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海賊対策で海上自衛隊に派遣命令…市議会では中止請願が否決に |
長野地区護憲連合から提出されていた「ソマリア沖への海上自衛隊派遣中止を求める請願」は、3月10日の総務委員会で審議され、賛成少数で否決されました。私は、紹介議員になっているため、請願趣旨を説明、「海賊は犯罪であり、司法警察権をもった海上保安庁の派遣こそが必要であり、自衛隊法や憲法の規定をないがしろにし、なし崩し的に自衛隊という軍隊を派遣すべきではない」として請願採択を訴えました。政信会の議員は、「海賊対策新法の制定も準備されている」として「継続審議」を提案しました。明日にも自衛隊派遣命令発動かという瀬戸際にある情勢を全く理解していない、的外れな提案です。結局、委員会審議では、新友会や公明党の議員の皆さんが、政府の立場・答弁を理事者に代弁させる討論のみで、採決に。結局、私と無所属の丸山市議、共産の阿部市議の3人の賛成少数で否決となってしまいました。最初から可決は難しいと踏んではいましたが、憲法や自衛隊法に照らして自衛隊派遣が適法なのか、合理的なのか、もっと討論を深めたかったというのが本音です。
3月14日には、遂に自衛隊に派遣命令が出され、海上自衛隊の護衛艦2隻が出港してしまいました。本当にこれでいいのでしょうか?
?中国新聞の出港時の記事、?北海道新聞・社説、?琉球新聞・社説を転載します。「徹底した国会論議を」、「立ち止まって熟慮を」求める言論界の意見に耳を傾けたい。自衛隊派遣を考える材料として。
中国新聞(3月15日付)より「家族ら不安隠し隊員と別れ」
「これまでの海外派遣とは違う」―。14日、ソマリア沖の海賊対策で護衛艦さざなみ、さみだれが出港した呉市の海上自衛隊呉基地。1万2000キロ離れた遠洋へ赴く隊員を見送る家族たちは、不安を覆い隠すように気丈に手を振った。
出港直前の桟橋で、隊員と家族が別れを惜しんだ。引き締まった表情で乗艦する二曹(35)の妻(37)は夫の肩を2度たたき、タラップへ送り出した。「絶対に大丈夫。不安はありません」。じわりとあふれ出した涙を、艦上から見えない場所でそっとぬぐった。
麻生太郎首相や浜田靖一防衛相らが出席した行事を終え、2隻の護衛艦がゆっくり岸を離れると、あちこちで女性たちがハンカチで目元を抑えた。ビデオカメラを手に後を追う女性、幼子を頭上に抱きかかえて見送る男性。遠ざかる船影を思い思いに見つめた。 息子を見送った女性(62)=広島市西区=は「現地で何が起こっていて、自衛隊に何ができるのかも分からない。本音を言えば絶対に行かせたくない」とこぼした。「士気は高く、不安はない」「命令があればどこへでも行く」。早朝、大きな荷物を抱えた派遣隊員たちは、口々に語った。一方で、「相手が海賊だけに、今回は本人も不安がっていた」と、イラク復興支援の派遣を経験した一尉(31)の義父宇枝諒治さん(64)=呉市。「武器使用の基準も、いつ帰って来られるのかも、何も分からないまま出港してしまった感じがする。神経が参らないといいが」と戸惑いを隠さなかった。
【写真説明】海上自衛隊呉基地のバースを離れる護衛艦さざなみの隊員に手を振り、見送る家族たち=14日午後2時10分(撮影・坂田一浩)
琉球新報社説(3月15日付)より「海自ソマリアへ なし崩しの武器使用避けよ」
自衛隊が戦後初めて、海外で武器使用に踏み切る可能性が出てきた。しかも、自衛隊法に基づく海上警備行動が、その根拠となっている。浜田靖一防衛相も認めるように「応急措置」にすぎない。
「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」を明記する憲法9条に照らしても、重大な疑義がある。国会論議も経ないまま、見切り発車的な自衛隊の海外派遣は、容認できない。拙速というべきだ。
14日午後、ソマリア沖海賊対策のため、海上自衛隊の護衛艦2隻が広島県呉市の呉港から出港した。2週間ほどで現場海域に到着し、4月上旬ごろには日本関連船の護衛を開始する予定だ。
海上警備行動の発令と同時に政府は海賊対処法案を閣議決定、国会に提出した。成立後、海上警備行動から同法に基づく活動に切り替える方針だ。新法が成立すればソマリア沖に限らず、海賊対策の名目でどこへでも自衛隊の派遣が可能になる。なし崩し的な海外派遣の危険性をはらむことになる。
さらに問題なのは、新法では武器の使用基準をかなり緩和していることだ。海上警備行動では「正当防衛」や「緊急避難」に限って武器の使用が認められている。ところが、新法ではそれに加え、警告射撃してもなお民間船に接近してくる海賊船には「停船させるために他の手段がない」場合には船体射撃を認めている。
憲法9条では「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と定めている。政府は「海賊は犯罪であり、国や国に準ずる勢力でもないため、海外での武力行使を禁ずる憲法問題が生じる余地はない」との立場だ。しかし、「海賊が国に準ずる勢力ではないと100パーセント言い切れるわけではない」(防衛省幹部)との指摘もあり、政府も一枚岩ではない。
そもそも海上警備行動は領海侵犯を想定しており、さらに専守防衛の理念からも今回の海自派遣は問題含みと言える。何より、海賊対策以外でも武器使用を拡大する突破口になりかねない、との疑念は消えない。
国際社会の一員として、日本が何らかの海賊対策を講ずることは当然のことだ。ただ、武力行使だけがその解決法ではない。内戦状態の続くソマリアへの外交、経済支援も視野に入れるべきだ。国会での徹底した審議を強く求めたい。
北海道新聞社説(3月15日付)より「海自艦出航 なし崩し派遣の危うさ」
アフリカ東部の海賊対策のため、海上自衛隊の護衛艦二隻がソマリア沖に向けて出航した。
浜田靖一防衛相が自衛隊法に基づく海上警備行動を発令し、出動を命じた。
「警察活動」を名目に、なし崩し的に自衛隊の海外派遣を推し進めることにならないか、危惧(きぐ)を覚える。
海自艦は四月上旬に現地に到着し、商船やタンカーなど日本に関係する艦船の護衛を始める予定だ。 海の犯罪を取り締まるのは本来は海上保安庁の仕事である。なぜ、いきなり自衛隊派遣なのか。政府は説得力のある説明をしていない。
日本はマラッカ海峡の海賊対策で周辺国と協力し、沿岸警備能力の強化に努めた。ソマリアの海賊封じ込めには国内情勢の安定も不可欠だ。たとえ時間がかかっても、こうした対策を追求するのが筋である。
海上警備行動は日本近海での活動を想定している。遠洋での活動は法の拡大解釈ではないかという根本的な疑問も解消されないままだ。
しかも、今回の派遣に国会の承認は必要とされず、終了期限すら定められていない。文民統制をなおざりにした、無原則な海外派遣がまかり通ってしまった。
政府は緊急措置だとし、新たな根拠法として「海賊対処法案」を今国会に提出した。海外での海賊対策を自衛隊の任務に加える内容だ。
この法案も問題が多い。最大の焦点は武器使用基準の緩和である。 従来、海外における自衛隊の武器使用は正当防衛か緊急避難の場合に限られてきた。憲法が禁じる海外での武力行使につながらないよう厳しい枠がはめられていたのだ。
ところが、法案は警告射撃を無視して商船に接近する海賊船を停船させるため船体射撃を認めている。
実際に発砲すれば、自衛隊が戦後初めて海外で人を殺傷する事態が現実のものとなる。「警察活動」だからといって、平和憲法の理念にかなうと言えるだろうか。
海賊は犯罪者集団であり、「国や国に準ずる組織」を相手とする武力行使には当たらないと政府はいう。だが反政府集団が海賊行為を働いていれば、境界線はあいまいになる。
外国軍隊との連携が集団的自衛権の行使となる場合もありえよう。
政府や自民党には海賊対策を踏み台に、他の海外活動でも基準緩和を進める狙いがあるのだろう。次のステップは自衛隊の海外派遣を随時可能にする一般法制定ではないか。
ここは歯止めが必要だ。
武器の使用に厳格な基準を設け、自衛隊の海外活動のあり方を国会で徹底的に論じる。前に進むよりも、立ち止まって熟慮したい。
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