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08年7月5日
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川中島バスの不採算路線の見直し案…廃止・減便ありきにならないように

■川中島バス、市内32路線のうち15路線の見直し案を提示
 経営不振から事業再生をめざすアルピコグループ傘下の川中島バスが去る6月5日、長野市長に生活路線バスで不採算となっている路線の見直し案を提示しました。川バスが運行する生活路線バス計32路線のうち15路線が不採算であるとし、4路線は「現状では維持が困難」として廃止する可能性を示すとともに、4路線の減便、7路線を短縮または他路線と再編するとの内容です。アルピコホールディングスの堀籠義雄社長が「(市などと)合意できれば今年中にも見直したい」(6月6日付信濃毎日新聞)と述べたのに対し、鷲沢市長は「赤字を単に市が補てんするというのは市民に理解が得られない。市全体のバス路線網をどうしていくか十分検討させてほしい」とした上で、「(廃止は)市の補助額を試算して判断することになる」と述べたとされています。

 いよいよ具体的になった生活路線バスの危機…将来にわたって持続可能な公共交通システムをいかにつくり上げていくか、正念場を迎えます。

■「危機感を持って取り組む」…市長、6月議会で

市長は6月議会冒頭の議案説明で、「公共交通は、活力あるまちづくり、高齢社会における生活環境づくりに欠かせない都市のインフラであり、中でもバス路線は大きな柱、環境問題を考えた時、マイカー依存型の生活スタイルからの転換が必要であり公共交通の果たす役割は大きい」との認識を示し、「バス路線の廃止・縮小は、市民生活に大きな影響を及ぼすこととなり、危機感を持って取り組まなければならない課題」と位置付けました。今後の取り組みについては、「提案路線に対し赤字分を補てんして維持するといった対処療法」では限界があるため、長電バスを含めた交通事業者に商工会議所を交え、十分に協議し、「将来にわたって持続可能なバス路線網」「利用者増加につながる仕組み」を検討しながら、「できる限り早く提案路線への対応策を見出したい」としました。さらに、国の新しい地域公共交通再生の支援制度を活用しながら、「公共交通の再生」に鋭意取り組むとしました。


■地域公共交通の再生、ライフワークとして

 私自身は、地域公共交通網の整備…市民の足を守るとともに歩いて暮らせる環境にやさしいまちづくりをライフワークに位置付け、これまで取り組んできました。地域公共交通の再生に向けた認識と方向は、市長と基本的に同じです。今後も、市長と連携すべきところは連携し、市民・利用者の皆さんと必要な公共交通の維持に向けて、知恵と力を出す所存です。

 その第一歩として、実行委員会方式で7月13日に「公共交通を考える市民の集い」を計画しました。私はいわば事務局・裏方として「集い」の準備にあたっています。大勢の市民の皆さんに参加いただければありがたいと思います。

■バス離れ…利用者、20年前に比べ半減
 市内の路線バスの利用者数は減少傾向をたどり、20年前の約1960万人がH18年度では961万人と半減しています。一方、鉄道はJRが新幹線開業で一時大きく伸び、ここ10年約1500万人で横ばい状況、長野電鉄は20年前と比べ3割程度減少してきているとされています。
 バス離れは、利用者の減少がバス事業者の経営を圧迫し、運賃値上げや路線の減便、廃止という事態を招き、さらに利用者が減少、バス離れを加速させる悪循環を繰り返してきたといえます。高齢社会を迎える中にあって、この悪循環をいかに断ち切り、公共交通を再生するのかが問われているわけです。

■川バスの見直し案…新たなバス交通空白地域が5地域
 川バスが示した不採算路線の見直しは三つのカテゴリーに分けられています(表を参照)。一つは「維持が難しく代替交通を検討する路線」として4路線、二つは路線の短縮や統合を行う路線で7路線、三つは便数を変更する(減便する)路線で4路線とされています。【右の図は「6月6日付信濃毎日新聞」より転載したもの
 この案では、市内の更北の真島地域、小島田・綱島地域、松代地域、篠ノ井地域、信更地域の5地域にバス交通空白地域が新たに生まれることになります。通勤や通学、通院、そして買い物など、日常生活に欠かすことのできないバス交通が空白となる影響は深刻なものがあります。

        《川中島バスが市に提示した不採算路線の見直し案》
■維持が難しく代替交通を検討する路線(4路線)
路線 経路 内容
県庁循環線 長野駅-県庁正面玄関-ホテル国際21-長野駅 平均乗車密度3.0人
金井山線 長野バスターミナル-長野駅-市役所前-金井山-松代 平均乗車密度5.6人
松代篠ノ井線 篠ノ井駅-篠ノ井病院-東福寺-松代高校 平均乗車密度3.3人
青池線 大塚南-篠ノ井病院-篠ノ井駅-青池-村山 平均乗車密度3.9人
■路線の維持・統合を行う路線(7路線)
路線 経路 内容
小市線・新町大原橋線・高府線 善光寺大門、長野駅-小市団地、大原橋・信州新町、初引・高府 3路線の重複区間(善光寺大門・長野駅-小市小田切口)のダイヤを平日往復71便から57便に減便、小市団地発を廃止
運転免許センター篠ノ井線 千歳町、長野駅-丹波島橋南-運転免許センター-篠ノ井駅 ①平日の日中便と土休日全便を長野駅止まりに路線短縮②平日朝夕の通勤対策便を「市役所前」発着に路線延長
北原篠ノ井線・三本柳線・綱島線 千歳町、長野駅-丹波島橋南-三本柳、綱島、篠ノ井駅 ①3路線の重複区間(長野駅方面-丹波島橋南)のダイヤを効率化、平日往復26便から17便に減便②平日朝夕の篠ノ井方面発便と夕方の長野駅方面発便を市役所初便に路線延長③北原篠ノ井線の布施高田-篠ノ井駅、綱島線の丹波島橋南-綱島は廃止
■便数を変更する路線(4路線)
路線 経路 内容
犀北団地線 長野駅-裾花中学校-工業高校-犀北団地-伊勢宮団地-長野駅 平日28便から24便、土休日20便から17便に減便、朝夕の通勤時間帯は現状維持
北屋島線 長野バスターミナル-長野駅-市役所前-西尾張部-南長池-北屋島 長野駅発を平日29便から24便、土休日22便から16便、北屋島発を平日29便から24便、土休日19便から15便に減便、朝夕の通勤時間帯は現状維持
大豆島線 長野バスターミナル-長野駅-市役所前-南俣-大豆島小学校-大豆島東団地 長野駅発を平日28便から24便、土休日22便から19便、大豆島東団地発を平日28便から23便、土休日21便から18便に減便、朝夕の通勤時間帯は現状維持
東通り線 長野駅-市役所前-文大長野高校-ホワイトリング・松岡 長野駅発の平日を8便から5便、文大長野高校発の平日を9便から4便に減便、通学時間帯は現状維持

■「廃止ありき、減便ありき」でことを進めない
 今回提示された見直し案は、あくまでも「案」であって、「廃止ありき、減便ありき」でことが進められてはならないと思います。今後、市との協議の中でどのように対応するのかが決められていくものだと受け止めています。沿線の利用者・市民の切実な声をしっかりと踏まえ、対応が決められなければなりません。

 市は今後、川中島バスとともに、市内で路線バスを運行する長電バス(長野市)も加えて対応を協議していくとしており、まずはこの成り行きを見守る必要がありそうです。

■問われる二つの課題
 まずは川バスが不採算路線の見直しとして示した廃止・減便路線をどうするのか、沿線住民・利用者の生活の足をどう確保するのかという当面の課題、そしてさらに持続可能なバス路線網を市内にどうつくっていくのかという大きな課題の二つが同時に問われていると考えます。
 沿線住民・利用者の声をしっかりと踏まえた対応策が必要なこと言うまでもありません。
 便利のいい「使えるバス公共交通」にいかに再生させるのか。「乗って残す!乗って生かす!」といった利用者の意識の転換をいかに図るのか。この問題意識のもとに、「ピンチ」を、将来にわたり持続可能な公共交通システムを創りあげていく「チャンス」にしていけるよう頑張る所存です。


関連の課題として、少し整理して提起したいと考えています。
 
 ■3月議会で提起した「市交通公社構想」について
  ■長野市の「バス路線網再編基本計画」の今後について
  ■公共交通の維持・再生に必要な役割分担、財源分担について
  ■「市交通対策審議会」の現状と課題について


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