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2010年4月23日
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「社会新報」に掲載された「地域公共交通の現状-長野からの報告」より


 ちょっと古いニュースになりますが、社民党の機関誌「社会新報」から依頼され、「地域公共交通の現状-長野からの報告」をまとめました。
 3月3日付けの社会新報に交通基本法の意義と合わせて掲載されました。
 この間の取り組みを概観する意味で、加筆補強して転載します。





◆二つの法定協議会

住民の足である地域公共交通が危機に瀕する中、長野市では地域公共交通の活性化及び再生に関する法に基づく二つの法定協議会が設置され、今年度中に再生に向けた3カ年の総合連携計画を策定、新年度から事業着手の段階を迎えている。

一つは、生活路線バス交通。07年12月、交通事業者であるアルピコ・グループの私的整理に伴い、川中島バス㈱の廃止や統廃合を含む不採算路線の見直しに端を発した市内の基幹交通であるバス交通の再生に向けた取り組みである。
 もう一つは、須坂市・須坂駅から長野市域の外縁地域(若穂・松代地区)を経由し千曲市の屋代駅を結ぶ長野電鉄屋代線の存廃である。08年1月、長野電鉄㈱が50億円を超える累積赤字を抱え「単独での運行は困難」とし、県をはじめ沿線市に支援を要請、沿線3市と関係機関で法定協議会を発足させ、新年度から利用促進に向けた実証運行が始まる計画だ。

◆公共交通対策会議をつくり、市民の関心喚起

 公共交通網が誰もがいつでもどこへでも移動できる権利を保障する重要な都市インフラであることから、「市民の生活の足を守ろう、乗って残そう」と、党の自治体議員を中心に、長野地区平和・人権・環境労働組合会議や交通関連の労働組合とともに「長野地区公共交通対策会議」をつくり、交通事業者や市行政への要請活動をはじめ、独自の市民アンケートやシンポジウム、また廃線の危機から再生に取り組む三岐鉄道北勢線や福井鉄道福武線の先進事例に学ぼうと現地調査などに取り組んできた。

◆市民シンポや独自アンケートの実施

生活バス交通では、08年7月、県環境保全協会長の茅野實氏を実行委員長とする「公共交通を考える市民の集い」を交通事業者や市長をパネリストにして開催、450人の市民が参加し、もっと便利なバス交通に向け活発な意見交換が行われた。

また長電屋代線問題では、対策会議で沿線住民1万人を対象に独自のアンケートを実施、結果から沿線住民の9割が「存続」を願っている切実な課題が浮き彫りになった。さらに09年7月には「屋代線の将来を考える市民の集い」を沿線となる松代地区で催し、420人の住民が参加し、存続の課題を探った。

いずれも行政と交通事業者、そして住民をパネラーとして、公共交通の意義とそれぞれの役割分担を考えるとともに、マイカーから公共交通への乗り換えを柱とする生活交通の再生に向けた関心喚起を図ることを目的とした。市民参加で現場の声を積み上げ、市行政や交通事業者の取り組みをバックアップする役割を少なからず担ってきたと自負するところである。

◆マイカー依存からの脱却には政策誘導が不可欠

とはいえ、課題は山積する。「市民の暮らしを支える~ながのバス交通プラン」と名づけられた生活バス交通の総合連携計画は、バス交通を「都市の装置」と位置付け、選ばれるバス交通に変貌させ、年間利用者数を08年の820万人から13年には1000万人(22%増)にすることを目標とする。バスの利便性を高めるため、バス路線網の再構築、中山間地域や交通空白地域でのデマンド交通の導入拡大、IC乗車券カードやバスロケーションシステムの導入、ノーマイカー運動の推進など33の事業をメニューとする。3年間の総事業費は国の支援を含めて13億6900万円を見込む。

屋代線の活性化に向けた総合連携計画では、3年間で13万人の利用者の増、12年には60万人の利用者を目標とするものの、経常収支を黒字にするためには現状の利用者の約3倍にあたる約130万人の年間利用が必要とされ、極めて厳しい実態が横たわっているのも事実だ。具体的には、運行頻度の拡大、パークアンドライド駐車場の整備、観光客の誘導策、置き回数券(家庭や企業に通常より割り引いた回数券を配布)など27事業を掲げ、地域が一体となって鉄道を支える仕組みづくりをめざす。しかし、上下分離方式の導入など経営スキームの見直しは先送りされた。初年度の実証運行経費を柱とする全体の総事業費は5870万円を見込んでいる。経営スキームの見直しを具体化し段階で事業費が大きく膨らむことが予想される。

まずは便利な公共交通を実現しようとする試みとなるが、計画の最大の課題は、マイカーだけに頼らず、バスや電車を利用してみようと思う動機づくりだ。「乗って残す」意識改革の醸成が必要であることは間違いないが、将来にわたって公共交通を維持再生するには、地球温暖化防止への参加意識とともに公共交通利用によるエコポイント制度の創設や、企業等に対し税制優遇措置を講じてエコ通勤を推進するといった政策誘導策が不可欠であろう。

◆国の責務で定める「交通基本法」に期待

 地域公共交通活性化再生法は、地方において生活交通を維持する拠り所となっている。しかし、問題は、国の財政支援が縮小し、将来の見通しが不透明なことだ。自治体や事業者の負担が過大となり、計画が「絵にかいた餅」になりかねないことが懸念される。交通基本法では住民の交通移動権を明確に位置付け、地域公共交通の将来ビジョンを示し、国、地方自治体、交通事業者の役割を定め、住民参加で地域公共交通を維持していく基本法となること、国の責務として自治体や交通事業者、住民の取り組みを財政支援し、公共交通優先のまちづくりを推進していくことにつながることを期待する。

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