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05年9月議会を振り返って(その2) 「指定管理者」議会! |
9月議会は、補正予算審議も重要な内容でしたが、一言で振り返ると「指定管理者」議会と言えるでしょう。決定した補正予算の内容と指定管理者の議案をめぐる課題についてまとめてみました。
●12億7900万の補正予算の主な内容は…
アスベスト対策として小中学校及び体育施設の除去対策に5529万円、消防職員・団員の防塵マスク整備に826万6千円。農作物災害への緊急対策に566万円余、バイオマスエネルギーの利活用推進の施設整備補助金4千万円、小学校の学校林の整備費150万円、中山間地の生活道路整備や道路防災、河川水路の改修費等で6億6800万円などです。学校林の整備では松ヶ丘小学校が対象となりました。また、屋外広告物条例が全面改正されました。
●152の公の施設で指定管理者を指定、議案に賛成はしたものの…
指定管理者制度とは,公の施設(市民会館・運動公園など)を管理するための手段です。平成15年6月の地方自治法の改正(規制緩和)により,市が出資する外郭団体(第3セクターなど)のほかに,「民間企業やその他の団体」も,公の施設の管理を行うことができるようになったものです。鷲沢市長は、この指定管理者制度を行政改革の更なる継続と民間活力の導入にあたっての一つの大きな柱としています。長野市(旧長野市)には、市が管理する公の施設が あり、これらの施設に指定管理者を導入するため、228の施設について指定管理者を公募しました。内、応募のあった154の施設で指定管理者を候補者として選定(外部委員4人、内部委員4人の計8人で構成)、9月議会では、どの業者・団体を指定管理者に指定するのかが議案となったわけです。154の施設管理の内訳は、今までの管理団体から新たな指定管理者とする施設が18、今までの管理団体がそのまま指定管理者となった施設が93、今までの直営管理から新たに指定管理者となった施設が43です。応募が無かった施設、或いは応募はあったが条件が整わず指定管理者に選定しなかった施設が屋外運動場などで74ありますが、当面は直営管理することになっています。
指定管理者の指定に関する議案審議にあたり、十分な資料提供・情報開示がされないという事態が発生し、議案に対する賛成討論という形で苦言と提言を呈したことは前に書きましたが、このときの討論の内容を掲載します。メモで討論したため正確ではありませんが、趣旨を汲んでもらえればと思います。
《新しい施設管理制度である指定管理者制度を市民サービス向上のためにいかに活用するかが重要》
改正地方自治法は、指定管理者制度の制度設計の多くを自治体の条例にゆだね、また、国も従来のように条例の雛形の提示や詳細な解説通知を出していないため、自治体は試行錯誤の中で走り出しています。その意味で、どのような制度設計をして「市民の福祉」を実現するのか、制度に対する自治体のスタンスと法的センスが問われているといえます。この制度自体は、公の施設の管理運営の民間開放のための手段ですが、指定管理者制度を単なる行政の減量化・スリム化を目的としたアウトソーシングのための手法として使うのではなく、この制度を生かしてどのように「市民の福祉」を実現し、「自治体の責任」を果たすのかが問われている象徴的ともいうべき課題です。したがって、指定管理者の指定にあたっても、選定委員会において、住民サービスの向上と経費の削減を図るとした二つの目的が、如何にかなっているのかを審査し、議案となっているはずです。今議会では、この二つの目的に沿った選定過程が、十分に明らかにされ、議会審議を保障しえたのか、という問題が問われました。初めての取り組みだけに、さまざまな懸念もあり、一般質問においても20人中6人の議員が質問をするなど、非常に高い関心を呼んでいるのだと思います。
《公正・公平な議会審議の保障を、議会軽視とならない誠実な対応を》
まずは選定過程の資料公開についてです。本会議で、資料を提供すると答弁したにもかかわらず、委員会審議一日目では、極めて不十分な対応にとどまり、委員会の指摘により、資料が小出しされました。しかも、委員会ごとに、或いは所管ごとに提出された情報内容がばらばらで、公開・提出資料が不統一で公正な審議を欠かざるを得ませんでした。ある所管では、経費削減の見込み額も提示されました。これでは、公正・公平な議会審議の妨げとなります。議案の重要性、市民サービスの向上にかかわる課題であるだけに、十分な情報提供、市当局の誠実な対応を求めるものです。選定委員会では、審査基準として、[第1分類]住民の平等利用の確保、管理の安定性・施設の有効利用、経費の削減の3項目、第2分類・9項目、第3分類・25項目を設定、それぞれ点数制で評価しました。主観的な判断基準ではなく、客観的な判断基準として、これらの情報も公開・提供されるべきでしょう。事業体の計画の秘匿性、守秘義務を理由とするのであれば、回収資料として提供するなど、対応は工夫できるはず。今後、合併4町村の施設にかかわっても指定管理者の指定を行うことになるわけで、情報開示と議会審査権を公正・公平に保障するという観点から、抜本的な対応改善を求めたい。また今後、指定管理者となった業者・団体は毎年事業報告の提出、そして市当局の検証が行われるが、厳しい審査を求めるとともに、3年後、5年後に改めて指定管理者の指定を行う際に、今回の選定、議会審議において明らかとなった課題について、万全の対応策穂講じられるよう求めたい。
《本当に市民サービスの向上、経費の削減となるのか、十分な検討を》
住民の平等利用の確保、管理の安定性・施設の有効利用、経費の削減など、指定管理者制度の目的を本当に生かすことができるのかが事業者の指定にあたっても最大の関心事です。因みに経費削減ではざっと9600万円の削減となる見込みが示されました。二つの事例で考えてみたいと思います。一つは、今まで管理委託してきた事業体が、引き続き、指定管理者となるケースで、総合レクリエーションセンター(サンマリーン)と青垣公園市民プールの場合で、経費削減が3500万円に及ぶとされている施設があることです。これまで管理委託契約の際に、何をチェックしてきたのかということが改めて問われます。管理委託契約後は「任せっぱなし」という現実と議会自身のチェック不足が問われています。指定管理者の移行に伴い、従来の管理委託契約の問題点の洗い出しも率直に行われなければならないでしょう。二つは、市民サービス向上に向けた自主事業提案の「メニュー」がたくさん提案され、魅力的なものも多いのですが、その魅力的なメニュが「受益者負担」で提案されていることです。例えば「少年科学センター」の場合、入館料を払って入場しても、館内でメニューを選べる子と選べない子がでてきます。教育施設であることを考えると、サービスを受ける機会均等、住民の平等利用の確保が保障されなくなってしまう危険があります。「受益者負担でサービス向上」という考え方には慎重な対応を求めたい。事業者が違えば、同じような施設におけるサービスに格差が生じるという問題も発生します。福祉医療施設、教育施設の場合に「それが正当な競争」と一言で片付けるには、問題が多すぎます。今後、指定した事業者・団体との間で市民サービス等について「協定」を結び、個々の施設条例の改正となるが、受益者負担の手法については十分に慎重であるべきです。
《雇用の確保に万全を》
嘱託職員・臨時職員の雇用の継続について、現状としては「約半数が可能」と本会議で答弁したが、残る半数の職員についても 職員への十分な説明責任を果たし、全員が雇用を継続できるよう、また労働条件が保持されるよう、指定管理者と協議し、協定を結ぶことを強く求めたい。
以上のような内容です。閉会後に、とある理事者から「あれで賛成討論?」と冷やかされましたが、市民サービス向上という本来の目的に照らしてチェックし正すことが議員の責任、議案に賛成しても「苦言」を呈することは大事なことだと考えています。当たり前のことですが…。
*指定管理者制度の導入については長野市行政改革推進局のホームページへ
http://www.city.nagano.nagano.jp/ikka/gyokaku/index.htmll
●倉敷市では選定委員会の点数評価を市民に公開
05年11月1日に市民ネット市議団で視察した倉敷市では、選定委員会(外部委員4人・内部委員1人の計5人で構成)での評価を基本的にすべて公開、指定管理者の選定にあたっては「サウンディング」という独自の市場調査も行っていました。詳しくは視察報告に掲載していますので、合わせてご覧ください。視察報告はこちら。
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