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2010年12月2日
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長野市民会館建設の今日的課題と今後の対応

12月議会冒頭で市長は…

12月2日、12月議会の冒頭の議案説明で市長は「11月22日に示したたたき台を基に、議会と十分に意見を交わすとともに、市民にはホームページ等を通じて知らせ、意見を寄せてもらいたい」「合わせて建設検討委員会と市民ワークショップから意見を聴き、12月中に『現在地における望ましい施設配置案』を取りまとめ、基本計画の策定、基本設計へと歩みを進めたい」と述べ、また権堂地区の再開発については「議会と十分に相談しながら検討する」と述べるにとどめた。
市民会館建て替え問題では、11月4日に「建設地の決定について」を発表、11月22日には、現在地における市民会館と第一庁舎の配置案を「たたき台」として示してきた。
 11月29日に開かれた第一庁舎及び市民会館調査検討特別委員会は、12月13日に予定する次回特別委員会で、①現在地での建設に賛成か反対か、②現在地での建設の場合の条件や要望、③現在地での施設の配置案、④その他の4点について意見集約する方向性を確認。また12月6日には市民ワークショップ代表の皆さんとの意見交換を行うことも確認した。建設検討委員会の皆さんとの意見交換は行う方向で検討するとした。また、権堂地区の再開発は切り離し、別の所管委員会(まちづくり対策特別委員会と思われる)で審議することとしている。
私は11月以降、これまで断片的に所見・所感を述べてきたが(註*)、12月議会の議論が始まったことから、私自身の考え方をまとめてみた。整理されていない駄文だが、ご意見をいただければ幸いである。なお、「県民主権を進める会」の皆さんが実施した世論調査結果とその受け止めについては、「同会」から議会各会派に対する公開質問状が提起されるとの報道があり、改めてまとめたいと思う。
 *建設地に関する提案[市民ネット]・pdf版
 *11月5日の「徒然日記」及び28日の「徒然日記」

1.  現在地で建設の方針転換について
  (1)方針転換は支持
(2)権堂に別の文化施設は論外
(3)「市民会館及び庁舎建て替えの基本的な考え方」
(4)市民会館の機能分散を想起させた「現在地を中心」の意味合い
(5)排除された「そっくり建て替え案」
2.  第一庁舎、市民会館の配置・建て方について
  (1)二つの配置案
(2)A案、B案の共通点
(3)A案、B案の相違点
(4)B案を基本に検討を深めることがベター
(5)ワンストップ・サービスについて
(6)市民の芸術文化活動の日常的な拠点とするために
3. 権堂東街区の再開発事業について
  (1)別の文化施設は論外
(2)そもそも活性化につながる再開発になり得るのか
(3)ゼロベースで再検討を
4. 市民合意の形成について
  (1)二つの課題
(2)現在地での建設に知恵と工夫の再結集を
(3)改めて市民説明会を


1.現在地で建設の方針転換について
(1)方針転換は支持
 市民会館の建設地について鷲沢市長は11月4日、議会の意見を重く受け止め、権堂東街区での建設を断念して、緑町の現在地を中心として、議会と十分相談しながら検討を進め、12月中旬までに計画を決定するとの方針を、市議会各会派に対し正式に表明するとともに、記者会見で市民に明らかにした。議会の意見を踏まえ、現在地での建設に方針転換したこと自体は、当然の帰結としても「賢明な判断」として評価、支持したい。
(2)権堂に別の文化施設は論外
 しかし、この段階では、権堂東街区に文化交流施設を建設するという全く新しい方針が示されるなど、新しい重大問題をはらむ方針転換であったといわなければならない。権堂東街区に別の文化施設を建設する方針に、市民の理解が得られない。論外の方針といわなければならない。権堂の再開発問題は、その後、「合併特例債の活用にこだわらない。権堂の再開発は必要だが、非常に大きな話なので十分検討していきたい」(24日の記者会見で)と表明、事実上の仕切り直しを滲ませている。
(3)「市民会館及び庁舎建て替えの基本的な考え方」
 市長は「市民会館及び庁舎建て替えの基本的な考え方」として、次の5点を示した。

➊市民会館は、基本構想の理念に沿って、文化芸術振興が図れる施設とする。
➋建設地は現在地を中心とする。(両施設の併設を前提とし、庁舎の仮移転はしない)
➌中心市街地の活性化のため、権堂B-1地区(東街区)の再開発事業は実現する。(文化交流施設など)
➍合併特例債を活用し、H26年度までに建設する。
➎施設整備にあたり、将来の都市構造に配慮した道路整備が可能な配置とする。(市役所南部方面への相互交通化) 

 その上で、「今後の方向性」として、「議会の意見を踏まえ、市民会館は現在地を中心とし、議会と十分に相談しながら検討し、12月中旬ごろまでに決定する」とした。
(4)市民会館の機能分散を想起させた「現在地を中心」の意味合い
 市民会館を「現在地で建設」ではなく、「現在地を中心に建設」としたことについて、説明の折に、私はその意味合いを質した。例えば、メインホールとサブホールを分割して、現在地と権堂にそれぞれ文化施設を建設することを考えているのではないかと疑ったからだ。議会の意見にも応え、再開発準備組合の意向にも応える案として、いわば、どっちにもいい顔をする妥協案として浮上しているのではと思ったのだ。権堂にのめり込み固執する市長の「奥の手」かと穿ったものだ。
 結果として、「中心」の意味合いは、現在の第一庁舎玄関棟を含む敷地を考慮、また第二庁舎南側の駐車場等の活用の検討に余地を残したい考えが反映されたものであったようだ。
(5)排除された「そっくり建て替え案」
 現在地を中心として建設する基本的な考え方からは、庁舎と市民会館をそっくり建て替える案は排除されている。庁舎の仮移転に11億円必要であると試算され、市長は「11億円は全くの無駄」とする。私は、合併特例債を活用し二つの施設をそっくり建て替える案は、現在地での建設の制約を解消できることから、検討に値すると考えてきた。確かに、3年間の仮庁舎対応は市民に不便を強いることになるのだが、第2庁舎の活用を柱に合併地区の支所を活用することで市民サービスの一時的な低下を最低限にすることはできないのか、仮庁舎に11億円は50年のスパンで考えれば、許容できる投資ではないのか、とも考えてきた。
 しかしながら、全体の事業費の抑制・縮減、税金の有効活用を第一義に考えれば、いたしかたないと言ったところか、仮庁舎を伴う「そっくり建て替え案」は、過大過ぎると判断する。

2.第一庁舎、市民会館の配置・建て方について
(1)二つの配置案
 11月22日、現在地での建設にあたっての施設の配置案として二つの案が示された。詳細は長野市ホームページを参照。A案は、これまで示されてきた二つの施設を並列で独立した建物として建設する併設案。B案は、二つの施設を一つの建物として建設、ロビーなどを共有する一部合築案だ。メインホールの規模は1500人から1300人程度に縮小され提案された。【図表参照】

(2)A案、B案の共通点
 両案とも、延べ床面積は市民会館が1万1500㎡、第一庁舎は1万2000㎡を基準とし、市民会館のメインホールは1300席、サブホールは300席とする。建設費は市民会館が69億円、庁舎が50億円。駐車場は立体駐車場を建設し750台分を確保(5億円)、路線バスが乗り入れ可能なロータリーも整備する。また、「将来の都市構造に配慮した道路整備が可能な配置」とする考え方から、現市民会館南側のJR踏切の改修を含め南部方面への相互交通化を図るため、両施設の南゛の道路を整備する将来方針を示した。【図表参照】

(3)A案、B案の相違点
 二つの案の大きな違いは、形状は別として2点ある。一つは庁舎・市民窓口のフロアー・階数。A案では市民窓口が1階~3階、B案では2~3階となる。もう一つは、市民会館メインホールの入口の階数である。A案は2階となり、舞台への機材搬入のためにトラックリフトが必要となる。B案は1階で地上面で機材搬入ができる。

(4)B案を基本に検討を深めることがベター
 私は、両案に長短があるが、構造上からB案を基本的に支持したい。舞台への機材搬入でトラックリフトを必要とする文化施設は使い勝手が悪い施設になるからだ。その上で、第一庁舎ではワンストップ・サービスの市民サービス向上が図れるのか、市民会館ではメインホールの規模として1300人が本当に妥当で必要なのか、市民の芸術文化活動の日常的な拠点として機能できるのか、イベント主催者側の利便性が確保されるのかといった視点からの検討をより深めていくことが重要であると考える。
(5)ワンストップ・サービスについて
 市民窓口で相談手続きに来た市民がいろんな課をたらい回しされることなく、基本的に一カ所の窓口で相談・手続きが完了できるのが「ワンストップ・サービス」だ。したがって、必要なことは、対応する職員がオールマイティで一人ですべて対応できるようにするか、必要な相談手続きに職員が窓口で入れ替わって対応するか、いずれかであろう。という風に考えると、基本的にワンフロアーのスペースで十分な市民サービスが提供できるのではないかと思う。どうも、市の考えは、市民窓口を必要とする課を丸ごと移動させ配置させる域を超えていないような気がする。この点は掘り下げて検証する必要があろう。
(6)市民の芸術文化活動の日常的な拠点とするために
 新しい市民会館のコンセプトに関わることであるが、一流の音楽や演劇を鑑賞できる役割を否定はしないが、非日常の世界を演出する場よりも、日常的な芸術文化活動の創造の場であることにウェイトがあるはずだ。そのためには、①練習室、リハーサル室のスペースを十分に確保し、24時間開放できるようにすること。②市民が交流・情報交換できるオープンスペースを確保すること。③また、楽屋スペースを十分に確保すること。そして④市民や観客の動線にしっかり配慮した配置とすることなどが求められよう。

3.権堂東街区の再開発事業について
(1)別の文化施設は論外
 市は、市民会館を現在地で建設する方針とともに権堂東街区に文化交流施設(詳細は何もない)という「別施設」を建設する方針を打ち出した。権堂の活性化になぜ「箱もの」なのか、文化交流施設なのか、市民会館と同様の疑問を抱かざるを得ない。権堂地元に市民会館以外の文化交流施設を活用する考えがそもそもあったのだろうか。百歩譲って、「公的施設を」というのであれば、中心市街地、しかも権堂地域の一角にどんな公的施設が必要なのかという検証がなされなければならない。しかも、勤労女性会館しなのきがあるのだから。「市民会館がダメになったから、それに替わる施設を」では市民の理解は到底得られない。権堂の活性化は、いったん立ち止まり、権堂全体の活性化・再生の戦略ビジョンを構築し、A・B・Cの3地区をどんな再生拠点とするのかを練り直すことが先決だ。
(2)そもそも活性化につながる再開発になり得るのか
 11月4日の市の発表以来、「市長は一体何を考えているんだ」との疑問と非難の声をたくさんいただいてきた。権堂の再開発について、最近の市長の発言はトーンダウンしている。当然であろう。「県民主権を進める会」(茅野實代表)が実施した世論調査で、権堂東街区に新しい文化施設を建てる方針に、市民の7割近くが反対しているとの結果も、大きく影響していると思われる。そもそも、民間主導の権堂東街区の再開発には、19人の権利者が参画するが、新しい再開発ビルで営業継続しようとする権利者は4割にも満たないとされる。移転補償の後に権堂から離れる権利者が多いのだ。これで、まちの活性化につながる再開発といえるのだろうか。イトーヨーカドーの動向も見極める必要があろう。
(3)ゼロベースで再検討を
 12月2日、12月議会冒頭で市長は、権堂の再開発について「議会と十分に相談しながら検討する」と述べたが、検討のたたき台として、依然として「別の文化施設」と考えているのであれば、間違いだと言わなければならない。今日的に、権堂東街区に新しい文化交流施設建設は論外である。権堂再開発は中心市街地全体における権堂エリアの位置付けを明確にし、権堂地区全体の活性化をめざし、ゼロベースで検討し直すことだ。市長はこのことを明確に打ち出すべきである。

4.市民合意の形成について
(1)二つの課題
 建設地を現在地とし、配置案を示している段階で、市長は、建設検討委員会や市民ワークショップの意見を聴くとともに、「議会との意見交換・合意」に重きを置いている。果してそれで十分なのか。市民に対する説明責任を果たし、市民合意に力を尽くそうとする姿勢が希薄であることは問題だ。課題は二つ。一つは建設検討委員会と市民ワークショップとの合意形成、二つは38万市民との合意形成だ。
(2)現在地での建設に知恵と工夫の再結集を
 「権堂周辺の環境整備や活性化計画の策定など、条件を付して、権堂東街区案を容認する」とした建設検討委員会、そして「しなのき、シネコン、大型店など集客施設が隣接し、相生座や北野文芸座との文化ゾーン形成も期待でき、東街区案がより適している」と提言した市民ワークショップ。いずれも行政側のリードによって、2月の『基本構想』で示された権堂東街区での建設を基軸に検討してきたことから、やむを得ないところはある。しかし、当初から現在地を主張してきた私としては、東街区と現在地を並列でキチンと検証し、将来性を検討する議論があれば、違った展開になっていたかもしれないと思う。
 方針転換に対して、建設検討委員会や市民ワークショップでは、行政と議会に対して不満がくすぶっているという。自分たちの検討は何だったのかとの想いがあることは容易に理解できる。行政と議会が説明責任を果たし、現在地での建設にあたり、知恵と工夫を再結集する時である。特別委員会が参考人として招き意見を聴かせてもらう場をつくったことは一歩前進だ。この議会中に十分な意見交換を行うことが不可欠である。
(3)改めて市民説明会を
 12月1日付の『広報ながの』で「市民会館の建設を現在地とする基本的な考え方」について広報された。後はホームページ対応とする。これで十分とはいえない。結論だけでなく検討経過を含めて市民に周知し十分な理解と合意を求めていくことが必要である。
 『広報ながの』での特集号外発行や市民説明会の開催を通じて十分に理解を求めていく取り組みが不可欠だ。
 また、議会側も『議会だより』などを活用し、議会としての考え方を市民に伝えて行くことも必要である。

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