今日の話題
今日の話題
08年8月21日
トップページに戻る トピックス・長野市議会に戻る 次のトピックス
H19年度決算、長野市の財政「健康な状態」というが…

 このほど、長野市のH19年度の会計決算状況が明らかになりました。概要と素朴な疑問をまとめてみました。

一般会計、貯金の取り崩しなしで黒字に

一般会計では、当初予定していた基金取り崩し額(貯金の取り崩し)29億2000万円は取り崩すことなく、また市債新規借入額(新しい借金)を100億円以内にとどめることができた結果、実質収支で18億4000万円の黒字決算に。国民健康保険や介護保険など18ある特別会計全体でも実質収支で5億5900万の黒字になったとのことです。

一般会計歳入では、市税が前年度より50億円増え605億円に。歳入全体の45%を占めます。税源移譲(+29億)や定率減税廃止(+7億)などによる個人市民税の増が主なもの。一方、所得譲与税の廃止(-27億)や減税補てん特例交付金の廃止(-14億円)と譲与税・交付金が39億円の減、地方交付税は19億円の減で192億円。歳出では、人件費と扶助費、公債費の義務的経費が全体の46.6%、612億円。前年度比1.1%の増。普通建設事業費や災害復旧費の投資的経費は、前年度比-6.5%で201億円となっています。

借金残高は一般会計で1,544億円、基金残高322億円

H19年度末の一般会計・市債残高(借金の残高)は1544億円、前年度比88億、5.4%の減に。借金の返済は218億円で、当面200億円台で推移するとしています。また貯金に当たる基金残高は6年ぶりに増加に転じて322億円です。

財政健全化の4指標、すべてで国のイエローライン下回る

 また、夕張市の深刻な財政破綻を受けて制定された「自治体財政健全化法」で義務付けられている4つの指標の速報値も明らかになりました。いずれも国が定めるイエローラインとされる「早期健全化基準」、レッドラインとされる「財政再生基準」を下回っています。

借金返済の重さを示す実質公債費比率は14・1%で、前年度の18・6%から4・5ポイント下がりました。都市計画税の一部を借金返済の公債費などの特定財源に充てることができるようになったことが要因で、地方債発行に国の許可が必要になる18%を下回ることになりました。

 一般会計とすべての特別会計で「黒字」となったため、実質赤字比率や連結実質赤字比率はマイナスとなり数値になっていません。
 将来負担比率は、かなり低いとの印象を持ちますが、これは現時点で確定している将来負担に対する指標で、例えば、今後、予定されている学校校舎の耐震化やごみ焼却施設の建設、市役所庁舎・市民会館の建て替え、斎場の整備などの大規模な事業は反映されていません。

比率 参考値 早期健全化基準 財政再生基準
実質赤字比率 -% ▲2.22% 11.25% 20%
連結実質赤字比率 -% ▲16.19% 16.25% 30%
実質公債費比率 14.1% 25% 35%
将来負担比率 79.1% 350%
  • 実質赤字比率:福祉、教育、環境、防災等を行う一般会計等の赤字の程度を指標化し、財政運営の深刻度を示す数値。

  • 連結実質赤字比率:すべての会計の赤字や黒字を合算し、自治体としての赤字の程度を指標化した数値。

  • 実質公債費比率:借金の返済額やこれに準じる額の大きさを指標化し、資金繰りの深刻度を示す数値

  • 将来負担比率:自治体の一般会計の借金や将来支払っていく可能性のある負担額の現時点での残高の程度を指標化したもので、将来財政を圧迫する危険度を示す数値


市の財政=「現時点では健康状態」と市長

 こうした決算状況を踏まえ、8月8日の記者会見で市長は「長野市の財政は現時点では健康状態にある」との認識を示す一方、経常収支比率(人件費や扶助費。公債費などの義務的経費が市税や交付税などの経常的な一般財源に占める割合。70%~80%が妥当とされる)が、前年度より5.5ポイント上昇し、90%に上り、財政の硬直化が進んでいることが課題であるとしました。また、いずれ具体化しなければならない大規模事業を考えると、現段階は「借金を減らして体力を温存することが基本的政策」としました。

すべての会計「黒字」というが…会計処理のトリック、数字のマジック

 説明を受け素朴な疑問があります。一つはすべての会計が「黒字」ということです。一般会計では、予算規模そのものが縮小している中で、歳出の抑制、事業の絞り込みによって貯金も取り崩さずに済んだということであり、本当に市民が必要としている事業が行われたのかという検証抜きに「黒字でよかった」とはならないこと。また、国民健康保険特別会計も黒字になっていますが、だったら今年度の保険料の大幅なアップは抑制することができたのではないかということ。市民病院や上下水道会計の企業会計は、単年度実質収支は、一般会計から繰り出してもなおかつ「赤字」なのに、「損益勘定留保資金等」(企業内部の留保資金)で補てんして資金不足を会計上無くしているに過ぎないこと。会計処理上のトリックというか、数字のマジックに騙されてはいけません。財政の実態を包み隠さず情報開示するという点で課題を残しています。

市民負担の増により保たれる「健康」とは

 二つは「市財政は健康」との認識についてです。これから先、学校耐震化やごみ焼却施設の建設など大規模事業を考えると、確かに今は「体力温存」の時期にほかなりません。しかし一方で、国の税や保険料負担の増加に加え、国民健康保険料の値上げ、ごみの有料化、受益者負担の見直し等、「利用者負担の適正化」で市民負担の増が押し進められていることを考えると、市民の我慢によって維持される「健康」と言えはしないのか、市の財政は「健康」だが、市民生活は「瀕死状態」なんてことになってはいけません。当たり前のことですが…。真に必要とされるサービスに十分な税金が投入されて、豊かな市民生活を享受することができる、言い換えれば「税金の使い方」の問題に尽きるのですが、大きな課題です。

国の財政健全化基準のあいまいさ

 財政健全化法の指標にしても、実質公債費比率などは、都市計画税の一部を公債費の特定財源に充てることができる新しい基準を設けたことから、数値が小さくなりました。H18年度では「18.6%」で起債に許可が必要とされていた財政水準が、新しい基準で再計算すると「15.24%」で許可団体にならないことに。都市計画税の参入は横浜市長の強い意見で実現したそうですが、全国一律の措置とはいえ、釈然としません。本当に自治体の財政健全化に資する指標足り得るのか、国の基準そのもののあいまいさを痛感します。だったらどうするか?が見えているわけではありませんが…。まぁ、余り一喜一憂しても仕方がない指標だということですか…。

税財源移譲、地方交付税の維持で地方の自立を

 税財源の地方分権は、国・地方を通ずる行財政全体の構造改革にとっても重要な要素であり、むしろ不可欠です。自治体が住民と一緒になって、自由に独自の施策を展開するため、権限移譲や税財源の移譲を進めることが鍵です。しかし、税源移譲が行われても、財源にかたよりがあること、社会保障や生活のナショナルミニマムを保障しなければならないことから、交付税の財源保障と財政調整の二つの役割は維持されなければなりません。税財源の移譲、補助金の見直し、地方交付税の見直しを一体で行うとした国の三位一体改革は、まさにバラバラ改革、国の財政のツケを地方に転嫁するものにしかなっていません。国の制度設計を抜本的に変えていくことが重要です。

このページのトップへページトップへ