市では、市内の情報格差の解消を図るため、市内全域にケーブルテレビ施設を整備する「行政情報高度化推進計画」をH16年10月にまとめ、具体化を検討してきましたが、6月議会で、費用対効果などを総合的に再検討した結果、市が直接整備する事業計画を中止し、民間事業者が主体となって環境整備を図る方針へと転換せざるを得ないとする姿勢を明らかにしました。
合併した戸隠・鬼無里地区では既に「村」時代にケーブルテレビ施設整備が完了しており、旧市内の中山間地におけるテレビ難視聴地区の解消や、音声告知放送や自主放送による全市的な行政情報提供網の整備という点で、情報格差の解消が大きな課題となっていました。当初計画は、H17年度から6年間で、市と民間事業者・INCが分担してケーブルテレビ未整備地域を整備しようとするもので、約33億円の総事業費を見込みました。信更、篠ノ井や七二会、小田切、浅川など10地区は市が、長沼、豊野など3地区は株式会社INCが整備する方針でした。
今回の事業計画の見直しは、利用できると見込んでいた合併特例債(有利な借金)が使えないこと、信更地区でのアンケートで、利用料金の負担が大きいことや多チャンネルやインターネットの加入希望者が少ないこと、テレビの地上デジタル化により難視聴地域が減ることが見込まれること、90%の世帯が加入しても市全体で年間約1億円の財政投資が必要となることなどから、市として直接行う整備は中止せざるを得ないとするものです。
今後は、国の対応策を見極めながら市としての補助制度を立ち上げ、民間事業者による事業整備やデジタル放送受信難地域に対するデジタル対応の具体化、防災無線のデジタル化による情報伝達を図るとしています。いずれもこれから検討という段階、結局のところ、民間に任せたいとする方針です。
しかし、当初から民間単独では採算が取れないから行政で行うとしてきた事業計画であり、「お金がかかりすぎるから中止」というだけでは納得できません。情報の高度化、光ケーブルによる情報提供は、ケーブルテレビや行政チャンネルを通じて行政情報が等しく市民に提供されることに意義があります。情報格差の解消は、単にテレビが視聴できるか否かではなく、行政情報(危機管理・防災情報を含めて)を等しく受ける権利を公平に保障するか否かにあります。収支バランスのみで考えるべきではありません。事業の具体化にあたり「選択と集中」が問われることは否定しませんが、いかなる情報伝達網を全市的に構築するのか、というビジョンを改めて明確にすることが必要です。
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