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07年4月20日
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07年3月議会の焦点・論点(その3) 19年ぶりの修正案可決、成人学校受講料の顛末

 3月議会で大きな焦点となった公民館成人学校の受講料値上げ問題は、19年ぶりの修正案可決で幕が閉じました。その顛末について報告します。でも、これで終わったわけではありません。引き続き厳しくチェックしていきたいと思います。

そもそも受講料等の値上げは、市の財政構造改革懇話会がH17年11月に、民間で同様の事業が行われ、市が法律上行う義務がない事業について、行政サービスの在り方を見直すよう提言したことに始まります。この懇話会の提言を受けて策定された「財政構造改革プログラム」では、市場性があるかないか(民間で同じような事業があるかないか)、市が実施する責任の度合いが強いか弱いか、二つのものさしで行政サービスを類型化し、「適正な受益者負担」を求めていくとされています。公民館成人学校の受講料=受益者負担はこの類型化作業を先取り、先行させたものです。

この見直しが進めば、「適正な受益者負担」の名目で、この先、いろいろな使用料、利用料の値上げが提案されることになるでしょう。したがって、問題は「財政構造改革プログラム」にあるといえます。市長が「歴史的使命」とする「民間活力の導入・民営化」路線に沿ったものです。市民生活に直結する問題だけに、「行政にお任せ、やむを得ない」というわけにはいきません。この問題は改めて整理して提起したいと思います。

 だいぶ長い報告になりますが、最後までご覧いただければ幸いです。

 

1.「寝耳に水」の成人学校受講料の値上げ

 3月議会が始まった1日の夜、お2人の方から電話をもらいました。「3月1日付の広報ながのに公民館成人学校の受講生募集の記事があるが、1学期の受講料が4300円から6000円になると掲載してある。しかも予定とあるけど議会で決まったのか。40%の値上げは耐えられない。これでは年金生活者はもう成人学校に行けなくなってしまう。何とかならないのか」というものでした。

公民館成人学校の受講料の改定は条例改正案として今議会に提案されていることは承知していましたが、議案説明の場でも詳細に触れられず、内容を吟味していなかったため、翌日、条例改正案を見直してビックリ、6000円は新年度の受講料、H21年度には8000円にするという、とんでもない値上げ案であることが判明しました。8000円の根拠は何なのかも知らされていません。受講生の皆さんには全く「寝耳に水」の話、早速、一般質問に取り上げることにしました。

 

2.値上げには二つの問題

公民館成人学校の1学期の受講料を4300円から8000円に値上げする、経過措置として19年度は6000円、20年度は7000円にするとした条例改正案には二つの問題があります。一つは、既に3月1日付の「広報ながの」に、「予定」と断りを入れているとはいえ、議会の議決前に「値上げ受講料」を市民に示しているという問題です。議会軽視につながる重大な問題です。二つは中味で、2倍近い値上げであること、経過措置である新年度の6000円を見ても4割の値上げとなる問題です。1年で12900円の負担が24000円になるというのは、市民に過度の負担を強いるとともに、受講生の皆さんの楽しみを奪ってしまうことにつながる問題です。しかも受講生の皆さん、当事者の意見を聞くこともない机上のソロバン勘定であり、その根拠が説明されていないことも問題です。

 

3.成人学校は民間のカルチャースクールとは違う

成人学校の皆さんの大半は年金生活者である高齢者の皆さんです。「何とかならないの。成人学校を楽しみにしていたけど、年金生活者ではもう行けないよ」といったあきらめの声があがるのは当然です。お金に余裕のある人しか参加できない成人学校では、「広報ながの」にも書かれている「出会い・ふれあい・学びあいの輪」である成人学校本来の趣旨が死んでしまいます。生活圏域の中で参加する生涯教育・公民館の成人学校は、民間のカルチャースクールと目的が違うのです。

 

4.一般質問で「抜本的に下方修正し再提案すべき」と正す

9日の一般質問で、上記のような問題点を指摘し、「成人学校の受講料の値上げについて原案に賛成することはできない。せめて、過度の負担を強いないよう抜本的に下方修正し再提案すべき」と求めました。しかし、答弁は「民間への委託や事業の廃止も検討したが、受益者負担をお願いした上で公民館事業として継続実施することにしたもの、理解を願いたい」とするものにとどまりました。一般質問はこちらを参照してください。

 

5.1学期8000円の算出根拠=[総経費÷受講者延べ数]

 答弁で示された8000円の算出根拠は、成人学校にかかる総コストとして講師謝礼金4328万円、嘱託・臨時職員を含めた人件費4068万円、印刷・消耗品費等187万円を合計した総コスト8583万円を、H17年度の受講者延べ人数10729人で除したものだそうです。コスト全額を受益者負担とするものです。民間カルチャセンター等の受講料と比較すると、約二分の一から四分の一相当額であり、改定後であっても「明らかに低い額だ」としています。

 

6.受講者有志で教育長、市議会議長に緊急陳情

 相談を頂いた受講者の皆さんと相談し、3月16日、安茂里公民館と城山公民館の成人学校受講者有志15人の皆さんと一緒に教育長と市議会議長への陳情にも取り組みました。「来年度40%、2年後には2倍の値上げは、過酷すぎる。既に来年度の受講を見合わせざるを得ないとの声も出ている。生きがいを奪わないでほしい。受講料値上げを否定するものではないが、余りにも急激かつ過度の値上げには耐えられない。特段の配慮を求める」とする内容です。

 立岩教育長は、市の財政状況や値上げの趣旨について説明し理解を求めるとともに、「皆さんの意見はしっかりと受け止めたい」と述べるにとどまりました。

 私からも、計画の見直しを強く迫るとともに、成人学校は民間委託や廃止ではなく、公民館事業として継続すること、定員による講座の廃止などについて柔軟に対応することを求めました。

 

7.経済文教委員会で修正案が提案され、賛成多数で可決

 公民館成人学校の条例改定案は、経済文教委員会に付託され審議されました。委員会では、新年度の受講料は市の改正案より1000円安い5000円としも最終的に8000円まで引き上げる期間を2年延長してH23年度までとする修正案が提案され、賛成多数で可決しました。私も傍聴しましたが、最終的な8000円の負担の妥当性などについて、もっと突っ込んだ議論を望みたかったです。

 

8.最終日の本会議で修正案に賛成討論

 正直に言って、この修正案に賛成するか反対するかを最後まで悩みました。8000円の負担が受講生の皆さんに耐えられるのだろうかとの疑問と不安があるからです。受講生の皆さんと相談したところ、「8000円は厳しいけれど、新年度は5000円になる。やむをえないのでは」との意見が多かったことと、最終的に19年ぶりとなる修正案の意義に重きをおいて、賛成することにしました。ただし、経過期間における見直しを含めて、厳しく注文をつけるつもりで討論をしました。討論を掲載しますので、ご一読ください。

3月26日、本会議での修正案賛成討論

43番、市民ネットの布目裕喜雄です。

経済文教委員長報告にある議案第56号「長野市公民館条例の一部を改正する条例に対する修正案」に賛成の立場で討論します。

修正案は、公民館における成人学校1学期4300円の受講料を、新年度5000円とし、5年間の経過措置を設け最後は8000円とするものです。

出口の「8000円」は何とかならないのかと正直、思いますが、本会議個人質問において、公民館における成人学校の受講料の値上げ問題を取り上げ、「原案のままでは認めることはできない、せめて下方修正して再提案すべき」と指摘した立場から、また、安茂里公民館や城山公民館の受講者有志の皆さんの教育長や議長への陳情・申し入れに同席した議員として、まずは、市から提案された当初原案を議会側が修正するという画期的な取り組みとなった点において率直に評価するものです。報道によれば1988年以来とのこと、なんとも19年ぶりの画期といえます。市民の立場に立ち、当初原案を厳しくチェックする本来の議会権能が発揮された出来事だと思います。できうるならば、こうした取り組みが日常的に行われ、緊張感と活気ある議会審議がさらに前進することを願うとともに、私自身も積極的に取り組みたいと思います。

賛成を表明するうえで、いくつか注文をしたいと思います。

一つは、市民との協働、市民参加による市政運営という点で大きな禍根、教訓を残した点です。教育長への陳情の中では、19年度の受講料の値上げを知ったのは3月1日付の「広報ながの」、40%という値上げ幅に驚いていたところ、3月になってからの講座終了式で20年度、21年度とさらに値上げされ、最後には約2倍もの値上げになることを知ったとあります。これでは、あまりにも市民不在、机上のそろばん勘定といわなければなりません。生涯教育、まちづくりの拠点である公民館は市民あってこそ機能するのです。新年度において、困惑している受講者の皆さんの意見に耳を傾け、説明責任を果たすことを求めるとともに、5年後8000円の負担について本当に適正か否か、経過措置期間において柔軟に対応することを求めたいと思います。

二つは、公民館事業として成人学校を存続し続けることです。廃止や民間への委譲も考えたが、財政構造改革プログラムで指摘された受益者全額負担の原則に立って、公民館事業として継続することにしたとされていますが、生活圏域にある公民館だからこそ醸成される高齢者の学習意欲や生きがいを奪ってはなりません。市場性があるかないかをものさしとした類型化に、高齢者の皆さんの生きがい、やりがい、地域の住民同士の笑顔の絆、年金をやりくりしながら受講し作品展を楽しみにしている姿が見えていますか。公民館における成人学校は民間のカルチャースクールとは違うのです。成人学校を民間カルチャースクールに同化させることなく、今後とも公民館事業として適正な負担のもと継続することを強く求めます。

三つ目は、経過措置期間における継続受講年数や講座の定員について柔軟に対応すべきということです。昨年8月の部内で行われた行政評価=行政サービス類型化分の事後評価シートによると、今後の課題として、中山間地域、すなわち交通手段等の困難さを考慮するものの、成人学校が本来、初心者向けの講座であることから、受講年数を最長で3年とすること、3年を超える場合はサークル化すること、受講者数の下限、すなわち定員を15人以上とすることを継続するとしています。受講料の値上げにより、参加者が減り、定員割れし講座が閉鎖されてしまう、といった杓子定規な冷たい対応ではなく、機微に触れた暖かい柔軟な対応を求めます。

最後に、財政構造改革プログラムにおける事務事業の類型化は、市民の意見を踏まえながら統一基準を作成し具体化していくことになっているはすです。成人学校の受講料値上げ案はフライングなのではないでしょうか。市民の合意と納得は必要不可欠なのです。適正な受益者負担の導入にあたり、この基本姿勢を、市民の暮らし向きをも見つめながら、しっかりと堅持すべきだと申し上げます。

成人学校が「学習を通して出会い、ふれあい、学びあいの輪を広げる」という本来の意義が全うされ、受講者の皆さんの励みとなることを願って、賛成討論とします。

 

20日ころを前後して成人学校が始まっています。定員の問題や受講者の皆さんの声をしっかり見極め、引き続きチェックしていきたいと思います。



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