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06年3月14日記
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「国民保護計画を考える」(その1) これまた議会に条例案が提案!
■有事法制=国民保護法に基づく条例が提案されています。
 この3月議会には、有事法制の一環として制定された国民保護法に基づき、「長野市国民保護計画」を作成するために「国民保護協議会」や「国民保護対策本部」を設置する条例案が提案されています。名称は「国民保護」であることから、有事の際に国民の生命や財産を守る法律であり、計画が作成されることになると思われていますが、本当に実効性のあるものになるのでしょうか。有事を想定して避難や救援の訓練を行うよりも、有事にならないよう、戦争の火種となる貧困や飢餓をなくすために国際的な支援を行うこと、平和外交に徹することが求められていると考えます。長野地区護憲連合では、今議会に「住民を戦争に巻き込む『国民保護計画を策定せず、無防備地域宣言を行うことを求める請願」が提出され、紹介議員になりました。
 
*参考1  2004年6月14日「国民保護法に対する日弁連会長の声明」
 
*参考2  2004年3月18日「国民保護法案に対する日弁連の意見書」

■一般質問でも取り上げました。
 質問は、長野市で戦争を前提とした「国民保護計画」を策定することは、1985年に制定された「平和都市宣言」に抵触すると思うがどうか、むしろ「平和都市宣言」の趣旨を発展させ、ジュネーブ条約第一追加議定書59条に定める「無防備地域宣言」を行い、市民が戦争の惨禍に巻き込まれないようにすることが重要であると考えるがどうか、の2点です。答弁は、「国においては、武力攻撃等の事態を招かないように最大限の外交努力を行うことは当然の前提」だが「あってはならない事態に対する万一の備えとして、国民保護計画の策定は必要」、「平和を訴え武力攻撃等を招かないような最善の努力をすることと、国民保護計画を策定することは相反するものではなく、平和都市宣言に反することではない」としました。また「無防備地域宣言」については「政府見解によると、無防備地域宣言は国において行われるものであり、地方公共団体は宣言できないとされていることから、宣言採択は考えていない」と極めて消極的なものにとどまりました。

■平和都市宣言とは?
 1985年に採択された宣言で、1988年には「核兵器の廃絶とすべての兵器による戦争の放棄」の表現が加わりました。以下全文です。

 
平和は、我が国憲法の基本原理であり、全市民の共通の念願である。
 我々は、平和を愛するすべての都市と共に、核兵器の廃絶をはじめ、非核三原則を厳守し、すべての兵器による戦争の放棄を強く訴え、全世界の恒久平和を希求し、ここに、長野市を「平和都市」とすることを宣言する。

 素直に読んで、まさに戦争をしないまちづくり宣言です。国民保護法の母法である「武力攻撃事態等対処法」そのものは、日本が直接他国から攻撃される事態ではなく、「攻撃される恐れのある事態」に備え、すなわち、イラク戦争のようにアメリカが勝手に行う戦争に無条件で協力し、自衛隊を海外に派遣することに主眼が置かれています。アメリカの戦争に国民あげて協力することを狙いとしているもので、そのための計画が「国民保護計画」となっています。平和都市宣言は「戦争協力」とは相容れません。

■無防備地域宣言とは?…攻撃禁止が国際ルールで保障される地域宣言
 ジュネーブ条約第一追加議定書59条に規定されている宣言です。無防備地域を宣言するためには、次の4つの要件を満たしていなければなりません。
  
1.すべての戦闘員、移動兵器、移動軍用設備が撤去されていること
  2.固定した軍用の施設・営造物が敵対的目的に使用されていないこと
  3.当局または住民により敵対行為が行われていないこと
  4.軍事行動を支援する活動が行われていないこと

 これら4つの要件を満たすことにより、その地域が戦争に協力しない民間人地域であることが保障され、攻撃は一切禁止されます。ベトナム戦争では余りにも多くの民間人が殺されました。このような惨劇を繰り返さないために、1977年に無防備地域宣言の規定がジュネーブ条約第1追加議定書に組み込まれました。日本は04年8月にジュネーブ条約追加議定書(2本)に加入、05年2月に発効しています。
 確かに政府は条約で言う「当局」は「国」であるとの見解を示しています。しかし、国際法上では「地方公共団体においても可能である」との認識に立っています。
 現在、全国各地で無防備地域宣言条例の制定を求める直接請求運動が取り組まれています。憲法の改悪とあわせ、国において「戦争にまっしぐら」という状況のもとで、自治体から「非戦・非武装・平和」を創造していく手段として「無防備地域宣言」を活用すべきだと考えています。

■「長野県国民保護計画案」に対する長野県護憲連合の意見書
 既に長野県は昨年の2月県議会で条例を制定し、今年になって「国民保護計画案」をまとめ、現在、その内容について国と協議中です。長野県護憲連合として県に「意見書」を提出してきました。意見書はこちら。参考にして見てください。


■条例案は総務委員会に付託されていまして、防犯条例と同様、15日の総務委員会で審議されます。



■住民を戦争に巻き込む「国民保護計画」を策定せず、「無防備地域宣言」を行うよう求める請願


 04年6月、武力攻撃事態対処法第22条の規定により「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(以下、国民保護法)が成立、同年9月に施行され、05年3月には国民保護計画策定にあたっての国の基本指針がまとめられ、これらに基づき市町村においては来年度中に「国民保護計画」を定めるものとされています。
 国民保護法を読むと、有事の際の避難、救援、消火、保健衛生、平時の訓練も含め、参加・協力は国民の自発的な意思に委ねられ「義務ではない」と政府は強調しています。しかし実態は、従わなければ罰金や懲役などの「罰則」が設けられ、提供協力を拒否した場合は強制的に「収用」されることになります。こうしたことは政府の広報ではあいまいにされています。「指定地方公共機関」についても「指定」に強制はないとされつつも「正当な理由」がない限り拒否はできないものとされています。
 そもそも国民保護法は、その名称とは裏腹に、協力を拒否した市民に罰則を設け私権を制限する国民統制法であり、法の本来の目的である「武力攻撃事態」=有事=戦時に国民を総動員する国家総動員法であるといわなければなりません。日弁連をはじめとする専門家・識者からも「有事法制は、一般に『有事』のときのみに作用するものではなく、『平時』においても国民の権利自由を規制する危険性を有するものである」「『国民保護法』は国民保護措置の実効性に問題があり、平時から国民に危機意識を増幅させる一方、国民の知る権利を制約する危険性を有する」(日弁連会長声明)と厳しく警告する所以です。
 長野市にあっては、貴議会3月定例会に「国民保護協議会の設置」に関する条例、「国民保護対策本部及び緊急対処事態対策本部の設置」に関する条例などが提案され、国民保護計画の策定に向けた準備が進められています。
 私たちは、60年前の沖縄戦の教訓から、有事において「軍(政府)は民を守らない」ことを知っています。政府が「国民保護」を打ち出しても、にわかには信じがたいものがあります。政府にあっては有事に備え国民総動員体制を整える前に、平和憲法の理念に基づき平和外交を構築し、平時の国民の信頼醸成を図るべきです。
 長野市議会において、国民保護法について、安直な「上意下達」を排し、憲法の平和主義、国民主権、基本的人権を尊重する立場を貫き、戦時国民動員計画となる国民保護計画を策定されないよう求めるものです。
 また、有事=戦争に自治体の住民を巻き込ませないようにするため、ジュネーブ条約第一追加議定書59条に基づく「無防備地域宣言」を、条例をもってされるよう求めるものです。

 以上の理由から、下記事項について請願します。

1.議会において、憲法の平和主義にのっとり、武力攻撃事態対処法等が発動されないよう他国との信頼醸成を築くことが不可欠であるとの認識を鮮明にされること。

2.「武力攻撃事態対処法」「国民保護法」など一連の有事法制への対応において、安直な「上意下達」を排し、住民を戦争に巻き込むこととなる「国民保護計画」を策定しないこと。

3.住民を戦争に巻き込まないために、ジュネーブ条約第一追加議定書59条に基づく「無防備地域宣言」を採択し、条例制定をもって実効性を世界に宣言すること。

長野地区護憲連合

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