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09年5月26日
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視察報告(その1)…千代田区新庁舎、規模や機能面で学ぶところ多し

 5月18日から20日に実施した総務委員会での行政視察の成果を3回シリーズでまとめます。第1回は「千代田区編・5月20日訪問」です。


視察テーマ、長野市第一庁舎建設に向け、千代田区新庁舎建設を調査
 長野市は耐震強度のない第一庁舎および市民会館の建て替え方針を決め、第一庁舎は市民会館を取り壊し、その跡地に建設、市民会館建設地については年内に結論を得る方向で検討が進められている。現在、新庁舎の規模や機能に関する基本計画を策定中である。こうした事情から、千代田区が国と共同で建設した新庁舎を視察したものだ。
人口は4万6千人、昼間人口は80万人
 国会のある永田町、官庁街の霞が関、そして大手町、丸の内、有楽町、さらに皇居を抱える千代田区は、面積11.64?、機能的には長野市の中心市街地で一自治体を構成しているようなものだ。昼夜間人口格差は世界一とされている。
 こうした千代田区の抱える課題は、定住人口の回復、東京23区内で3番目に高い高齢化率による高齢者対策、少子化対策(1年間の出生児は約200人)、中小企業中心とする地域経済対策と首都ど真ん中の防災対策にあるとする。
 千代田区の新庁舎は旧庁舎の道路を挟んだ向かい側で九段にある。民家が比較的多い麹町、神田の中間に位置する。来庁する区民の足は電車やバスの公共交通が主で、マイカーより自転車が多いという。
 上の写真は視察会場でいただいたパン工房のクッキーとお茶。リユースのコップを使っているところがミソ!
総事業費は96億7千万円余、国施設と合築
 千代田区の旧本庁舎は昭和30年(旧館)、昭和44年(新館)に建設されたことから、老朽化が進み、バリアフリーに対応できず耐震強度が不十分なため「庁舎建て替え」を決定。もともと国が旧本庁舎前にある国有地にPFI方式で合同庁舎を建設する計画があり、この計画に千代田区が乗って区庁舎を国合同庁舎と合築する方向でまとまり、「九段第3合同庁舎・千代田区役所本庁舎」という形で新庁舎建設となったものである。
 地上23階、地下3階建て、建物の高さは約98メートル、立派な高層ビルである。1階から10階までを千代田区が利用し、9階・10階は千代田区立図書館が入る。
 千代田区役所建設分の総事業費は96億7400万円。公共施設等の建設と維持管理などを民間の資金や技術的能力を活用して事業を進めるPFIで建設、15年間の契約である。当初の予算案では173億円を見込んでいたという。建設工法の合理化・効率化で圧縮されたとし、民間手法のPFI事業効果なのかどうかは判然としていないように思える。

 長野市第一庁舎の建設にあたってもPFI手法が検討されたが、懇話会の報告書では「PFIはなじまない」とされている。国が関与せず地方自治体単独で行う庁舎建設は、もともと収益性が低いため、PFI事業を選択する余地はないと思う。
規模としてはコンパクトなイメージ
 本庁舎は約600人の職員を擁するのみなので、役所スペースとしてはコンパクトなイメージがある。職員1人当たり面積は未確認。職員1人当たり一つの机ではなく、長机を複数の職員で利用するなどの省スペース化も図られている。またロッカーや棚を積み上げるのではなく腰から胸ぐらいの高さに制限していることもオープンなイメージを広げている。職員の皆さんには戸惑いが結構あったようだ。1フロアーの面積は、長野市第2庁舎の1.5倍ぐらいだろうか。フロアー・センターにエスカレーターを配置する構造はよく似ている。

エネルギー消費率35%減に
 建物には太陽光発電装置や雨水・排水再利用装置を設置し「グリーンな庁舎」を打ち出すとともに、視覚障害者向けの音声誘導装置を設置、バリアフリーにも配慮したとする。長野市の場合には、これらに屋上緑化・壁面緑化も考えたい。
エスカレータで2階「総合窓口」に、注目のワンストップサービス
       
 注目は「総合窓口」である。転入・転出の際の様々な手続きや各種証明書の交付を1カ所の窓口で完結させるワンストップサービスを導入している。いわゆる市民のたらい回しをやめて市民に対するサービス向上を図る仕組みで、10のカウンターが設置されている。待ち状態は無いそうだ。運用面では、窓口で手続きが終わらない場合に、担当課から職員が総合窓口に出向いて対応する、総合窓口で一本化対応していることが注目される。市民が役所の中を回っていろんな手続きをするのではなく、職員が役所の中を回って市民一人に対応するという、「形」だけではなく「内容」のある総合窓口になっていると感じる。これも職員の意識改革が必要とされそうである。

総合窓口は平日午後7時まで、土曜日は午後5時まで開設
障害者就労支援のパン工房とショップが庁内に
 3階に障害者就労支援施設を置くとともに、1階のロビーフロアーにパン工房が設置され、ショップが開設されている。工房を庁舎内に作っている点はユニークな取り組みで、大いに参考にしたいものだ。視察終了後にパンを買い求めようと思ったが、行列状態で断念せざるを得なかった…。
議会フロアーは7・8階の2階分
 議員定数は25人のため、議会スペースは大きくはないといえるがゆとりを感じさせるフロアーではあった。注目は議場をミニコンサートや映画会など多目的に使用できるよう一般開放している点だ。委員会室や会議室も区民に開放しているという。スペースの有効活用という点で画期的な取り組みであろう。
 因みに採決は挙手ではなくボタン方式、賛否数が一目瞭然となるシステムが導入されている。議長席の後ろには「区の旗」や「日の丸」がなく、大きなスクリーンだったこと、そして傍聴席が広くゆとりがあっことが印象に残る。
図書館が同居、指定管理者制度を導入。夜10時までオープン
 9階・10階に区立図書館が入る。新庁舎建設に伴い、近くにあった図書館も老朽化しているため同居させることにしたとのこと。平日は夜10時までオープンしている。指定管理者制度を導入、「コンシェルジェ」(司書の案内人)を務める素敵なレディに案内いただいた。日記にも記したが「区立図書館の役割」について「図書の貸出数で図書館の利用率を図るのではなく、情報の発信基地と位置づけ、神田古書店などと連携し、さまざまな企画を実施することを重点としている」とのこと、「なるほどな~」と思いながら聞いたが、まちづくりにおける図書館の位置づけに関して一考すべき課題であろう。

 新しい庁舎はまずは災害に強く安全であること、その上で市民にとって集いやすく使いやすく、そして働く職員にとっても快適な職場であることが求められる。千代田区役所新庁舎は建設手法はともかく、庁舎の規模や機能面で学ぶところ多しの視察であった。

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