今日の話題
今日の話題
07年11月16日
トップページに戻る トピックス・長野市議会に戻る 
07年5月、市民ネットで行政視察(第7弾) 大和市・亀山市・静岡市

改選前、はるか5月に行った市民ネットでの行政視察の報告です。政務調査費を使っての行政視察であることから、遅ればせながらの報告ですが、記録にとどめるとともに私自身の情報公開の一環です。
今回は3自治体を訪問、世界の亀山ブランドも視察しました。
[大和市]
①自治基本条例の策定プロセスについて…市長提案の条例となっていますが、策定過程にPI(パブリック・インボルブメント)手法を取り入れ、市民主体の条例策定となったことがポイントです。
[亀山市]
①三重県と一体で成功させたシャープの液晶工場の誘致について…三重県が90億、亀山市が45億、計135億を先行投資し、全国的に注目されたシャープ誘致のカギと課題をテーマとしました。シャープ等が進出した民間の産業団地の大きさと亀山駅前の寂しさが対照的で印象に残りました。ここが課題です。
[静岡市]
①合併に伴い消防を広域化させた取り組みについて…長野市でも広域連合を単位とした消防の広域化が検討されています。今日では県が2消防本部体制という広域化案をまとめています。全国的に広域化が進められることになりますが、市民の安全に直結する広域化のスケールメリットは何か、デメリットはないのかをテーマにしました。

■大和市

(1)大和市の概要
 人口216,634人、世帯数92,344世帯、面積27.06?、人口密度8,006人/?、人口増加率0.36%、神奈川県のほぼ中央に位置し都心から40km圏内。市域は南北に長く平坦。市央を東西に相鉄、南北に小田急、北部に東急田園都市線が乗り入れ、市域の大部分は市内8駅から15分以内の徒歩圏内。道路は国道3線のほか県道4線が走る交通利便性から工場・大型店舗が進出。宅地化も進み、人口21万人余を擁する県央の中堅都市となっている。県内では川崎市に次いで人口密度の高い人口密集都市。00年11月より特例市。まちの顔である大和駅前の整備とイメージアップ、騒音問題をはじめとする厚木基地問題への取り組み、まち全体の犯罪抑止など安全安心のまちづくり、市立病院を中心とした救急医療体制の強化・充実など、重点課題への取り組みが進むとされている。

(2)視察のテーマは「大和市自治基本条例」の策定プロセス
 自治基本条例は地方分権が進む中、市民・議会・行政の三者が「自ら治める」ための基本的なルールとして自治体の最高規範として制定されているもので、全国では北海道ニセコ町に始まり既に100を超える自治体で制定されている。県内では、飯田市議会が発議し制定されている。また、ニセコ町の条例を単純に真似て十分な検討・審議がないまま制定し問題となった自治体も発覚している。提案議案が行政主導と議会主導に分かれ、故に市民サイドからのボトムアップで制定されているケースと理事者サイドで制定されているケースにわかれている。

(3)大和市の場合…市長発議だが、市民参加でボトムアップの条例案策定
 大和市の場合は、いわば中間に位置すると思われる。土屋市長のもとで「環境を守り育てる条例」(H9)、「みんなのまちづくり条例」(H10)、「新しい公共を創造する市民活動推進条例」(H14)の積み上げのもとに、自治基本条例の必要性が唱えられ、条例制定は企画部に担当を設置して始まる。行政の発案で始まり、策定過程に「PI(パブリック・インボルブメント)」の手法を取り入れ、市民が主体であり中心となるプロセスを経ていることが特徴である。PIとは、計画等の策定にあたり、広く市民の意見を聞き、計画に反映する市民参加の手法で、「案」を作る段階からの参加、単なる意見表明に留まらず市民相互の議論も視野に入れる点が特徴だ。その意味で単に市民の意見を聞く「パブリックコメント」とは本質的に異なるといえよう。市民に白紙委任して条例案を作るということだ。

(4)「自治基本条例をつくる会」
 このPIの受け皿として用意されたのが「大和市自治基本条例をつくる会」で、市民と学識経験者、市職員、ファシリテーター(コーデイネーターに近いか?)で構成される。「つくる会」が原案をまとめ市長に報告提案し、議案は市長提案とされ、議会で一部修正政可決されたものである。市民メンバーは定員を設けず公募、35人でスタートしている(解散時は26人)。学識経験者は明治大学政治経済学部の牛山久仁教授、市からは5人、ファシリテーターは民間コンサルタントで「ダイナックス」に委託したそうだ。つくる会発足(H14.4)から条例施行(H17.4)まで3年間を要している。素案完成までの「つくる会」としての会合は10の作業別チームを含めて119回、つくる会の外で行ったフォーラムや市民キャラバン、議員や自治会長。高校生など対象別の意見交換会63回、計182回にのぼる。

(5)大和市条例の特徴
 条例の中身は詳しくは省略するが、「市民」に在学、在勤者等を含むか否か(可決条例は含まず)、「市」は「市議会+執行機関+住民」と定義。また法令の自主解釈・財政自治の原則・対等及び協力の原則など自立した自治体・自治の基本原則を強く打ち出すとともに、常設型の住民投票制度(16歳以上に請求権と投票権)を設けている。さらに「まちづくりに参加する権利を子どもに与える」ことを原案では条文化されたが議会で削除されている。市域に厚木基地を抱えることから、条例で「基地返還」とするか「基地移転」とするかも議論になっている。原案は「返還」であったが議会で「移転」に修正されたそうだ。

(6)PI手法の課題
 行政側は、PI手法での策定プロセスを振り返り、「行政の従来のシステムでは対応できない、行政の常識でことは進まない」ことを痛感する一方、白紙委任と市民参加により「運で市政が動くことの是非」が課題という。PI手法は成長過程にあるシステムだといえよう。長野市でも計画策定(例えば地域福祉計画の策定)にワークショップ方式等を取り入れ市民参加を試みているが、「自治・市民参加・協働」の観点からは発展途上の仕組みといえる。

(7)長野市でいかにして条例策定を進めるか
 懸案の「自治基本条例」だが、長野市では市長サイドも都市内分権・住民自治協議会の進展に伴い「自治本条例」の策定を課題としているが、むしろ議会側から主体的に策定プロセスを構築していくことが重要であると再認識したところである。



■亀山市


(1)亀山市の概要と視察テーマ
 人口46,500人、世帯数16,383世帯、面積190.91?、人口密度244人/?、人口増加率0.52%、三重県の中北部、北と東は鈴鹿市に接し、鈴鹿山脈に抱かれた内陸工業都市。江戸時代には東海道の宿場町・城下町として栄えた。明治期に関西本線・紀勢本線の分岐点となり、近畿圏・中部圏を結ぶ交通の要衝として発展。05年1月に亀山市と関町が合併し、新「亀山市」に。生活面では鈴鹿・四日市両市との結びつきが比較的強い。亀山・関テクノヒルズ工業団地へのシャープの進出(操業は亀山工場04年1月、第二工場06年8月)を契機に、液晶産業に関連する企業の集積を図り、県の「クリスタルバレー構想」の主体的な役割を担い、先端工業都市として成長。フラットパネルディスプレイ(FPD)産業では世界有数の拠点となっている。

 視察目的は、言うまでもなくシャープの進出を可能にした企業立地策である。三重県の立地優遇策に始まり全国的に注目された施策だが、地元への経済効果・波及効果の現状についても関心のあるところだ。

(2)シャープ進出のカギ
 三重県のクリスタルバレー構想は、2000年、当時の北川知事がシャープを訪問、トップセールスをしたことに始まる。さらに企業立地課にプロジェクトチームが設置、主要な液晶製造メーカー、部品メーカー、製造装置メーカーなど約200社に対し誘致セールスを展開、また、企業立地課での「ワンストップサービス」で行政側の対応のスピードアップを図る努力もあったという。結果、クリスタルバレー構想の第一号企業として倉元製作所が進出、01年3月に工場が完成した。三重県はシャープ誘致のために補助金交付、税の減免など優遇策を提案、それは三重県が90億、亀山市が45億(亀山市産業振興条例)、合わせて15年分割で135億円という巨額の融資策であった。知事は「法人税と雇用の増による個人所得税の増収で10年で元を取れる」とし、結果02年3月にシャープの進出が決定したのである。亀山市でこの構想の受け皿となったのが、住友商事が開発した「亀山・関テクノヒルズ開発事業」=147haの産業団地で、シャープは33haを占める。04年1月にシャープ亀山工場が稼働開始、これに伴い液晶関連の企業・約20社が三重県に進出、さらに06年8月にはシャープ亀山第二工場が稼働している。シャープの投資総額は約2500億円に上る。

(3)シャープ立地に伴う経済波及効果
 亀山市の説明によると≪雇用≫では、H18年5月現在で総雇用者数7200人、内訳はシャープ亀山工場内が4000人(内シャープ単体で2000人、協力企業2000人)、関連企業で3200人。総雇用者数のうち正社員は4200人、派遣社員およびパートが3000人となっている。総雇用者数では操業以来2年と4カ月で約4700人増加している。≪税収≫では、H17年度県税収入(法人事業税と法人県民税)で約60.3億、H15年度の33.3億に対し約27億の増、約180%となっている。これらのうち、亀山市及び鈴鹿市内の県税収入はH17年度21.7億と推計、H15年度の5.5億に対し約390%の伸びを示しているという。亀山市の財政としては3年間(H15~18)で地方税全体では30億、法人市民税7億、固定資産税19億の増収で、財政力指数も0.78(H15)から1.15(H18)に向上している。シャープ進出に限ると約20億の税収増という。≪その他≫では、アパートの戸数がH14年度の249戸に対しH17年度で1985戸に伸び、ビジネスホテルもH15年の1棟からH18年は5棟に増加している。

(4)市民生活に恩恵をもたらしたのか
 数字で見ると確かにシャープ立地は成功しているのだが、視察に訪れた亀山市は駅前をはじめ、活気があるとは言い難い状況にあった。自動車交通網に依存する率が高いためか、JR駅前はさびれているのだ。食事をした駅前の大衆食堂で「私ら地元にはあんまりいいことはない」と語ったおかみさんの言葉が心に残る(写真は駅前)。シャープ関連企業への今春の県内高校新卒者採用者数は139人だったそうだが、工場進出に伴う新規雇用はシャープ本体ではない人材派遣会社の非正規雇用に限られ、地元住民からの正社員正規雇用はほとんど影響がない、との報道もされている。また、シャープの企業城下町化することで、自治体の税収・存立がシャープの業績に大きく左右される危険性もあろう。もっとも、今のシャープの状況では杞憂なのかもしれない。先行投資も確実に元をとることになるだろう。だがしかし、市の担当者が「市民への恩恵はこれから…」という通り、まち全体の活性化、市民の暮らしの活性化には未だつながっていない現実が、亀山市の課題なのではないだろうか。


■静岡市


(1)静岡市の概要
 人口714,895人、世帯数274,397世帯、面積1,388.74?、人口密度515人/?、人口増加率-0.4%、03年に静岡市と清水市が合併し「新静岡市」に、05年4月には政令指定都市に移行し、葵・駿河・清水の3区による区政を施行。06年3月には蒲原町を編入し、県内で初めての飛び地合併となっている。静岡県の中央部に位置し、森林が市域の8割弱を占める。東海地震や局地的な集中豪雨などの風水害に備え、小中学校の耐震化事業を集中的に実施するとともに、緊急浸水対策を実施しているとされる。日本一は茶をはじめ家具、プラモデル、マグロ水揚げなど。

(2)視察の目的
 視察目的は、静岡市で実施している合併に伴う消防行政の広域化である。長野市及び長野広域における消防の広域化にあたり、さいたま市の消防広域化と並び一つのモデルとされていることから選定したもので、広域化によるメリット、デメリット及び実施後の課題をテーマとした。静岡市消防防災局「消防総務課」に対応いただいた。

(3)消防広域化のメリット
 静岡市の場合は、3市町村の合併により消防も統合したもので、22の消防署(出張所を含む)、15の救急隊で組織される。メリットとしてあげられたものが3つ。一つは住民サービスの向上、部隊数の増加により初動の消防力、増援体制の充実が図れていること(とくに市境区域に顕著という)、署の配置や管轄区域の適正化により現場到着時間の短縮が図れたこと(どのくらい短縮できたのかとの問いには明確な回答なし)。二つは消防体制の効率化、本部要員の効率化で現場要員の増強、救急要員の増強が図れたこと、重複投資を回避し(例えば、指令室・ハシゴ車・化学車など)経費の削減につながったこと。三つは消防体制の基盤強化、財政規模が拡大することで消防設備・施設の高度化が図れたこと、適切な人事ローテーションによる組織の活性化、予防業務の・救急業務の高度化・専門化が図れていること、などがあげられた。

(4)消防広域化のデメリット
 デメリットは2つ。一つは勤務場所の広域化による問題、地理や水利の管内情勢の把握が困難となりメンタル面の疾病が増加していること、また通勤交通費や通勤時間の拡大による通勤災害の増加をあげた。二つは職員間における人間関係、不慣れな環境のもとで対人関係に起因するメンタル疾患が増加(7~8人)、また勧奨希望退職者(50代で)が増加しているという。

(5)コストは?
 合併前後の消防費の増減については、合併前のH13年・14年の旧静岡市と旧清水市の消防費の合計は760万~819万で一般会計予算に対する比率は3.3%から3.4%で推移、合併後は712万から759万で推移、構成比率は2.9%から3.1%、H18年度は通信指令システムを導入したことから819万で3.2%となっている。H19年度には12億円で消防ヘリを導入するそうだ。消防費の増減はほとんどないといえよう。

(6)静岡市が指摘する課題
 課題としては、消防団の統一。現在3消防団のままだがH20年度に統一したいとのことだ。また、職員の給与は旧静岡市レベルに合わせ、市長部局と同様に実施、身分の調整は、階級による身分調整で消防内で実施したとのことであった。この身分調整がなかなか難しいと感じている。自治体ごとに賃金が異なっているわけで、階級調整だけで異論なく進むのだろうか。現場検証が必要な事項である。
 長野市が検討する消防広域化については、改めて調査しレポートしたいと思う。
(7)16億円かけて「消防総合情報システム」を導入
 視察に合わせて、静岡市消防防災局の「消防総合情報システム」を見学させてもらった。NEC製のシステム。長野市消防局でも同様のシステムが導入され、現場到着までの時間短縮等を図る体制が敷かれているが、静岡市の場合は、署所や消防車両にもナビ端末を設置し、災害情報や出動体制の共有化が図られている。また、災害弱者の安全を確保するために「要援護者向け緊急通報装置」(聴覚障害や言語障害で音声による119番通報が困難な市民対象)、「FAX119番システム」「5ヶ国語対応受付システム」などが導入されている。日々刻々、進化するシステムを実感した。(写真は署所の端末)



ページトップへ