3月定例会報告を内容とする5月1日付「議会だより」がお手元に届いていることと思います。編集委員長として議会たより制作に携わっています。
ここでは、自分の頭の中を整理する意味で、3月議会の焦点・論点をまとめています。県議選等があり、かなり時季外れの報告になりますこと、ご容赦ください。 |
3月議会は1,547億6千万円の新年度一般会計予算案を可決しました。1月の臨時議会で成立した12億6千万円の補正予算と合わせ、1,560億2千万円の事業規模を確保し、景気対策・地域活性化のため切れ目のない予算としています。年度予算案の特徴と課題、そして東日本大震災を受けての自治体財政の将来と施策の優先度について所感をまとめました。【図表は信毎より】
■優先3施策に134億5千万円
子育ち・子育て支援、エネルギーの適正利用、公共交通機関の整備を優先施策と位置づけ、予算総額の8.7%を充当。[額は10万以下切り捨てで表示]
➊子育ち・子育て支援…124億3,400万円
放課後の子供の安全・安心の居場所を確保しようとする放課後子どもプランの推進で、学校内施設(子どもプラザ)を34校区から44校区に拡大[5億8,000万円]
公立子育て支援センター6カ所と保育家庭支援課に看護師を新たに配置。子育てに関する相談の充実を図る。[8,100万円]
妊婦健診14回分の公費負担を継続し、検査項目を追加[3億8,100万円]
不妊治療助成を拡充。1年度あたり2回まで、1回あたり15万円を限度に助成。初年度に限り2回から3回に拡大[5,700万円]
国施策の子ども手当の支給。当初予算では中学修了まで支給される子ども手当について3歳未満は2万円、3歳以上は1万3千円で予算化。その後、国の見直しで現行制度を9月まで継続することになったため、総額は減少する。子育ち・子育て支援総額の124億3400万円の3分の2を占めることに。[85億4,200万円]
小学生3年生までの乳幼児等医療費給付金事業(福祉医療費)を継続[19億8,600万円]
➋エネルギーの適正利用…3億5,400万円
省エネ照明機器(LED等)への建て替えや改修に補助金。地球温暖化対策の一環で商店街の街路灯を対象とするもの。[8,600万円]
太陽光発電システムの設置に補助。一般家庭や店舗や事務所など事業者も対象にして継続。補助単価を切り下げて(出力4kw以下は1kw当たり3万円から2万円に)、普及件数の拡大にウェイト。1,200件を見込む。
浅川支所・公民館、更北公民館、象山保育園など公共施設への太陽光発電装置を設置[6,500万円]
奥裾花観光センター等に小水力発電で電力供給へ。無電化地域にある同施設はディーゼル発電を行っているが、自然エネルギーの有効利用を図るため、小水力発電システムに移行させる。今年は実施設計段階。[1,300万円]
日帰り入浴施設にリニューアルした「保科温泉」で、化石燃料からバイオマス燃料への転換を図るため、木質バイオマスボイラーを新たに導入。[3,900万円]
➌公共交通機関の整備…6億5,600万円
生活バス交通の活性化に向け、ICカード乗車券の導入、地域循環バスの実証実験、電動バスの実証実験等を計画。[3億1,300万円]
長野電鉄が予定する鉄軌道近代化設備の整備に補助金。国や沿線自治体との協調補助で総額1億9千万円、市負担は一部。[540万円]
合併地区における市バスの運行、廃止代替バスへの補助、交通空白地域における乗り合いタクシーの運行や地域循環コミュニティバスへの運行補助などを継続。[2億2,300万円]
■大規模プロジェクト7事業に優先財源配分…120億7千万円
➊市役所第一庁舎建設事業で基本設計やオフィス構築、現市民会館解体工事等に8,500万円
➋長野市民会館建設事業で基本設計や解体工事等に1億3,000万円
➌斎場新設事業に2億9,700万円
➍ごみ処理施設広域負担金、広域連合で取り組むごみ処理施設の建て替えに向けた費用で4,200万円
➎長野駅善光寺口駅前広場整備事業に5億200万円
➏長野駅周辺第二土地区画整理事業に29億9,900万円
➐小中学校の耐震化事業に80億1,100万円
H22年度に比べ、47億9,300万円、65.9%の増となる。
■その他の新規・拡大事業
32の住民自治協議会の事務局人件費を100万円から190万円に増額、事務局のフルタイム勤務を促すもの。世帯数に応じ交付金が加算されることに。地域いきいき運営交付金は総額で2億8,900万円。
東条・大岡・加茂保育園の耐震診断・耐震改修に1億5,000万円
ひとり親家庭の高校生への通学費援護金、父子家庭にも支給へ
市の社協に設置する「成年後見支援センター」に社会福祉士を常勤に。専門的かつ継続的な相談体制の確保が狙い。
70歳以上の高齢者が1回100円で路線バス等を利用できる「お出かけパスポート」事業費は2億1,300万円に。
子宮頸がんワクチン、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンの接種費用を全額公費負担で実施へ。7億500万円。
大腸がん検診に無料クーポン券を導入。40歳から60歳までの5歳刻みの市民を対象。1,500万円。
市民病院に、子宮頸がんの放射線治療装置「ラルス」を導入するとともに手術室を7室から1室増設、がん診療、救急医療の充実を図る。3億9,400万円。
消防救急無線のデジタル化に向け基本設計に。4,300万円。
小中学校の図書館職員の手当に対する補助金を増額。24学級以下では1校当たり67万2千円に、25学級以上では75万6千円に。総額9,800万円。
旧まちづくり交付金を活用し、長野駅コンコースで市民街角コンサートを実施へ。7月から12月の特定土曜日で年6回計画。137万円。
篠ノ井イヤー・信州新町イヤーイベントに4,500万円。篠ノ井地区は2,200万、信州新町地区は1,700万。
長野市の魅力を全国に発信し、対外的な認知度や都市イメージの向上を図るための「シティプロモーション推進事業」に着手。650万円。
新規就農者支援事業に着手。3年間のモデル事業で今年は925万円。
過疎債を活用してソフト事業を対象に過疎地域自立促進基金を創設。1億7,200万円。
雇用創出企業立地支援事業助成金で、人数要件を緩和。雇用拡大を支援する制度だが、事業所等を新設、移設または増設した場合で、3年以内に市内から新たに一定人数以上の常勤雇用者を採用する企業に対する助成金。中小企業では15人以上を10人以上に、中小企業以外では30人以上を20人以上に緩和する。1人当たり10万円を助成。
セントラル・スクゥエア内に長野五輪のメモリアル・ポケットパークを整備。2,800万円。
■新たな借金=市債発行は171億5,000万円、市債残高は1,406億円を見込む
小中学校の耐震化をはじめとする大規模プロジェクト事業の本格化に伴い、新たな借金は前年度予算比で15億円増の171億5,000万円。元金償還金(借金の返済)は181億円を予定し、年度末での市債残高は一般会計で1,406億円、しかし、企業会計分の市債残高は1,660億円あり、合計では3,070億円に上る。子どもからお年寄りまで市民1人当たり79万3千円の借金を背負っている格好だ。
残高1,406億円のうち65.8%の925億円は償還時に地方交付税措置される見通しとする。
■基金から26億円を取り崩し
貯金にあたる基金残高はH22年度末で360億円を見込んでいるが、H23年度は財政調整基金から16億円、減債基金から5億円、土地開発基金から5億円、計26億円の基金を取り崩す予定。
一方、新たな積立として合併特例債を活用した地域振興基金に10億円、過疎債を活用した過疎地域自立促進基金に2億円を予定。H23年度末の基金残高は343億円を見込む。
■10年間の財政推計による大規模プロジェクト事業費は950億円
3月議会中に明らかになった今後10年間の財政推計では、大規模プロジェクト事業のピーク時期にあたるため、H27年度までは歳入不足となり基金を取り崩して不足を補う見込みとなり、その後は事業費の減少に伴い増加に転じる見込みとする。借金である市債借入額はH27年度の247億円をピークに減少、10年後のH32年度では102億円で現状より減じるとする。
【H23年度からH32年度までの大規模プロジェクト事業の所要経費】…30億円以上の事業
事業名 |
事業費 |
備 考 |
新市役所第一庁舎建設事業 |
65 |
平成26年度竣工予定
延床面積:12,000㎡~16,000㎡(事業費は面積により50億~65億円) |
新長野市民会館建設事業 |
69 |
平成26年度竣工予定
延床面積:11,500㎡ |
斎場新設事業 |
59 |
大峰斎場:平成26年6月供用開始予定松代斎場:平成26年度末供用開始予定
その他アクセス道路改良等関連事業 |
ごみ処理施設広域負担金 |
100 |
事業費は平成32年度までの長野市負担金のみ計上
構成:長野市、須坂市、千曲市、坂城町、高山村、信濃町、小川村、飯綱町 |
ごみ焼却施設周辺整備事業 |
86 |
新サンマリーン・複合施設建設、資源化施設等改修、現焼却施設解体、公園整備 |
長野駅善光寺口駅前広場整備 |
45 |
事業期間:平成22年度~26年度
駅前広場整備=6,800㎡ |
長野駅周辺第二土地区画整理事業 |
153 |
事業期間:平成5年度~28年度
仮換地指定率:83%(H23末見込み)、家屋移転割合:76%(H23末見込み) |
小中学校耐震化事業 |
373 |
耐震化率の見込み
平成23年度末=82% 平成25年度末=90% 平成31年度末=100% |
合 計 |
950 |
|
■東日本大震災で復興財源確保が喫緊となる中、市民の安全・安心をいかに守るのか
3月議会の最中に発生した東日本大震災、未だに11万人を超える被災者が避難生活を余儀なくされている。福島原発事故の収束は見通しがつかない。まさに「国難」といえる非常事態だ。とりわけ、原発事故は、私たちのこれからの社会の在り方、そして一人一人のライフスタイルの在り方を根本から問い直している。復旧・復興には20兆円を超える財源が必要とされる中、この復興財源をいかにつくるかは、自治体においてはどのような財政運営を考えるかに直結する。
国においては本来、一般会計と災害復旧・復興会計の2本立てとなるところだが、限りある財源を有効に活用することを考えざるを得ず、地方交付税や国の補助事業の見直しが進められるのではないかが懸念される。自治体において不要不急な事業の見直しを急ぐ必要がある一方で、社会保障をはじめ市民生活に直結する行政サービスは守らなければならない。
こうした中、向こう10年間で950億円もの巨額な資金を要する大規模プロジェクトが眼前に横たわる。学校の耐震化、東口の区画整理事業は待ったなしだ。ごみ焼却施設の建設はごみ減量とセットで規模の見直しが必要となろう。
端的に言えば、市民会館・第一庁舎の建て替えを既定方針通り進められるのかという問題だ。「建て替えではなく、耐震補強工事で費用を節約し、その分を復興財源に」との意見は、心情的には理解できる。また、合併特例債という有利や借金を活用することを前提とした計画であることから、この緊急時、国の負担ともなる借金はなるべく減らすべきとの意見も重く受け止めたい。
しかし、大震災で、庁舎をはじめ公的施設が市民の避難拠点として機能し続けられる強度を保持しなければならないということも教訓としたい。合併特例債については、償還期間の延長(交付税措置の期間の拡大)も検討されるのではないだろうか。合併を推進してこざるを得なかった地方自治体側からの国への働きかけも具体化するのではないかとも思う。
いずれにせよ、国の方針の具体が急がれる。同時に、地方自治体・長野市においては、将来を見据え、市民にとっての必要度・優先度を吟味し直し、臨機応変に、かつ柔軟に、既定方針の見直しに取りかかれる度量の深さ・広さを持つことが望まれる。(極めて総論ではあるが…)
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