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2010年11月27日
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屋代線廃止の危機…「バス代替」方針に異論相次ぐ法定協…私の考え


第10回長野電鉄活性化協議会…バス代替方針決まらず

25日、屋代線の存続のあり方を検討してきた第10回長野電鉄活性化協議会は、鉄路を廃止しバス代替とするなどの方向性を示したが、「連携計画は3年計画、バス代替の結論は余りにも拙速。住民の合意が得られていない。時期尚早」とする意見が相次ぎ、結論を先送りせざるを得なかった。【写真右はバス代替方針を議論する第10回法定協】
当然といえば当然の結果なのだが、沿線での存続に向けた機運が盛り上がりつつある今日、結論を急ぐ協議会、なかんずく事務局を担当する長野市の姿勢は、沿線の運動に水を差し、行政への不信感を助長する問題を生起させている。
協議会の酒井会長(長野市副市長)は、まとめで「長電の経営の厳しさと住民の意識に距離がある。行政負担など論点整理して、改めて提示したい。妥協が必要だ」と述べるとともに、今年度中に方向性を出したい意向を明らかにした。

バス代替ありきの方針
事務局を務める市交通政策課は、「屋代線の運営スキームの検討に関する調査報告書(案)」で、屋代線の今後の方向性について、「導入コストや運営コストが低いバス代替とした方が優位」とした上で、「地域の交通手段として公共交通は必要」、「屋代線維持には巨額の設備投資費用と赤字の補てんが必要」との二つの理由から、「三つの案」をパターンとして提起。一つは、総合連携計画を見直し、引き続き実証実験を実施。二つは、存続についてさらなる検討を続けるために、屋代線を一時休止しバスによる代替運行。三つは鉄路を廃止しバス代替による交通手段を確保するというものだ。【下表は法定協資料より】

 方向性のパターン 考え方  必要経費  
【パターン1】
総合連携計画を見直し、引き続き実証実験を実施
3ヶ月間の実証実験で10%利用者が増加したことを踏まえ、利用者アンケートで把握した改善要望を参考に総合連携計画を見直し、更なる利用者増が図れるか検証するため、屋代線を継続して運行する。 ●実証実験費用
 (6ヶ月間)
●赤字補てん
(営業費用2.1億円/年)

0.6億円

1.4億円

(合計)
2.0億円
【パターン2】
屋代線の存続についてさらなる検討を続けるために、屋代線を一時休止しバスによる代替運行
今後の技術革新を見極めるため、屋代線の運行を一時休止としてバスによる代替運行を実施し、その間にさらなる検討を進める。 ●赤字補てん
●鉄道施設保存費
●屋代線運行人員の確保(10人)
●屋代線の固定資産税減免

 
0.7億円
0.4億円
0.5億円

0.1億円

(合計)
1.7億円
 
【パターン3】
バス代替による地域の交通手段の確保
地域の公共交通は、安定的に維持・存続されるべきであり、屋代線を利用する場合よりも費用が低廉なバスでの運行に移行し安定的な公共交通維持を図る。 ●赤字補てん(現在の屋代線利用者の4割がバス利用と仮定)営業費用1.1億円/年 0.7億円


(合計)
0.7億円
*パターン2及び3のバス運行費用は、現在の屋代線の上下15本運行の確保を仮定。この他に1.4億円の初期設備投資(パス購入費)0.3億円/台×4台=1.2億円、バス停整備費150万円/箇所×13カ所≒0.2億円)が必要となる。
*鉄道を存続させる場合は、上記の他に設備投資計画にある31億円(車両更新費を含む)や駅改良・トイレ改修・トンネルや橋梁の改修費等の費用が必要となる。



上下分離方式・ディーゼル化など検証が不十分
第9回協議会で「バス代替が優位である」との調査結果をまとめてきたことから、予想された方向性とはいえ、新しい運行形態の検討について、第三セクターや上下分離方式、さらにディーゼルなどへのシステム置換など、沿線3市の負担額を含め、鉄路の存続を前提とした検討結果の詳細を示すことなく、バス代替あり期とする方向性の提示は、到底受け入れられるものではない。


協議会での進め方と審議のポイント
協議会では、参加した22人の委員が全員意見表明を行った。全体に共通した意見は「長電の経営の厳しさは分かるが、今日の会議で方向性を決めることは乱暴」とする進め方の問題だ。協議会後には臨時記者会見が設定されていて、「結論を得られる」との読みがあったようだが、この読み間違いは深刻な問題を投げかけている。市民感覚、現場感覚からかけ離れた意思決定がされているという問題だ。【写真は10月31日、松代で開かれたシンポジウム。鉄路存続への意見が相次いだ】
その上で、屋代線の今後についての協議のポイントは3つあったように思う。
 《一つは》、沿線の4地区の代表が温度差はあれ「3ヶ月の実証実験で結論を出すのは性急過ぎる。バス代替は短絡的で地域の理解は得られない。3年間のスパンで実証実験を継続し、利用促進を図るべき」と述べ、「実証実験を目標の60万人の実現に向け、なお努力が必要である」とする意見である。
 《二つは》、長電事業者はもとより商工団体や鉄道事業者から出された「長電の経営の厳しさは理解できる。毎年1億6千万円の赤字を見過ごすことはできない。これ以上の負担拡大は困難。早急に何らかの赤字補てん策を見出すべき」とする意見だ。
 《三つは》、千曲市や須坂市の副市長などが「それぞれの行政負担の中身が見えない。生活バス交通に税金を投入しており、鉄路存続の負担の具体がなければ、結論は出せない」としたことだ。公的支援の具体が関係自治体の間で共通認識になっておらず、新しい運行形態のスキームの検討が掘り下げられてないことが浮き彫りになったことだ。


鉄路存続を前提にした検討の提案
 24日に活性化協議会会長あてに要望申し入れた論点を基本的に踏襲しつつ、協議会の論点を踏まえ、私は次のことを提案したい。

 ?総合連携計画を見直し、利用促進に向けた実証実験を継続する。
 ?長野電鉄屋代線の赤字を補てんし、事業者が実証実験継続に参画できる条件を整備する。そのための行政支援のスキームを検討する。
 ?新しい運行形態のあり方について、より具体的に検討を深める。特に、ディーゼルに置き換え、上限分離方式による基本スキームについて、行政負担、事業者負担、住民負担の具体を検討・公表し、全市民的な議論を提起する。
 ?沿線住民にとどまらず全市民的な理解を求め合意形成を図る。特に沿線には法定協議会として区単位の住民説明会を開き、ひざ詰めで意見交換を行う。

26日の公共交通対策特別委…法定協への意見書提出へ
翌26日には市議会の公共交通対策特別委員会が開かれ、25日の法定協議会に提案された内容等が交通政策課から報告され、意見交換を行った。委員からは、バス代替方針に対する異論が相次いだ。鉄路存続に向け、もっと詳細に検討を深めるとともに利用促進を図るべきとの意見が大勢の意見であると受け止めている。
長野電鉄の笠原社長の「沿線の方が乗っていただけない電車は時間をかけても無駄。住民の足の確保は電車でなければいけないのか。バスでもよいではないか」との発言(報道より)にも批判の声が上がった。長野電鉄の経営の厳しさを前提にしても、鉄道事業者自らの責任放棄とも取れる発言はいかがなものかと私も思う。沿線の存続への熱意に応える自主的な取り組みは如何ほどだったのかと問いたくなってしまう。今でも48万人の利用者があり、バスに代替した場合、6割の利用者がマイカー利用に転じてしまうという結果がある中で、公共交通を担う事業者には、その事業の公共性、環境対策に果たす役割にもっと真摯さが求められるのではないだろうか。

私は委員会の副委員長を務めているが、前記の観点から意見を述べた。行政側は「運行スキームに関する資料は示したい。沿線の熱意は理解している。しかし、アンケート結果は必ずしも存続を求めるものとなっていない。長電の経営の厳しさも考えなければならない。沿線の理解が得られるよう努力したい」と答弁した。また、実証実験の継続では、一番要望の強い「通学・通勤時間帯での増便」は「屋代~松代間が単線のため、技術的に不可能」で、「新しいメニューを増やすことは困難」とした。上り・下りのいずれにニーズがあるのかを見極め、松代駅での待機時間の確保で活路は見いだせないのか、また松代~屋代を経由し長野駅に直行する便の増発に可能性はないのか、これらは、しっかり検証が必要だ。
この日の特別委員会で、12月議会本会議に特別委員会としての中間報告を行うとともに、法定協議会に意見書を提出することを確認した。また、沿線3市の議員有志が呼びかけている「屋代線の存続を願う議員連盟」について、特別委員会所属議員から各会派を通じて参加を呼びかけていくことも確認した。中間報告する議論のまとめの精査が求められる。

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