報、➌会議録検索システム、➍議場大型スクリーンの活用、の4点。
さいたま市議会における議会改革等のポイント
(1)議会運営・議会の活性化…予算委員会を常設、総合計画を議案化、議会局機能の強化
①市議会議員定数は60人。
②常任委員会は総合政策(12人)・文教(12人)・市民生活(12人)・保健福祉(12人)・まちづくり(12人)・予算(20人)の6つで、予算委員会を設けていることが特徴。
③特別委員会は、政治倫理・大都市行財政制度・議会改革推進・地下鉄7号線延伸事業化・見沼田圃将来ビジョン・決算・行政評価の6つ。議会改革推進を特別委として設置しているがポイント。
④議会運営委員会は年間53回(時間にして約22時間)開かれている。長野市議会は年15回程度(時間にして約10時間)。
⑤主な議会改革として、
*出席費用弁償の廃止(H19)…長野は実費弁償をしているが、地域性の問題であろう。
*政務調査費使途基準運用指針を策定し、支出調査を第三者機関(公認会計士1名・年間500万円)に委託(H19)…長野は議会事務局がその役割を代行しているが、透明性確保の観点からは有効か。
*自治法改正を受け、議会事務局を議会局に名称変更し、総務部(秘書課・総務課)と議事調査部(議事課・調査法制課)を置く(H20)…なるほど。
*予算委員会を常設化、これにより年間会期日数が90日から130日に拡大(H20)
*政務調査費の支給対象を「会派及び議員」に改正(H21)…懸案課題。
*「申し合わせ事項」を「会議運営規程」へ規程化(H21)…必要なことかも。
*議会基本条例を制定(H21)
*「議決すべき事件等に関する条例」を制定し、基本計画、都市宣言を議決案件に(H22)…実施すべき事項だ。
*附属機関からの委員等から議員が撤退する条例を制定(H23)…長野市議会実施済み
*議会運営委員会と議会改革推進特別委員会の役割分担として、議運は会期の在り方や採決態度の公表などを審議、特別委の方は調査機関を設置し報酬等を審議、またコンプライアンスの確立のため、公正な職務の執行に関する条例などを提案しているそうだ。
(2)委員会審査もネット中継、議会独自のテレビ広報番組を開設
①H17年9月から本会議のインターネットライブ配信と録画配信を実施。H21年9月からは決算・行政評価特別委員会(9月定例会)及び予算委員会(2月定例会)を加えている。
②本会議はカメラ3台、委員会はカメラ2台を配置。年間経費は467万円(委託費と機器賃貸借費)。
③効果は、審議状況を映像で市民に伝えることができること、会議録公開前に会議内容を速報的に伝えることができるとする。課題は携帯端末での視聴を可能にするための対応とする。
④また、独自に「ようこそさいたま市議会へ」のテレビ広報番組(テレビ埼玉で14分番組)をもち、市議会HPで録画配信している。議案等の審査結果の他、正副議長・常任委員会正副委員長のインタビュー、市民インタビューを内容とする。経費は622万円。
⑤効果として、メディアの特性を生かし、議会活動をわかりやすく市民に伝えることができること、インタビューなど他の媒体では伝えることのできない内容を含めることで市民の議会への関心穂深める契機となることを挙げる。課題は視聴率調査等で放映効果の分析を行うことだそうだ。
(3)委員会会議録も会議録検索システムで公開
①H15年から本会議録検索システムの運用を開始し、H17年から委員会記録検索システムを運用している。
②常任委員会は全文記録、特別委員会は議案及び請願審査が行われた会議のものを全文記録で作成し、市議会会議録検索システムで公開している。
③経費は約250万円。サーバー使用料に76万、本会議テータ作成に67万、委員会データ作成に107万。
④課題は携帯端末の対応。システムに「ディスカス」を使用しており、見直しを検討課題とする。
(4)議場に150インチの大型スクリーンを導入
①一問一答方式による質疑・質問の実施(以後、一定の項目で区切る分割質問方式に移行し、代表質問も分割質問方式を採用)により、対面式演壇を新設するとともに、議場内に150インチの大型スクリーンとOHC(書画カメラ)を導入。スクリーンは質問する様子を映写するとともに、質問時の補足資料(パネル等)を映写する。工事費は約1460万円だ。
②分割質問方式により、論点がより明確になり流れを把握しやすくなったとともに、補足資料等のスクリーン映写で傍聴市民にとってわかりやすい議論の実践に資することができているとする。
【写真:質問席と大型スクリーン】
参考にすべき事項として
(1)予算委員会を常任委員会として設置し、集中審議している点は要検討だ。他の常任委員会は予算を除く議案審査となることから、バランスを考える必要があろう。県内では全議員による予算委員会の設置、分科会での審査という方式もとられていることから、総合的な検討が求められよう。
(2)委員会会議録の検索システムへの導入は不可欠。会議録検索システムの携帯端末への対応は課題である。議会運営委員会の議事録も検索システムで公開している点は特筆すべき。また、委員会のネット中継も実現を図りたい。中継した場合に市民の期待を裏切らないような審議・討論がされていることが不可欠となろう。緊張感ある委員会審査を実現することにつながりそうだ。議会審査の透明性・公開性は優れているといえよう。
(3)議場に大型スクリーンがあって、資料等を映写できる仕組みは効果的だと思う。あった方が良いのだが、費用のことも考えたいところ。新庁舎の中で考えたい事項である。
(4)総合計画などを「議決すべき事件等」とする条例を制定している点は、長野市議会も導入したい。自治法改正により基本計画が議決案件から外れた今日、早期に導入が必要である。
(5)政務調査費の調査を第三者機関に委託している点は、透明性を高める上で有効だと思われる。しかし、議員自らが運用指針に基づき適正に活用する規律を高めることがより重要だとも思う。また、支給対象を「会派及び議員」としている点も検討したいところである。
(6)さいたま市議会の議会報は「ロクマル」という。60人の議員から命名しているようだ。オールカラーの12ページもの。ビジュアルで「あか抜け」ていて読みやすいものとなっている。トピックス的な要素を盛り込んでいる点が注目かなとは思う。質問議員や議決状況の掲載など議会報告としてのボリューム・内容は、長野市議会が勝っていると思う。詳しくはホームページへと振っている点など、大都市自治体ならではかと思う反面、ビジュアル面では参考にしたいところはあるといえよう。
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