市議会最終日の21日、午前9時からの合同会派協議会で、市民説明会の開催計画、市民会館の現在地案での検証結果、ならびに東街区案での関連事業費などの検証結果が報告されました。しかしながら、結論は「やはり、権堂・東街区が最適地である」ことを強調する報告でした。約1週間の突貫作業でまとめられた検証結果、ポイントをまとめてみました。文中の図表は、議会に報告された資料より。市のホームページにはまだアップされていないようです。
新たに3カ所で市民説明会
市民の意見募集を10月15日まで延期したことに伴い、「再度開く」としていた市民説明会の日程が示されました。市民会館建設地の方針案の説明と質疑応答が内容となります。お近くでの会場に是非お出かけいただきたいと思います。
◆10月 1日(金)19:00~20:30 若里市民文化ホール(600人)
◆10月 8日(金)19:00~20:30 吉田公民館ホール(300人)
◆10月13日(水)19:00~20:30 篠ノ井市民会館ホール(560人)
私からは、①報告内容について、現在地案の検証結果、東街区案での関連事業費など直近の資料で説明を簡潔に行うこと、②進め方について、発言者の人数を把握し希望者全員が発言できるように運営すること、の2点を注文。改善するとの対応でした。
東街区案での関連事業費は概算で14億円
東街区案では、関連事業の概算事業費の他、イトーヨーカドーに想定する施設例、権堂AC地区の事業構想、グランドシネマズの状況、権堂の映画館の状況、マクドナルドの撤退、権堂商店街の歩行者の推移、商店街の活性化事例など8項目の検証結果が示された。
ポイントを絞ると…
?関連事業としてきたヨーカドーや勤労女性会館しなのきとの連絡デッキやヨーカドー
4Fに設ける賑わい交流施設の整備など6事業で14億円。
?ヨーカドー内に整備する賑わい交流施設は子育て関連施設や市民ギャラリー、貸ス
タジオ、医療関連施設を想定。
?権堂地区の再開発は、市民会館の建設を想定するB地区、相生座のA地区、旧割
烹のC地区を一体で進める必要があり、A地区(小劇場や屋台会館等の祭り広場と
して)・C地区(屋台横丁、屋台村として)について、H22年度中に研究会を立ち上げ、
H27年度までに再開発組合等を設立。
?年間50万人の入場者数を数えるグランドシネマの権堂活性化への効果は、「NAGA
NO映画祭」など地元商店街との連携が図られているものの、具体的に検証できない。
マクドナルドの撤退は新戦略に伴う店舗改革の一環で、まちの活性化とは直接にリン
クしない。文化施設と連携した商店街の活性化は効果をあげている実例があり可能性
はある。
というところだろうか。?、?の事柄は、権堂東街区の優位性を示すための「後付けの理由」であり、あくまでも「可能性」の域を出ない問題である。最大の問題は?と?の事柄である。
東街区案では約150億円の事業に!市民理解が得られる投資となるのか
しなのきとの連絡デッキ(1.2億)やヨーカドーとの連絡デッキ(6億)、市民会館用駐車場の取得(3.6億)、賑わい交流施設の整備(1.4億)など合計14億円の関連事業費(概算)により、東街区案での建設事業費は市民会館に87億、庁舎50億、権堂駐車場取得3.6億の計140.6億円となり、これに駐車場取得をのぞく関連事業費10.4億円を加えると概算総事業費は151億円にのぼることになる。約150億円にのぼる投資が、市民が期待する効果、市民が望む文化芸術活動の拠点としての効果を果たして生むのであろうか。
現在地案での検証…建設可能な案として2案示す
現在地案では、①合併特例債を活用しH26年度までに建設できる、②基本構想に示す規模・機能が実現できる、③新庁舎と第二庁舎が一体利用できる、④750台の駐車場(庁舎400台、市民会館350台)が確保できる、との4点を基本原則として検討。併設の場合に4案、合築の場合で3案、基本原則と合致しない(合併特例債を使わない等の条件)が周辺の民有地などを活用するその他の案・3案、全部で10案を検証した結果、併設案の内、2案が「建設可能」と判定している。また合築案・3案はいずれも「建設可能であるが難あり」と判定されている。その他の3案は建設期限を延長することになり合併特例債が活用できないことから「建設できない」と判断したとする。
現在地で可能な2案とは?
【併設第1案】…従来から示されてきた案で、現市民会館を解体した跡地に新しい市民会館と第一庁舎を併設する案。現庁舎の跡地はバス停や立体駐車場(254台分)として整備する。概算事業費は市民会館69億円、庁舎50億円、駐車場整備に6.6億円の計125.6億円と試算される。駐車台数は751台分確保できるとする。
狭い敷地に2棟を建設するため、庁舎機能(総合窓口など)が制約され、将来的な道路整備ができないことが難点とされる。
【併設第2案】…第一庁舎と市民会館を同時に解体し、それぞれを同時に建て替える案。現在と同じような構図でそっくり建て替える案だ。しかし、これには建設中に庁舎移転(仮庁舎)が必要となり、仮移転経費=11億円がかさむこととなる。結果、概算事業費は市民会館69億円、庁舎50億円、仮移転経費11億円、駐車場整備に3.3億円(第二庁舎南側に立体駐車場)の計133.3億円と試算。必要な駐車台数は750台に対し599台分の確保で、不足分は周辺のパークを利用する。
庁舎・市民会館ともに余裕のある配置が可能となり、将来的な周辺道路整備も可能となる一面、庁舎の分散仮移転が必要(経費に11億円、また移転中3年間は市民に不便をかけることに)となり、駐車場も必要な台数が確保できないことなどが課題とされる。
事業費(市民会館+庁舎+駐車場)を比較すると…
建設地 |
市民会館 |
第一庁舎 |
駐車場 |
仮庁舎 |
総事業費 |
東街区案 |
87億 |
50億 |
3.6億 |
|
140.6億 |
現在地併設第1案 |
69億 |
50億 |
6.6億 |
|
125.6億 |
現在地併設第2案 |
69億 |
50億 |
3.3億 |
11億 |
133.3億 |
*関連事業費および周辺道路整備の経費を除く。
事業費だけを考えると、併設第1案が一番安上がりとなる。とはいえ125.6億円、決して安くはないのだが…。庁舎及び市民会館の制約を市民が許容するか否かがカギといえよう。
「建設可能だが難あり」とされる合築案3案とは?
合築案は、?現市民会館の跡地に庁舎と市民会館を合築する案、?第二庁舎南側と市民会館上部に庁舎を建設する案、?第二庁舎の増築と市民会館上部に庁舎を建設する案の3案だ。合築の場合、特殊な構造が必要となり建設費が5.5億円増加するものの、事業費はいずれも129.5億円と試算され、駐車場は749台~788台整備できるとする。また芹田方面との将来的な道路整備が可能となる。ここでは?と?の案を図表で紹介する。
?の場合は、市民会館を中層階とし、庁舎は低層階と高層階の二段構造とする案。市民会館への資機材の搬入・搬出に大型エレベータが必要となり、避難に時間がかかることが難点とされる。総合窓口機能は確保される。
?案・?案では、庁舎の総合窓口機能の確保に制約が生じる一方、市民会館は低層階をメインとする構造を確保できる。
合築の場合は、市民会館としての独立・独自性の保持や市民総合窓口機能の確保に課題を残すものの、事業費と合わせて考えると単純積み重ね構造の?案、第二庁舎の増築とセットの?案は十分に検討の価値はあると考えられる。
「それでも、権堂・東街区が最適地」と固執する市行政
現在地での建設について10の案を検証してみたものの、経済効果の試算(あくまでも試算でしかない数字、期待値みたいなもの)から東街区の場合は権堂周辺に9500万円の効果であるが、現在地では緑町周辺に1800万円の効果にとどまることから、商業集積度の高い権堂・東街区での建設の方が、まちづくりへの効果、すなわち中心市街地・権堂地区の活性化につながる効果が期待される、現在地では庁舎の総合窓口機能の確保に制約があるため、「やはり東街区が最適地」とする理屈だ。
現在地案では庁舎の総合窓口機能が十分に確保できないことが「制約条件」とされているのだが、総合窓口=ワン・ストップ・サービスの在り方はもっと検証が必要と思われるし、理想形からみれば制約であっても、現状よりは市民サービスが向上できる点を考慮すべきであろう。
今回、現在地での検証結果が発表されたことで、具体的なイメージが深まった事は事実だ。だが、市民会館建設部分にどのように望ましい文化芸術施設が組み込めるのかの具体的なイメージが欲しいところだ。とくに【併設第2案】はそっくり建て替えるもので、概略的な設計の考え方やイメージは必要であろう。
「権堂か、現在地か」の二者択一、その選択の基準は何か?
私は、いろいろ検証してみても権堂が最適地として理解を求めようとする行政側の問題意識に対し、市民の間では、「権堂か、現在地かの二者択一」の選択の問題に移行していると考えている。さらに「基本構想」で示された規模・機能の再検討も合わせて問われていよう。例えばメインホールの規模で1500人規模のメインホールが必要なのか、維持管理費はどうなるのかといった問題である。
「二つに一つ」の選択の基準・ものさしは、次の3点にあると思う。
《一つに》まちづくりへの効果の確実性
《二つに》文化芸術活動の拠点としての使いやすさ、そして今後毎年必要となる
維持管理費の検証
《三つに》総合窓口スペースの確保をはじめとする庁舎機能の制約に伴う市民
サービスの在り方に対する市民の理解と許容度
である。
一つ目のまちづくりへの効果は、再三指摘してきているように「可能性への期待感」にとどまり、効果の確実性は担保されていない。ましてや権堂活性化に不可欠なイトーヨーカドーの営業継続について「確証がない」(市長答弁)とされては、東街区案での建設は「賭け」みたいな話で、市民の理解を得られるものではない。市行政側の「権堂地区への思い入れとのめり込み」に対し、市民は極めて冷ややかであることを注視すべきであろう。連絡デッキなど関連事業として投資する14億円も果たして市民の理解を得ることができるのか、不確実性は深まるばかりである。
二つ目は、市民会館の規模・機能について、建設後の維持管理費も見据え、もっと検討されてよいのではないか。また必要な駐車場がどのように確保されるのかといった課題、さらには公共交通の利用促進といった課題ともする。駐車場整備への投資だけを単純化すれば、現在地案に優位性がある。
三つ目は、現在の庁舎における市民サービスが新庁舎によってどれだけ向上するのかをわかりやすくより提示する必要がある。面積とレイアウトだけでは具体的にイメージできないのではないだろうか。現在地で併設または合築によれば市民サービスが制約されるとするが、現状よりも向上することを市民に示すことで理解を得ることは可能であろう。市民が許容範囲であると判断できる材料を示すことが先決だ。
究極は「まちづくりへの効果」の可否をどう判断するのか
結局のところ、「まちづくりへの効果」、「中心市街地・権堂の活性化」の可否にかかる選択と言える。市民の多くは、この点に「危うさ」を鋭く感じ取っているのではないだろうか。私は9月議会での質問で、「市長、市行政と市民との間に大きなかい離がある。このかい離はどこから生まれてきているのか。それは期待される効果、文化芸術拠点としての創造性・発展性とまちづくりへの効果が不確実・不透明だからに他ならないからだ」と指摘し、「市民の常識にマッチしたわかりやすい行政、市民に理解され信頼される堅実な市政運営」を求めた。
私は、このことこそが今、まさに問われていると思う。建設地の問題は、自ずと答えが導き出されるのではないだろうか。
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