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06年8月3日記
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大型店と長野のまちづくり…「信州自治研6月号」に掲載

長野県地方自治研究センターから、イオン進出に対する長野市の対応についてまとめてほしいと依頼され、今までホームページでお知らせしてきた内容を加筆補強したものですが「信州自治研6月号」に発表しました。8月になってからの掲載ですが、参考までに。


1.超大型店イオンに「出店を促すことはできない」と結論

 「イオン(㈱)の超大型複合ショッピングセンター出店計画については、出店によるプラスの影響も大きいが、地域経済に与えるマイナスの影響が広範に及ぶと考えられる。また市街化調整区域内の、将来にわたり農地として保全していく農業振興地域内農用地区域を開発しようとするものであり、市の諸計画に合致していないため、現下の情勢では、当該予定地での出店を促すことはできない」

 これは長野市が06年2月7日、「大型店出店計画に対する市の基本方針」としてまとめ、発表したものである。長野市として「諸計画を変更してまで、積極的に出店を支援するものではない」とするもので、超大型店の出店を「NO!」としたものである。

 市内における大型店出店計画は、国内最大級となるイオンの他、3店舗の計画が提出・検討されていたが、同様に「当該予定地での出店を促すことはできない」とした上で、「既存市街地を中心とした、大型店の出店が可能な地域での検討」を求めた。すなわち、イオンだけは「桁違いに規模が大きく、影響が大きすぎる」(長野市長)ために、条件を付加しなかったものである。近隣自体体への影響も大きいことから、鷲沢正一長野市長は同日、須坂・千曲両市長にも方針を伝え、理解を求めている。

 この結論に対し、高齢化と後継者不足に悩みイオン出店を望んできた地権者会が「私たちの願いが届かず残念。若い人が農業できるような政策を国や県に働きかけてほしい」(小林金美会長)と述べる一方、出店反対の運動を起こしてきた長野商店街連合会は「全国の市町村が歩むであろう方向性の指針となる画期的英断。商店主や市民と一緒になって街の魅力をつくっていきたい」(渡辺晃司会長)と話したとされる。(コメントはいずれも朝日新聞2月8日付より)

 賛否が分かれ、市民をいわば2分してきた超大型店出店問題は、開発から保全へ、外延的拡大から中心市街地への集積へと舵を切る国のまちづくり3法の見直しに後押しされながら大きな山を越え、既存商店街の活性化、農業振興、農業後継者の育成をはじめとして、「コンパクト・シティ」と称される総合的なまちづくりに向け、重い課題を背負い込みながら、新しい局面を迎えている。

2.超大型店イオンの出店を不可とするまでの経過

(1)長野市商業環境形成指針の策定

 大型店の出店問題に対し、長野市は05年11月に「長野市商業環境形成指針~地域商業ガイドライン」をまとめ運用を開始した。郊外への大型店等の出店に対応するとともに、中心市街地や既存の商業者にも配慮したバランスの取れた良好な商業環境を形成するための具体的な基準として策定したものである。特に大型店の出店計画については、市街化編入の要望、大規模開発、農振除外の相談等について、それぞれの部署で、個別に対応を行っており、行政としての総合判断が難しい面があったとし、商業振興と長期的・総合的な「まちづくり」の観点から、市内を6エリア、5つのゾーンに分け、そのエリア・ゾーンごとに商業集積を導くための基準を設け、店舗面積5,000㎡(開発面積で概ね2ha)以上の大型店の出店対応を具体的に行うための指針としてまとめた。この指針を運用することで、大型店の出店計画に対して、市として、統一的に対応し、土地利用の観点からも、総合的な判断を下すとされた。具体的な大型店出店計画に対して、庁内の総合調整会議と「土地利用委員会」での審議検討をハードルとしているものの、直接に大型店の出店を規制する内容ではない。例えば金沢市が、長野市と同様の「指針」を策定しつつも、その上位に、商業振興、土地利用の観点から総合的なまちづくりを行うために「金沢市商業環境形成まちづくり条例」を定め、市内7エリアごとに店舗面積の上限を設定、実質的に大型店の郊外進出を防いでいる状況とは異なっている。

(2)指針に基づき6社が計画を提出

 この「商業環境形成指針」に基づき、6社が進出の事業計画を提出した。中でも注目されたのが、長野市南部にあたる篠ノ井東福寺・南長野運動公園北側に出店を計画する「イオン」の計画である。イオンの計画は敷地面積19万平方メートル、店舗面積約7万平方メートルの大規模ショッピングセンター、イオンが経営する「ジャスコ」を中心に専門店150店を誘致、映画館の集合体であるシネマコンプレックスやゲームセンターも設ける構想、駐車台数は約5000台、年間販売額は250億円と莫大なものだ。250億円は長野市全体の小売販売額の5%、大型店全体の17%に及ぶものである。敷地面積は何と東京ドーム4個分を有する。

新規出店を計画したのは、イオン(地図①、千葉県千葉市)の他に、大豆島地区に「カインズホーム」(地図②、群馬県高崎市)と食品スーパー「原信」(地図③、新潟県長岡市)が、さらに赤沼に「高見沢」(地図④?長野市)、南長池に「ツルヤ」(地図⑤、上田市、後に計画変更があり継続審査中)である。これらの5社で店舗面積は10万6600平米にのぼる。また「ながの東急」が増床計画を提出した。(「事業計画届出店舗の一覧」図表は長野市民新聞05年7月4日付より)

(3)大型店等出店土地利用委員会、適否を示さず両論併記

 これらの大型店出店計画を事前評価するために、指針に基づき「長野市大型店等出店土地利用委員会」(企業経営や流通などを専門とするが学識経験者5人で構成、委員長は茂木信太郎信州大学大学院教授)が設置され、4ヶ月にわたり計画地の視察や事業者からのヒヤリング、地元対策協議会からの意見聴取などを行い、昨年の11月に報告書がまとめられた。

 土地利用委員会は、「土地利用」と「地域共生度」の2面から計画を評価。イオンに関しては、予定地が市街化調整区域で農業振興地域の農用地区域が61%を占め、商業地として想定していない現状から、土地利用については「現行制度に合致していない」とした。一方、地域共生度の評価では「採用予定人数2800人、正社員中の地元採用比率60%」の地元雇用への貢献や新潟中越地震での被災地支援や植樹活動などをあげ、5段階で上から2番目の「B」評価とした。総合評価では、「280億円の経済波及効果」「年間5億円の税収入」などとプラス面の効果を認める一方、「小売店の転廃業や雇用の喪失、一部地域の荒廃」などのマイナス面を指摘、出店そのものの適否は示さず、両論併記の格好で報告をまとめ、最終判断を市側に委ねたものである。
 *市街化調整区域=都市計画法により市街化を抑制すべき区域で、大型店は出店
  できない。出店するには都市計画における区域区分の変更が必要となる。

 *農業振興地域=農業振興地域整備法(農振法)により農業を振興する地域として
  他の開発を抑制する区域。

 *農用地区域=農振法により知事が指定した農業振興地域の中で指定される区域
  で集団的かつ農業用に利用すべき区域。農地法では農用地区域内の農地について、
  宅地転用や宅地転用目的の売却を厳しく禁止している。

大型店出店計画の概要と「土地利用委員会」の評価

事業者

出店
地区

年間販売予定額

敷地面積

(平方㍍)

店舗面積
(平方㍍)

農用地の割合(%)

地域共生度の評価

イオン

篠ノ井

250億

190,000

70,000

61.1

カインズ

大豆島

60億

64,624

15,826

98.5

原信

大豆島

54億

42,715

8,336

79.7

高見沢

赤沼

49億

60,324

12,485

38.6


(4)大型店出店計画に対する長野市の基本方針

 この報告を受け、検討を重ねた市は年明け2月に、冒頭記載した通り「大型店の郊外出店を認めない」方針を発表した。これにより長野市は、大型店の出店は可能な既存市街地に限定し、中心市街地を核とした集約的なまちづくりを進めるとともに、商業施設については農業以外には使えない農用地の転用を認可しないことで、農用地としての有効活用を図り農業再生に取り組む基本姿勢を示したことになる。

3.超大型店栄えて“街”滅ぶ…議会の対応と私見

(1)議会は大勢が反対

 一連の大型店の出店に関しては、長野商店街連合会や長野商工会議所が「広域的な地域経済、既存の商店街や大型店には深刻な悪影響を及ぼす。中心市街地の活性化に水を差す」などと反対を表明、一方、後継者難に深刻な悩みを抱える地権者や篠ノ井地区の商業者には賛成の声が根強く、まさに市を2分する状況が生まれた。

市議会サイドでは、イオン進出には大勢が反対の姿勢を打ち出した。このことが市長の最終判断の一因となったともいえよう。2月における市長の最終判断は好意的かつ前向きに受け止められたといえる。

私自身も「超大型店栄えて“街”滅ぶ」と警告、既存商店街の活性化と農業振興の道を模索すべきであると主張し、「出るべくして出た結論」としてきた。

(2)歩いて暮らせるまちづくりへ

 実際にイオンのショッピングセンターが進出した地方都市では、既存の大型店が閉店に追い込まれ、地域商店街も軒並み業績ダウンで営業が続けられなくなっている。少子高齢社会の行く末や長野市の将来像を見据えたとき、歩いて暮らせるまちづくりを基本にすべきである。イオンの進出計画は1極集中で超大型店は栄えるけれども、長野市全体、そして地域の“街”そのものが滅んでしまう危険性をはらんでいる。だからこそ一日も早い「ノー」の結論が必要であるとしてきた。それでは、どのようにして中心市街地に活力を呼び戻し、担い手のいない農業を維持するのか、これは難しい問題である。少なくとも、地域の商店街ではお客さんを呼び戻す努力が必要であり、そして地域循環コミュニティバスを拡充し地域公共交通網を整備し、例えば、市内北部・南部・西部といった地域単位の生活商業圏を確立していくことだと考える。農業の担い手問題は深刻だ。例えば旧大岡村で取り組まれている「クラインガルテン(菜園付滞在施設)」…都市と農村との交流事業を市街地で展開すること、市街地における体験農業の組織化、市民菜園の共同事業化による優良農地の保全などを考えてよいのではないか。

(3)新規雇用への疑問と環境への負荷

また、イオンの出店計画では、東信から大北、上越までを商圏とし、3000人の新規雇用(正社員500人・パート2500人)があるとした。しかし、ほとんどがパート等の不安定雇用であり、現実的には「新規」ではなく既存の大型店や商店の労働者が「移動」するだけに終わると思われる。既に市内で撤退したダイエー長野若里店では店舗跡利用も決まらない一方、従業員263人の内、再就職先が決まっているのは13人にとどまり(昨年11月現在)、深刻な問題となっている。イオンが進出することを考えると他の企業はダイエー跡への出店に二の足を踏むことは間違いなく、悪循環を生むことになる。

環境面から負荷が大であるとの指摘もされた。市民と事業者、市でつくる「ながの環境パートナーシップ会議」では、イオンが進出した場合の二酸化炭素の排出量を研究し、市内の約1万世帯分の排出量に相当する年間3万6000トンに上るとの推計を発表している。地球温暖化防止が課題となる中、環境面から超大型点出店の影響を検討したもので、注目に値する。

4.今後のまちづくりの課題

(1)コンパクトなまちづくり、そして優良農地をいかに残すか

 「大型店出店計画に対する長野市の基本方針(総論)」では当然のことながら、今後の課題に言及、人口の減少や少子高齢化の進展等の社会背景、経済情勢を前提として「長野市の各種計画・事業の見直しが喫緊の課題」であり、「総合的なまちづくりの方向性は必然的に『将来世代に持続可能でコンパクトなまちづくり』が求められる」とした。したがって、「集約的都市構造をめざし、中心市街地や拠点地域等の既存市街地の有効活用を図ることが必要…既に策定が始まっている『第4次長野市総合計画』『長野市都市計画マスタープラン』をこうした方向性のもとで検討するとともに、『長野農業振興地域整備計画』や『長野市環境基本計画』の見直しも同様の方向で検討していかなければならない」としている。農業の持続的発展と農村の振興に向けては、認定農業者をはじめとした担い手の育成や集落営農の組織化と育成支援、直接支払い制度と農作業体験などを通じた都市住民との交流促進、そのために、さらに市は「農業公社(仮称)」の設立を検討、現在、準備が始まっている。また、商業関係者においては、まちづくりの担い手として、積極的な自主的努力や創意工夫の提案・行動が望まれると期待感をにじませるものとなっている。市の重い責任として具体化が問われることとなる。

(2)まちづくり3法の見直し、「コンパクト・シティ」論についての考え

 長野市の結論は、その検討段階において、国が、全国的に郊外への大型店の出店が相次ぎ中心市街地の空洞化が深刻化している現状を打開するため、郊外への大型店出店を抑制する方向性を打ち出し、まちづくり3法(都市計画法・大規模小売店舗立地法・中心市街地活性化法)の見直しを進めていたことによるところが大きい。

中心市街地の空洞化、衰退が依然として止まらないことから、郊外開発にはブレーキをかけ、中心部再生にアクセルを踏む、中心市街地に都市機能を集積させ「コンパクトでにぎわいあふれるまちづくり」をめざすとした国の方針転換に符合するものとなっている。

市長が、土地利用の理念を盛り込んだ明確なまちづくりのビジョンを示す必要性を強調し、「総合的なまちづくり」「身近な生活圏を中心とした拠点地域が、それぞれにバランスの取れた発展と相互に機能しあうコンパクト・シティの形成を目指す」とした所以である。

いまや「コンパクト・シティ」はまちづくりのキーワードともなっている。

開発から保全へ、市街地の拡大から中心市街地へ、都市機能のあり方、まちづくりを転換させる方向は、遅きに失した感があるが、モータリゼーションの進展により車社会がいわば当たり前となり、バイパスや環状道路の整備が今なお現在進行中であることを考えると、けっして楽観できる状況にはない。私は、国の「郊外から中心市街地へ」といった転換を後追いするだけでは、地方都市である長野市の未来図を作ることはできないと考えている。合併して広域となった長野市のまちづくりを考えたとき、国の方針転換を超える発想の転換、もう一つのまちづくりの視点を持つ必要があるのではないか。それは、基本的に生活の圏域となる市内30地区(支所・連絡所)の地域コミュニティに根ざした「コンパクトなタウン」の形成に重きをおく視点である。中心市街地は重要な「長野市の顔」だが、中心地だけでなく30のそれぞれの特色ある「顔」を持つ長野市構想である。人口の減少、少子高齢社会の進展を見据えたとき、一人ひとりの市民が自らの住まいを拠点として、あるいは最寄の駅、スーパーや商店、支所や公民館などの公共施設を核として、車椅子でも杖をついてでも、日常生活に必要な衣・食をまかない、また安らぎを享受することのできるまちづくりである。働き世代にとって職場と住まいが離れているという問題はあるものの、身近な生活圏域の中でまさに生活そのものを完結できるまちづくり=「歩いて暮らせるまちづくり」をめざすことが重要になっていると考えるからだ。そのためにはスピードからスローへといったライフスタイルの転換が必要である。それぞれの地域にあるスーパーや個人商店、商店街が元気を取り戻すことが必要である。生活圏域内の移動をたやすくするために地域循環コミュニティバスなどの公共交通機関が整備されることも必要だ。環境面から「脱車社会」に徐々に移行し二酸化炭素の排出量を効果的に抑えていくこと、そして団塊の世代が地域社会に帰り始め、地域を第二、第三の活躍の場としてもらうことからも必要となっていると考える。

こうした視点から、今年の3月議会で私は、地域コミュニティに根ざし、身近な生活圏域を拠点とした30の特色ある「顔」を持つ「コンパクト・タウン」の形成に重点を置き、第4次総合計画、都市計画マスタープランや住宅マスタープランの見直し、農業の振興、産業振興ビジョンの策定、環境基本計画の見直しを進めていくことが必要であると主張し、長野市が具体化を進める都市内分権、市民参加のまちづくりを進めるためにも、庁内横断、かつ市民参加で「コンパクト・タウン・プロジェクト(仮称)」を発足させ、行政の知恵、地域の知恵を結合し、まちづくりを進めることを提案した。

さらに、歩いて暮らせる「コンパクト・タウン」には地域に支えられる元気な地域商店街が不可欠なことから、まちづくり・まちおこしの視点から、行政、市民、商店街、個人店主が一体となって、仮称「地域商店街再生プロジェクト」を発足させプランを作っていくことも提案してきたところである。

5.大型店規制はいまだ道半ば

長野市は現在、前述したとおり「総合計画」「都市計画マスタープラン」の見直しをはじめ、各分野別の計画に基づく施策の展開に限界が生じてきていることから、農業、林業、商業、工業、観光、雇用など、様々な視点からみた産業振興の一体的な指針として「産業振興ビジョン」の策定に着手している。とくに農業・農地の保全に向けては「農業公社」(仮称)の立ち上げで難局を打開しようとしている(今日段階、農業公社の具体像は不透明だが)。これらの課題が成果をあげない限り、自治体における大型店「規制」は道半ばであるといわなければならない。また、既存市街地で可能とする大型店の新しい出店は、バランスの取れた開発という観点から、これからの課題となってくる。超大型店イオンの出店を「ノー」とした今日、市行政は無論のこと、市議会も大きな責任を負っている。基本的な計画の見直し等が、本当に市民の期待と付託に応えられるものとなるようチェックと提案に磨きをかけなければならない。


[資料]

 ①「事業計画届出店舗の一覧」図表(掲載)

 ②「事業計画の概要」(略)

 ③長野市商業環境形成指針より「大型店等に関する施策」部分(こちら///
 ④「大型店等出店土地利用委員会」の報告書(こちら・PDFファイル)

 ⑤大型店出店に対する長野市の基本方針(こちら・PDFファイル)


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