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07年7月31日記
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長野市に進出するコールセンターの光と影


■もんぜんぷら座にNTTコールセンター進出、「116番」対応で

■臨時議会で「もんぜんぷら座の改修費に6億6660万円」を可決


 7月17日、長野市議会臨時会が招集され、議案となった4億7230万円の補正予算案を賛成多数で可決しました。

 今臨時議会は、NTT東日本グループから「もんぜんぷら座」の未利用階、5Fから8Fの4階分をコールセンターとして使いたいとの入居申込により、「もんぜんぷら座」を改修し利用できるようにする必要性に迫られ、開会されたものです。補正予算は改修費4億7230万に加え、H20年度に工事がまたがるため1億9430万円の債務負担行為を追加設定する内容です。合計で6億6660万円の市税を投入する大規模な事業となります。今年度分の4億7230万円の財源は、国庫補助金1億8580万、財産収入1230万、繰越金6250万、諸収入250万に市債2億920万を充てるとしています。

 NTTが設置するコールセンターは、①電話の新設、移転などの手続きや、電話に付随する各種相談業務(いわゆる116番業務)を行い、②営業時間は午前9時から午後9時まで、③人員規模は500人程度で、400人程度の新規雇用が生まれる、とするもの。5階から8階の一部を順次使用する方針で、年内にも一部営業を開始したいとしています。

 こうした事情により、早急に予算を確保し改修工事に着手しなければならないことから、臨時議会の開催となったものです。

 市では、コールセンターの誘致で、①若年層や女性を中心とした400人程度の新たな雇用が見込まれること、②中心市街地に人が集まることで周辺商店街へも大きな波及効果をもたらすことなどを利点とし、結果、市が目指す「コンパクトなまちづくり」の先進事例となることが期待されるとしています。

■NTTコールセンターの進出を歓迎、改修費の補正予算に賛成
■コールセンターの光と影に着目し対応を


 私は、中心市街地に新しいオフィスが誕生することで、まちに人とにぎわいを取り戻す大きな一助になると考え、NTTコールセンターの進出を基本的に歓迎し、議案に賛成しました。しかし、もろ手を挙げて大賛成というわけではありません。心配な課題が残るからです。NTTとの賃貸借契約はこれからという段階で、契約期間や家賃は、現在進行形で協議されており、議会では明確になっていません。「このチャンスを逃したくない」との行政の判断は理解できるものの、契約内容によっては、「乱暴な先行投資」に陥る危険性がないわけではありません。この危険性は、行政もしっかり認識しているとは思いますが…。心配な課題を列挙してみます。

一つは、NTT東日本との賃貸借の契約内容に関わる課題です。すなわち6億6千万円という大規模な先行投資をしっかりと回収し、その上で新たな利益を得ることができるのか、ということです。補正予算の説明では、現時点で賃貸料を1㎡あたり1667円、共益費1㎡あたり60円と試算、月額の賃料794万、年で9533万と見込んでいます。この試算では、7年間でようやくペイできる、投資の元をとることになります。果たして、NTTが7年間というスパンで契約するのかということです。オフィスのリース契約は、2年から3年が相場とされているようですが、仮に3年契約となった場合に「更に3年の更新」が担保されるような契約が必要になるということです。

このことと関連して、市は「未利用階を貸事務所として整備するのだから、NTTでなくても新しい顧客を探すことで対応できる」(臨時議会・建設企業委員会)としていますが、単純なオフィスの賃料相場もあり、先行投資に見合った家賃収入が確保できるのかは、かなり不透明と言わなければなりません。だからこそ、NTTとの契約にあたり、市行政の側が「IP時代におけるリーディングカンパニー」(NTT事業計画)としての「企業の社会的責任」をしっかりと果たしてもらえるよう強く求めていくことが肝要です。

 二つは、「地元での新規雇用400人」といえども、12時間3交代制となりますから、雇用される労働者は正社員ではなくパートや派遣の非正規雇用労働者にとどまるということです。雇用のパイは広がるけれど、不安定雇用が増えるだけ、しかも低賃金という問題です。今や社会的問題となっている格差の是正には、非正規雇用労働者の「正社員化」が一番の近道だと考えますが、コールセンターの職場環境から考えて、壁は厚いし高いと思いますが、NTTには「労働実態に即した適正な時間給の支払い」に加え、「正社員化への門戸」を開いてもらう働きかけも必要となります。

 三つはコールセンターの将来展望の見極めの問題です。コールセンターは90年代後半以降、企業が人件費の安い地方に展開し、自治体の側も雇用対策で積極的に優遇し、誘致合戦を繰り広げてきました。しかし今日、コールセンター誘致が曲がり角にあるといわれています。離職率が高く求人効率が悪いことから、撤退する事業者が相次ぎ、全国的には自治体の側も優遇補助制度の見直しを進めてきているからです。NTTコールセンターの場合、消費者からの電話を受ける「インバウンド事業」が主となるものと思われますが、それでもクレームへの対応で心身ともに疲弊し辞めざるをえない、結果、労働者が定着しない、最後には「経営の効率が損なわれ撤退へ」となることが懸念されます。

さらにNTT東日本の経営戦略の問題があります。NTT東日本のH19年度事業計画では「マーケット構造の転換と競争の本格化が進展」する中で、「より一層の経営の効率化に取り組む」(同)とされています。今回の長野への進出には、埼玉、山梨のコールセンターを長野に統合、集約化することで経営効率を図るとの判断があるようですが、未来永劫のものではありません。さらに大きな統廃合計画のもとに長野から撤退する判断が産まれないとは限らないからです。私企業の経営戦略の見直しに振り回されないような手立てをいかに講じるのかが課題となります。だからと言って、新しい優遇補助制度を設けるという手法には賛成しかねます。例えば、三重県では「情報通信関連企業の進出に対する優遇制度」を設け「オフィス賃料や通信回線使用料への補助」を実施しています。シャープの誘致をはじめ「元は取っている」ようですが…。新しい優遇補助制度を作り、いわば「至れり尽くせり」の企業誘致となってしまうのであれば、そこまで先行投資する必要があったのか、入口の議論に戻ると考えるからです。


コールセンターがもつ光と影を、思いつくまま課題として挙げてみました。市長をはじめ行政の皆さんには、「光」だけではなく「影」にもしっかり着目し、間違いのない対応を図ってもらいたいと思いますし、議会側からしっかりチェックしていかなければなりません。前倒しで8月2日から始まる9月議会の重要なテーマの一つです。

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