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財政問題を考える(その1)…財政構造改革懇話会が提言 |
国の三位一体改革による地方交付税の減や、市税収入の落ち込みから、にわかに財政の厳しさがクローズアップされ、改革策を検討するために設置していた財政構造改革懇話会が11月24日、提言をまとめ市長に提出しました。冬季五輪施設のボブスレー・リュージュの「スパイラル」やスキー場の廃止などが大きく報道取り上げられましたが、提言の全体像には余り触れられていません。ポイントを紹介しながら問題点を探ってみたいと思います。
■今のままでは4年後に基金ゼロに
H9年度では市税収入が624億円とピークを迎えたが、高齢化の進展によって社会保障費が増え、さらに高水準が続く市債の償還費(借金の返済)などで支出が増加する一方、不況の影響で市税・地方交付税が減少、H16年度の市税収入は537億円まで落ち込み、「貯金」にあたる財政調整基金を取り崩して歳入不足を補っている状況。H16年度末の基金残高は246億円で、現状のままで収支のアンバランスが続くと、H21年度末には基金はゼロになる。中核市の財政健全度ではまだ上位にランクされるものの、基金を有し体力のある今のうちに財政再建を図らなければならないとしています。
■5つの重点課題と事業類型化モデルを提言
提言は、市が取り組むべき重点課題を5つあげた。一つは行政が税金を投入して何処までサービスを行うべきか、市民と行政の役割分担を適正化すること。二つは公共サービスは法令で決まっているもの以外は原則有料とした上で、受益者負担の適正化、給付水準の見直しを図ること。三つは時代とともに必要性が低下している施設や過剰な配置となっている施設など公共施設の再編等によりコスト削減を図ること。四つは総人件費の抑制。五つは市有財産の有効活用や広告収入などによる増収対策を推進すること。その上で、すべての事務事業について、民間でできるかどうか、行政が義務的に行わなければならない度合いはどうかなどを基準にした「類型化モデル」を示し、このモデルに基づき全事業を見直しすることを提言。「類型化モデル」は、保育料や市営住宅の家賃、公的施設の使用料などでは受益者負担を何処まで拡大するのかという基準であり、年齢や世帯数により個人または団体に一律交付している補助金や交付金(例えば敬老祝い金や区への交付金)を見直すための基準として、さらに観光施設では採算が取れているかどうか、民間と競合する施設かどうかを基準として作用することになります。
■10年後に黒字転換を予想?
さらに提言は、H18年度からH22年度で重点的な歳出カットをすれば、基金を100億円程度確保できる、H26年度以降には、基金残高の状況により建設事業等の拡大が可能となると予想。まずは歳出カット、しっかり我慢すれば、10年後には事業拡大できるという「夢の目標」です。しかし、国の動向や必要な施策・事業の実施を見込んでいない目標ですから、こうした財政推計は当てにならないというのが通説なのですが…。
■期待はずれの提言?
市は、この提言を受けて、事業の見直しを進め財政再建プログラムを策定、H18年度から順じ実施していきたいとしています。市は廃止すべき事業、受益者負担を強める事業などについて「○○事業は廃止」という具合に具体的な提言を期待していたようです。第三者機関である懇話会の提言を理由に「バッサリ削減すること」をもくろんでいたのでしょう。しかし、問題意識と見直しの手法を提言するにとどまり、判断はすべて市長に委ねられる格好になりました。
■市民負担増が既定路線に?!、市民サービスは低下させないチェックへ
私は何回か懇話会を傍聴しました。学識経験者を中心に構成される懇話会では、直接・間接の具体的な市民サービスについて「これもムダ、あれもムダ、見直していないのは行政の怠慢」みたいな極めて過激な発言がその場の思いつきで議論されているとの印象をぬぐえませんでした。それに比べ、提言はきれいにまとめられたといえるかもしれません。とはいえ、市民が享受している現行のサービスを受益者負担を強める方向で見直すことになることは間違いありません。ムダを省き市民の必要度・満足度に応じて事業を再チェックすることは不可欠です。同時に「何でも行政にお任せ」から脱却し、合意と納得のもとに役割分担を進めていくことも必要です。
財政再建プログラムがどんな内容で作られるのか、H18年度予算案にどんな見直し・削減メニューが並ぶのか、「市民サービスの低下はさせない」との観点から厳しく要チェックです。
*関連のページ「市政直行便No.5」へ
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