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2012年1月30日 国交省の提起受け、LRT(次世代型路面電車)の導入問題を考える

国交省の担当官を招いての勉強会
 24日の「屋代線を考える議員連盟」の勉強会については、ブログで第一報を報告しましたが、ここでは、それぞれの講演のポイントを紹介し、長野市で導入を検討する際の課題について、大まかな問題意識を整理したいと思います。
 それにしても、国交省から技術審議官や企画官ら4人の来長には驚きです。国交省の熱意と狙いを見極めながら、LRTとは何ぞや? 移動権の確立、市民の幸せにどのように結びつけることができるのか、長野の都市構造の地域性を吟味しながら、しっかりと考える一里塚にしたいものです。
 掲載している資料は、講演会の資料から一部を転載したものです。

「21世紀のまちづくりと都市交通」
        by松井直人 国土交通省都市局 官房技術審議官

《都市を取り巻く社会経済情勢の変化》…郊外拡散からコンパクトシティへ

*少子高齢社会の進展
*市街地が拡散し、人口密度が低下、公共交通の利用率が減少
*市街地の拡散による行政コストの増大
*特に地方都市を中心に自動車利用が増加し、公共交通が衰退
*シャッター街化、増加する空き地・空き店舗、低未利用地…中心市街地の衰退

《まちづくりと都市交通》…衣・食・住・交(交通)一体のまちづくりへ[都市・地域総合交通戦略]

*少子超高齢社会に対応したコンパクトな集約型都市構造に転換
*大型店の郊外立地~新たな交通重要に対応する幹線道路整備~自動車依存の増加といったモータリーゼーション・スパイラルからの脱却
徒歩・自転車・自動車・公共交通の適正分担に基づき、交通円滑化・利便性向上・モビリティの確保を実現する総合的な都市交通戦略の策定へ。衣・食・住・交(交通)一体のまちづくり。
*地域公共交通活性化・再生法による地域公共交通総合連携計画との連携
都市・地域総合交通戦略は策定済47都市、策定中26都市で計73都市(H23.7現在)。長野市は未策定。

*都市・地域総合交通戦略に基づく事業への国の重点支援は、社会資本整備総合交付金(都市・地域交通戦略推進事業[補助率1/3⇒1/2]と都市再生整備計画事業[補助率40%⇒45%])で対応。
*補助メニューとして、駅前広場の整備・歩行者専用道路の整備・LRTの整備・バスレーンやバス停の整備などの基幹事業、交通安全施設等の整備・LRTの車両基地や電力施設等の整備となる関連社会資本整備事業、コミュニティバスの導入や自転車利用促進社会実験などの効果促進事業の一体的支援をスキームとする。


《公共交通導入パターン・体系と事例》…LRTプロジェクトと国の支援

*5つのパターンを紹介。例えば、①既存バス利用者を対象に、幹線部分をLRTに転換(仏のルーアンやオルレアン)、②大規模開発や空港など広域交通拠点へのアクセス機能(富山市のライトレール、仏のリヨンLEA計画)、③都心部で交通結節点と商業施設や観光スポット等を接続、都心回遊需要を対象(仏のボルドーやポートランド)など。
*LRTの特徴とメリット
*欧米では70以上の都市で復活・導入が進むが、日本では、関係主体間の合意形成、初期投資や維持管理などコスト負担が大きい、導入空間の制約などが要因で整備が進まないとする。
*そのために、国土交通省(都市局・道路局・鉄道局)、警察庁の連携のもと、LRT整備を総合的に支援するLRTプロジェクトを立ち上げ、自治体・事業者・有識者で構成されるLRTプロジェクト推進協議会を設置して支援を進める。
LRTの整備等に対する総合的な支援スキームとしては、自治体を対象とする社会資本整備総合交付金、事業者向けの地域公共交通確保維持改善事業を用意する。事業費は1キロ当たり15億円から25億円とされる。
*富山ライトレールは約58億円、1キロ当たり7.8億円。

《海外での事例》



「LRTの現状、取り組みについて」
        by三森浩二 国土交通省鉄道局財政課 地域鉄道支援室 地域鉄道戦略企画官


《路面電車の衰退》
*1895年(M28)に京都電気鉄道が日本初の路面電車として開業。1930年頃を事業者数・路線長ともにピークを迎えるが、戦後の高度経済成長期、モータリーゼーションの進展、地下鉄の普及、バス輸送への置き換えにより、利用者の減少と運営赤字の増加で、路面電車は衰退の一途をたどる。輸送人員最盛期であった1960年、52事業者・1319.2営業キロ・26億5500万人の輸送人員であったものが、2010年の50年間で、19事業者・237.7営業キロ・1億8443万人に。事業者数は6割減、営業キロは8割減、旅客数は9割減。


《路面電車の現状とLRT導入》…路面電車が再評価
*今日、地方都市におけるバス交通の危機的衰退状況もあり、「人にやさしい」「環境にやさしい」「道路渋滞の緩和」「建設コストが安い」「速達性・定時性」「市街地の活性化」の観点から、路面電車・LRTが再評価。
*しかし、新規にLRT=軌道事業を始める場合、軌道法第3条による軌道事業特許にかかる審査基準をクリアーする必要があり、事業性・継続性・安定性・採算性などが厳しくチェックされることから、導入を検討する事業者または自治体がありながらも、整備は遅々として進んでいない現実がある。
*全国の路面電車を運行する軌道事業者は19社。次世代型路面電車システム=LRTの定義に基づけば、導入は富山市のみであり、他の12事業者では低床型車両=LRVを導入していることになる。年間の輸送人員は高岡市の万葉線=121万人から広島電鉄=3685万人とかなり幅がある。


《LRT導入を支援するLRTプロジェクトと国の支援スキーム》
*事業者、自治体、有識者・NPOや国と「LRTプロジェクト推進協議会」を設置し、合意形成と計画策定を行うことになる。
*国の総合的な支援スキームとして、社会資本整備交付金と地域公共交通確保維持改善事業を活用し、上下分離方式など様々な官民の役割分担による支援が準備されている。


長野市におけるLRT導入を検討する視点として
 国交省の皆さんの提起を受け止めたうえで、思いつくままに課題を述べてみたいと思います。屋代線「廃止」が目前に迫る中、代替バス運行計画のスタートに関心が移行していることに、鉄路の存続・復活を求めてきた私としては、"焦り"を禁じ得ません。昨年12月14日にまとめた『12月議会の論点・焦点[その2]…屋代線・鉄路復活の可能性は?LRT導入の提案、どう活かすか』で整理した考え方を踏まえつつ、行政への提案を含めて、今、考えていることです。沿線住民の皆さんをはじめ関係者の皆さんのご意見をいただければと思います。

(1)国交省から技術審議官や企画官など、そうそうたるメンバーが長野入りしたことの意義は大きい。全国的には、既存の路面電車をLRV化する取り組みは進んでいるが、新規のLRT導入は、その必要性が叫ばれて久しいものの、未だその整備は進んでいない現実がある。今日的にも堺市、宇都宮市、静岡市などで検討されているものの、直近の新情報は伝わっていない。国交省の狙いは、屋代線よりも長野電鉄長野線にあるのかもしれない。長野線の経営悪化による危機を回避するために、今から総合的な視点を持って、LRTを一つのツールとして交通ネットワークを考えてもらいたいとのサインのようにも思われる。

(2)実際に、企画官との意見交換では、国交省は、屋代線の廃止決定には、法の趣旨からいかがなものかとの疑念を持ちつつも、年間50万人の輸送人員である屋代線を単にLRTに置き換えるだけでは展望は開けないとの認識でいるように感じる。確かに、基本的に「通学・通院の足」である屋代線をLRT化するだけでは根本的な解決とはならない。長野線及びしなの鉄道との連絡により「通勤の足」として利用される展望をつくらなければならないだろう。結局の処、法定協議会のそもそもの議論と結論に舞い戻るジレンマに陥る。

(3)LRT導入の目的は、少子高齢社会にあって、住民の移動の自由度を高め、持続可能で住み続けられるまちづくりを進めることにある。LRTという交通モードは、行き過ぎた車社会から脱却し、人と環境にやさしく、快適に生活するための都市インフラの一つとして位置づけられる。従って、採算性を重視していては、導入は進まないともいえる。公設民営・上下分離方式を含めて財源を確保するとともに、鉄道事業者、バス事業者との連携を十分に図り、LRTがまちづくりをこんな風に変えるというビジョンをきちんと示し、十分な市民合意を形成することが鍵といえよう。

4)その意味で、「都市・地域総合交通戦略」とされる総合交通ビジョンの策定に取りかかる必要があろう。その中で、地域性を踏まえ、まちづくりに貢献できるLRTの活用を位置づけることではないか。

(5)従って、河東地域を結ぶ屋代線の後利用と長野市域におけるLRTの導入は切り離さざるを得なくなるものと思われるが、屋代線を「廃止」から「休止」にすることで、2つの課題を結びつける接点を見出すことができるのかもしれない。しかし、法定協の決定を覆すだけのエネルギーが行政側と沿線住民側に、そして議会側にどれだけあるのかが問われる。とはいえ、鉄路や施設を撤去させない取り組みとして、「ダメ元」で検討を進めたい。

(6)LRT導入の財源確保や市民合意を考えたときに、大きなビジョンのもとに「できるところから始める」という発想で、検討を開始することになるのではないだろうか。松代住自協をはじめ犀南地区の住自協が提案している「松代~南長野運動公園~長野駅~善光寺、さらに環状線化」という構図のもとで、まず、どこで可能なのかということであろう。LRV(車両)の車両基地の確保も必要である。私自身の個人的な想いとしては、現在のバス路線網とバス利用度を踏まえ、長野電鉄長野線の路面電車化・LRVの導入が検討できないものかと思う。

(7)とはいえ、結果として、屋代線の鉄路復活を「棚上げ」してしまうことに繋がりかねないのだが、では、どうするか。例えば、鉄路の復活を将来課題に残したうえで、屋代線跡地を「バス専用道路化」することは考えられないのだろうか(鹿島鉄道廃線後のBRT導入を参考に非公式に提案しているものではあるが)。代替バス運行の開始を目前に控える中、定時性・速達性をある程度維持することができるバス専用道は、利便性の向上、バス利用への転換定着率を高めることにつながると考えるからだ。若穂地区と中心市街地を結ぶ新規バス路線網も考えられよう。その上で、道路に軌道を敷設することを将来展望する道だ。初期投資の問題は発生するのだが。

(8)いずれにせよ、市街地が既に拡散している長野市域にあって、長野電鉄長野線、JR及びしなの鉄道、長野以北の並行在来線、そして整備が進むコミュニティバス・デマンドタクシー路線網を結び直し、徒歩及び自転車利用も含め、生活圏域で公共交通を利用し歩いて暮らすことのできるまちづくりのグランドデザインを創ることが不可欠だと考える。あるゆる可能性を閉ざさず、「夢」を現実にする行動力、政治力が問われる。