第一庁舎・市民会館建て替えの関連予算、可決へ
3月議会の一大焦点であった第一庁舎・市民会館の建て替え問題は、建て替えに関する関連予算を盛り込んだ一般会計予算案を賛成多数で可決したことで、大きなハードルを越えたことになりました。【写真は長野市民会館、来年3月閉館の看板が掲示されました】
関連予算は、第一庁舎の建設に向けた地盤調査や地震波測定、敷地測量など1232万円。市民会館の建設では、地盤調査や敷地測量、基本計画策定に向けた劇場コンサルタントの委託費など1662万円。権堂B-1地区の再開発事業への国庫補助金9083万円など、合計で約1億2千万円(市費分は約2900万円)です。
両施設の建て替えに反対する共産党議員団は無所属議員1人と共同で、第一庁舎や市民会館の建て替えに関する関連予算を減額し、教育費や保育費などを増額する予算の修正案を提出しましたが、賛成少数で否決しました。
報道によれば、予算可決後、市長は「(施設が)要るか要らないかの議論はこれで終わった」との認識を示し、「粛々と進めたい」と建て替え推進に自信を見せたようですが、議会での議論の根本問題は、両施設が要るか要らないかではなく、両施設の耐震対策をどのように行うのか、すなわち建て替えか耐震補強工事かにあったと思います。確かに基礎免震工法による耐震補強工事を施すことで耐震問題はクリアーしますが、第一庁舎ではバリアフリーやワンストップサービス等の実現が困難となり、市民会館でもバリアフリーや使いやすい施設としての問題は解決しません。50年スパンで考え、投資効果を判断することが必要であると思います。
市は今後、施設内用を検討する市民参加のワークショップを6月から開き、9月には基本計画案をまとめる方針です。
関連予算は可決しましたが、市民の理解と合意の課題をはじめ、権堂地区の再開発事業の行く末など、本当に「粛々」と進むような状況にあるのか、より検証し、情報発信していく必要があります。
市民会館、権堂での建設は禍根を残さないのか
表題は3月議会での私の質問テーマです。私は、市民の安全と行政サービスの向上を図る立場から、耐震対策が必要な両施設は建て替えることに賛同してきましたが、市民会館の建設場所は権堂B-1地区・イトーヨーカドー跡地ではなく、現在の市民会館の場所に第一庁舎と合築・併設することを主張してきました。
既に『基本構想』では、市民会館を権堂B-1地区に建設することを決定していますが、地権者の同意、再開発事業組合の正式発足、イトーヨーカドーの営業継続協定の締結など、解決すべき課題が残っています。これらの課題が解決しない場合には現在地で建設する「次善の策」が『基本構想』には盛り込まれています。極めて不安定で不確実な構想といわなければなりません。そもそも市民会館が権堂の再生につながる有効な手立てとなるのかということも不透明です。
質問に対する答弁を踏まえても、私自身、まだまだ確信が持てる状況にはありません。質問に対する答弁を含めて、疑問点を整理しました。
疑問1=権堂商店街との賑わいの相乗効果が不明確
「権堂B-1地区の再開発事業計画は、3つの地区で行う権堂再生計画の一つとして具体化されたもの。これらの計画と相まって利用者の回遊性を高め、まちの再生・活性化につながると考える」とし、また「集客力の高い催事の誘致や練習環境の充実など稼働率を高める工夫により、相乗効果を高めることが可能」としました。しかしながら駐車場を大通りをはさんだ東側に建設することを考えると、人の流れは東側に集中し、西側である権堂街に流れることは考えにくいと言えるのではないでしょうか。市側は、S58年に開館した県民文化会館のオープン前後で東口の通行量調査では604人増、27.8%の増加となったことから、市民会館建設により賑わいの効果が期待されるというのですが、説得力はまったくありません。
疑問2=権堂のまちのイメージと文化芸術拠点のイメージは調和できるのか
「いわゆる飲み屋街の顔を持つ特徴は、むしろ魅力を高める要素。権堂商店街においても、市民会館の利用者ニーズに応える変化が生まれ好影響を及ぼすことも考えられ、マイナスイメージではない」としますが、余りにも希望的観測の域を出ません。権堂に賑わいを復活させたいとの願いは分かるのですが、繁華街は良くも悪くも交通結節点で伸展します。シビヤーな言い方になりますが、飲み屋街としての魅力すら喪失しつつある権堂の現実にもっと眼を向けるべきではないでしょうか。
疑問3=イトーヨーカドーがいつまで営業を継続するのかが不明
「最高経営責任者から『存続の方向』が示されたことは、大きな期待が持てる。協定については関係者と調整中」とした上で、「都市計画決定が必要な6月頃までに協定を締結したい」としましたが、営業期間については言及しませんでした。権堂地区での大型店の存続が活性化に不可欠であることは理解します。だからこそ、少なくとも10年間位の協定が必要です。そうでなければ、権堂地区の再生計画は遠くない将来に宙に浮くことになってしまうのではないでしょうか。大型店存続のために市民会館の誘致建設をでは本末転倒になってしまいます。
疑問4=合併特例債は本当に活用できるのか
H17年に策定された「合併建設計画」に盛り込まれた「庁舎の計画的整備」は、実は本庁舎ではなく支所の庁舎整備を想定していたものです。これを拡大解釈で乗り切ろうとする姿勢には不安がつきまといます。市側は「社会情勢の変化もあり大丈夫」と答弁。国や県の前向きな感触があっての答弁なのでしょうが、合併特例債の活用を申請するまでは「グレーゾーン」となるのではないでしょうか。そもそも有利な借金となる合併特例債を活用する方針に転じたために、H26年度末という期限が区切られ、構想策定を急がざるを得なくなったこと、結果、市民合意の時間も制限されることになったことを深く自覚し、市民の理解を求めていく基本姿勢が強く求められます。
疑問5=125億円を投入、市民に理解を得られる投資効果が期待できるのか
権堂B地区の再開発の総事業費は125億円に上るとされ、内、市は市民会館建設に約80億円を投入することになります。さらに再開発事業への補助金は国・県・市で約31億円、市の負担分は約12億円としました。また、市民会館の附置義務駐車場として約80台分の確保が必要となります。市民会館と合わせ約100億円を投入することになる計画です。前述の疑問と合わせ、市民に理解が得られる効果が期待できるような投資となるのか、もっと検証が必要です。
第一庁舎、市民会館をめぐる問題を振り返ると、第一庁舎の建て替えを現在の市民会館建設地にした段階で、本来目的が違う第一庁舎と市民会館両施設のあり方が混然一体とした議論になり、また市民会館の必要性の議論が後追いになったこと、さらにその結果、新しい市民会館ありきの文化芸術のあり方議論になってしまったこと、市民会館の建設候補地が当初から再開発事業計画に乗ることを前提に絞り込まれ、大型店の存続問題とせざるを得なくなったこと、市長選挙に際して市長が白紙としたことなどが、市民の理解と合意に複雑な違和感を与えてきたのではないかと思います。議員として十分なチェックと問題提起ができてきたかという点では、私自身、反省するところがあります。
3月議会で「第一庁舎・市民会館調査検討特別委員会」が設置されました。残念ながら市民ネットからは委員になれませんでした。しかし、いずれにせよ、禍根を残さないために、疑問点の解明に向け、問題提起をし続けたいと考えます。
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