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2010年1月11日
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廃止準備計画か?…屋代線総合連携計画・素案の根本問題


長野電鉄屋代線の総合連携計画の素案概要が明らかに

1月7日の会派合同総会で、「長野電鉄屋代線総合連携計画(素案)」の概要が示された。法定協議会である長野電鉄活性化協議会での検討にワーキンググループ(長野電鉄の経営分析と沿線住民の利用促進の二つをテーマに設置)での検討を加えてまとめられたもので、1月13日の法定協議会で決定される段取りとなっている。

廃止準備計画?…骨格が変更され、大きく後退した計画
 11月26日の法定協議会で議論された「総合連携計画(検討資料)」に比べ、計画の骨格が変わり、大きく後退した内容となっている。
 一つは、長野電鉄単独での運行継続が困難なことを踏まえて打ち出された、上下分離方式を含む公的支援による屋代線の新たな運行形態へ移行の検討が先送りされたことだ。このことに関連し、ディーゼルへのシステム置換が素案から消滅している。
 二つに、利用者の増加を図るためのサービス向上策で、運行頻度の改善・増加を図るための実証実験に「バスによる増便」が新たに盛り込まれ、松代を起点に松代~屋代間、松代~須坂間でバス運行を行うとする。「バスによる代替運行」を選択肢に明確に位置付けたことで、屋代線の廃線を意図する計画となっていることである。少なくとも鉄路の廃線への布石になりかねない。しかも、増便の実証運行は3ヶ月間しかない。
 総じて、「屋代線の役割は必ずしも経済的効率性だけで評価するのは適切でない」「貴重な社会資本である屋代線を持続可能な鉄道として次世代に継承できる方策を導き出す」ことに「総合連携計画」の意義があるとしながら、「具体的な推進施策」では、公的支援を先送りし、バス代替運行を実証実験に盛り込むことで、鉄路の廃線に備える計画になっていることだ。すなわち、存続計画ではなく、廃止準備計画となってしまうということだ。これでは、存続に向け動き出している沿線住民の運動に水を差し、住民の主体的な役割を否定することにつながりかねない。
バス代替でも仕方がないのか…失敗しているバス代替策
 確かに、長野電鉄の経営が極めて厳しく、長野電鉄本体が「屋代線廃止」を打ち出し、存続を放棄する可能性が高まっている事情があることも分かるし、去年1年間で沿線住民の利用増が数字に表れてきていない事情も分かる。沿線の熱意ある存続運動はこれからという状況にあるのは事実だ。しかし、だからといって、バスによる代替運行を計画に盛り込むことは本末転倒である。行政側は、「事業者の体力にも問題がある。鉄道の増便や最終便の繰り下げ、パークアンドライド駐車場・サイクルアンドライド駐車場の整備、サイクルトレインの導入、持参人式通勤定期の販売、イベント列車の運行など利用促進を図るためのメニューを実証実験として盛り込んでいる。沿線の利用者増の結果がどう出るかだ。実証実験を検証し、総合連携計画を見直すことにしている。廃線を意図するものではない」とするのであろう。しかし、そもそも法定協議会は、屋代線を鉄路として存続し、沿線との協働で再生・活性化を図るために設置され、そのための総合連携計画を策定することに目的があったはずである。この根幹が揺らいでいると言わざるを得ない。「バス代替でも仕方がない」という結論を出すために設置されたものではない。
 長野電鉄木島線が廃止されバス代替運行に切り替えられたが、バス利用は伸び悩みマイカーに切り替わってしまっていること、全国的にバス代替運行は成功していないことをしっかり押さえることが必要である。しかも、計画の骨格の変更、その検討経過と内容が沿線住民に伝えられていないことも問題である。
バス代替運行実験は計画から除外すべき
 13日に開かれる法定協議会において、具体的な推進計画から「バスによる代替運行実験」が除外されること、公的支援の在り方についてもっと突っ込んだ議論が行われることを強く期待する。
 また、検討資料段階から素案段階での骨格の変更の理由、二つのワーキンググループでの検討内容、ライフスタイルの切り替えを展望する実証実験が3カ月間で十分なのか、事業者である長野電鉄は総合連携計画に基づき、積極的に事業展開を図る決意があるのか、或いはどこまでできるのか、鉄路の持つ社会的文化的意義は何なのか、近接する自治体を含めた長野広域エリアに必要な鉄道ネットワークのあり方、公的な支援として何が必要なのか、温暖化防止につながる効果的な施策、沿線の取り組みの課題などについて、しっかり論点整理してもらいたい。
鉄道ネットワークの意義を捉え返し、沿線の期待と希望がつながる計画へ
 既に1月27日から2月19日までの期間でパブリックコメントが予定されている。3月初めには国交省に計画書を提出し、H22年度からの事業開始を図るためだ。沿線住民の期待と希望がつながる総合連携計画、全市的な鉄道ネットワーク・地域公共交通網の整備につながる総合連携計画にしたいと願う。
 いずれにしても、沿線住民の皆さんの主体的な運動と、全市民的な理解が不可欠な課題であることは間違いない。沿線住民との対話集会などをはじめ、具体的な取り組みが必要である。

「検討資料」から「素案概要」における変更点
 アバウトにまとめたものだが、根幹が変更されていることに注目である。下線は筆者。

09/11/26「検討資料」 2010/1/7「素案概要」
はじめに…計画の問題意識 (1)長野電鉄は経常損益が1.6億円(H19年度)の赤字、屋代線単体では1.8億円(H19年度)の赤字で、非常に厳しい経営状況。
(2)屋代線は長野市・須坂市・千曲市を結ぶ都市交通軸を形成し、沿線の通勤・通学や交通弱者の足として重要な役割を担い、必ずしも経済効率性だけで評価するのは適切でない。

(3)長野電鉄の鉄道輸送の現状分析と地域ニーズの的確な把握により、①市民のみならず来訪者にも利用しやすい鉄道として再生するための活性化策②効率的な鉄道経営にかかる施策③地域が一体となって鉄道を支える仕組みや施策を検討し、貴重な社会資本である屋代線という既存ストックを持続可能な鉄道として次世代に継承できる方策を導き出す。
*基本的に同趣旨
屋代線の現状 ●屋代線沿線3市の人口はすべて減少傾向にある。2005年から30年間に2割減少する一方、高齢人口が増加。
●屋代線利用者は、H19年で約48.5万人でH10年の6割に減少。
*基本的に同趣旨
ニーズの把握 ●住民アンケート調査…内容略
●観光モニタリング調査…内容略
●関係団体ヒアリング…内容略
*基本的に同趣旨
屋代線の経営分析

(1)長野電鉄の経営の現状
 ①H19年度収支では、収益における屋代線の割合は4%程度、営業費では11%を占める。長野線単体では2200万円の黒字に対し、屋代線は1.8億円の赤字で、全体で1.6億円の赤字で、屋代線が大きな負担となっている。営業係数でも長野線94.4に対し屋代線は276.6。
 ②職員1人当たりの輸送人員、運輸収入、車両走行キロでは他の地方鉄道に比べ高い水準にあり、ほとんどの駅が無地化による人員削減等により生産性は高い。

 ③経営改善

(2)将来の経営見通し
 利用者数の見通しは、長野線・屋代線ともに大きく減少。特に屋代線の定期利用者の減少が大きい。営業収入では屋代線がH19年比でH27年には92%、H37年には76%に。長野線でもH27年には94%、H37年には81%まで落ち込む。

 屋代線の設備投資計画ではH30年までに約31億円を計画。綿内変電所など電気系設備に8億、保線及び土木関係設備に15億、車両設備に8億。長野線は約50億円を計画。
 屋代線の赤字幅は、H19年の1.8億がH21年には2.8億円、H37年には3.3億円に拡大。現在黒字の長野線もH21年には赤字に転落が見通され、長野電鉄として経営が成り立たなくなる可能性がある。
 システム置換による効果の試算において、現在の電車と気道車(ディーゼルカー)とDMV(デュアルモードビークル)を比較。ランニングコストはディーゼル車で年間約2.2億円、DMVで年間約2.6億円の赤字減少となるが、それぞれ初期投資が必要。DMVは実験段階であることに加え、沿線の状況からその特徴を生かす運行がしにくいと考えられる。

(1)長野線・屋代線、長野電鉄の経常収支
(2)長野線・屋代線、長野電鉄の営業係数と輸送密度
  
*「検討資料」の(1)を再整理








(3)屋代線の利用者数の将来見通し及び経常収支の見通し

  *具体的な赤字額から割合に表現を
   変更(概要版のため、一概には言え
   ないが)












  *④のシステム置換による効果の試
   算が削除。現行の電気システムで
   存続が一貫しているのであれば、別
   に問題はないのだが…。
屋代線の課題と対応方針

(1)課題は二つに整理される。課題1=経常収支の大幅赤字、課題2=屋代線の利用者の減少。
(2)課題1=経常収支の大幅赤字
 ①長野電鉄単独での屋代線運営は限界である。しかし、屋代線の社会的価値は大きく、存続には長野電鉄の努力だけに頼らない運営の仕組みが必要。
 ②行政、地域住民、地域企業、鉄道事業者が一丸となった公的支援による屋代線運営の新たな仕組みづくりが必要。
(3)課題2=屋代線の利用者の減少
 ①現状のサービス水準では他の交通手段との競争力がなくなっているが、アンケートでは半数以上の人が「サービス水準が改善されれば頻繁に利用する・時々利用する」と考えている。利用してもらえる環境づくりと住民の意識向上が必要。また観光客をうまく沿線に呼び込むことも必要。
 ②日常の生活行動で抵抗なく使えるサービス水準の確保、屋代線を活用した人の動きの創出、地域で支える意識の醸成が必要。

  *課題の優先順位が逆転。公的支援    の位置付けが後退したことが明確に。

(2)課題1=屋代線の利用者の減少
  *内容は「検討資料」課題2と同趣旨






(3)課題2=経常収支の大幅赤字
  *内容は「検討資料」課題1の①のみ
  *②の公的支援による新たな仕組み
   づくりが削除
基本方針と取り組むべき施策 (1)基本方針と具体的な施策
 屋代線の存在意義や社会的価値等を共有することにより、公的支援による新たな運営形態への移行を検討するとともに、効率的な運営と魅力あるサービス提供により、屋代線の抜本的再生を図るとし①~④の4点を基本方針とする。
[Ⅰ.経常収支の大幅赤字への対応策]
①新たな運行形態への移行の検討
 *運行形態は、第三セクターや上下分離型、自治体が資産の一部を保有するパターンを検討した結果、「第一種鉄道事業者として第三セクターを立ち上げるよりも既存鉄道事業者との連携を踏まえ、第二種鉄道事業者として運行委託する上下分離型が適切」とする。
 *上下分離方式で運行システムをディーゼル車に置換し、目標のサービス水準(39本/日・片道)を提供すると想定した場合でも10年間で約18億円、年平均1.8億円の赤字となる。

 *この赤字を行政・事業者・住民の3者で均一負担するとした場合、沿線住民の負担(6000万円)を利用者の増によって補うことを想定すると、必要な利用者数の増加は10年間で300万人、累計で利用者数720万人と試算。年間では現状の48万人より150%増の24万人増、計72万人が必要とされる。
[Ⅱ.屋代線の利用者の減少への対応策…28施策]
②日常の生活行動で抵抗なく使えるサービス水準の確保
 *運行頻度の改善…朝夕20分間隔・昼間30分間隔
 *しなの鉄道、長野線との接続改善、しなの鉄道への直通運転
 *P&R駐車場、C&R駐車場の整備、昼間時のサイクルトレインの導入
 *持参人式通勤定期券、年間通学定期券の割引率アップ、運賃体系の見直し
 *早朝・深夜運行時間帯の拡大
 *トイレの改良、案内表示の充実
③屋代線を活用した人の動きの創出
 *周遊割引切符、イベント列車、デザイン車両
 *駅舎の改良、地域イベント
④地域が一体となった鉄道を支える仕組みづくり
 *置き回数券(通常より割引率の高い回数券を家庭や企業に配布)
 *地域ボランティアの組織構築、意識啓発のためのパンフ発行
(1)基本理念
 地域みんなで支え育てることで、地域を支える持続可能な公共交通機関として再生する。

(2)基本方針
  *①~④の四つの基本方針の設定は    変わらないが、優先順位が変更。
①方針1=日常の生活行動で抵抗なく使えるサービス水準
  *「検討資料」②を踏襲するものの、
   運行頻度の改善・増加に「バスによ
   る増便」が新たに盛り込まれる。


















②方針2=屋代線を活用した人の動きの創出
  *「検討資料」③を踏襲









③方針3=地域が一体となった鉄道を支える仕組みづくり
  *「検討資料」④を踏襲

④方針4=新たな運行形態への移行の検討

 ◆屋代線単体での経営状況は、交通事業者の独立採算で支えるには限界である一方、屋代線は高校生の通学の重要な移動手段であるとともに、高齢者等の交通弱者の日常生活に不可欠な手段。
 ◆屋代線の公益性に鑑み、公的支援による新たな運営スキームの検討を今後行う実証実験の評価分析調査等の結果を踏まえて行っていく。
  *「公的支援」は実証実験の結果次
   第とし、上下分離方式が適している
   とした具体的な運営スキームについ
   ては削除。
 ◆啓発活動とともに、実証実験の評価、市民意向調査を踏まえ、上下分離方式、補助金による運営補助等、公的支援の方向性を検討し、活性化施策の見直し、屋代線の運営スキームの方向性を決定する。
  *見直しの時期については不明確。
目標 *記載なし (1)屋代線の年間利用者数
H20年・47万人をH24年には60万人に。計画期間3年間で13万人、27%増を目標とする。
◆屋代線沿線の約2万1千世帯のうち、家族の誰か一人が年間約6回/片道利用すれば達成できる目標。
◆ただし、営業収支を黒字にするためには、現状の約3倍にあたる約130万人/年の利用が必要。目標達成でも赤字は解消できない。
実施主体とスケジュール *略 *略


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