今日の話題
今日の話題
05年7月25日
トップページに戻る トピックス・長野市議会に戻る 次の行政視察報告へ
05年7月、市民ネット行政視察(第3弾) いわき市・小樽市・函館市


◆いわき市…防犯条例制定自治体、警察署長OBが行政担当室長に


(1)人口361,204人、世帯数133,582、人口密度293人/Ku。仙台と東京の中間に位置し、阿武隈高地と太平洋に囲まれた自然豊かな地。年間を通じ降雨量が少なく日照時間が多い。明治以降、石炭産業で栄え、新産業都市指定後は工業・観光産業が基幹産業。中核市。にぎわい交流活性化プランを策定し、いわき駅前地区第一種市街地再開発事業として05年夏には再開発ビル施設建築工事に着手。PFIを活用し整備を進める文化交流施設も04年末にいわき文化交流パートナーズ(株)と特定事業契約し取り組まれている。いわき市への視察目的は、平成16年6月に制定された「防犯まちづくり推進条例」の策定経過と条例の効果についてである。生活安全条例の制定が全国で進む中、同市の条例は「犯罪防止」に特化したもので、同趣旨の条例は中核市のうち長崎市といわき市の2市のみ。長野市で検討が進む「防犯条例」について、その趣旨と効果を既設自治体の状況調査から検証してみることをテーマとした。
(2)条例制定の経過は、近年、全国的に各種の犯罪が増加している傾向にあることから、市民が安全に、安心して暮らすことができるまちづくりを推進するための方策等について審議するための「いわき市防犯まちづくり推進懇話会」(24人で構成、公募枠なし)を立ち上げに始まる。H16年4月にこの懇話会から「防犯まちづくりの推進に関する意見書」の提言を受け、H16年6月に「いわき市防犯まちづくり推進条例」を全会一致で可決。条例は「自らの安全は自らで守る」「地域の安全は地域で守る」という基本的認識に立ち、市・市民・事業者の役割と責務を定めるとともに、これらの三者が協力して、児童生徒などを含むすべての市民の安全確保に取り組むことを規定。「いわき市防犯まちづくり推進協議会」の設置を定め、この7月5日に第1回協議会が開かれ、「防犯まちづくり推進にかかる基本方針(案)」を取りまとめていくこととなっている(8月に市長への意見書提出を計画)。窃盗犯が多いことから当初から「防犯」に特化したという。
(3)条例の特徴は、一つに第5条で「市民の責務」として「市民は…自主的な防犯活動を推進するとともに、市が実施する防犯まちづくりの推進に関する施策に協力するよう努める」と規定していること。二つに第8条「関係機関等との連携」で「市長は…警察その他の機関、地域における自主的な活動を行う市民団体等と緊密な連携を図るよう努めなけければならない」とし警察機関との連携を打ち出し、第9条「情報の提供」で「市長は…市民および事業者が適切かつ効果的に犯罪の防止のための自主的な活動が推進できるよう、必要な情報の提供に努めなければならない」としていること。第12条「防犯まちづくり推進協議会」で「防犯まちづくりの推進に資するため」を目的とする協議会を置くとしていることなどである。実質、この協議会で「防犯まちづくり基本方針」を策定する段取りとなっている。市の主な取り組みとしては、@防犯灯の設置(H16年度で299灯、800万円)A防犯協会連合会への助成(543万円)B防犯まちづくり推進アドバイザーの設置(専門的知識を持ったものとされている、警察OBを含むものと思われる)C暴力追放いわく市民大会の開催など4点が指摘。市民の自主的な活動としては「わんわんパトロール隊」「子ども安全サポーター制度(保護者の見守り)」「ジュビナル・ウォチャーズ(小中高生によるキャンペーンや自転車防犯診断)」が取り組まれている。
(4)いわき市の取り組みとして「特筆」すべきことは、条例制定の過程で市民生活部に「交通安全防犯推進室」を設置、なんとこの室長にいわき中央署の署長OBが配置されていることだ。現職時代から要請を受けていたという。今回、この室長から説明を受けたが、一目見て「市の職員ではない」と直感させたことを鮮明に記憶している。まさに警察機関と一体となった行政の取り組みとなっている。条例制定の効果のほどを質問したが、「犯罪の減少など数字に表れる効果はでていない。効果としてあげるならば広報による市民の防犯意識の高揚だ」とし、「自主的な防犯活動が広がっている」ことをあげた。「防犯意識の高揚」を効果とするならば、条例によらなくとも可能であるはずだ。犯罪が減らない要因を尋ねたところ、室長は「捜査力が少ない警察の体制にある。H14年〜16年で200人の増員(県全体)が図られているがまた不十分」と答弁、まさにその通りなのである。「しからば、なぜ、条例なのか」の問いに対する明確な答えは得ることが出来なかった。
(5)いわき市では、またH12年度から稼動しているごみ焼却施設「南部清掃センター」の灰溶融設備についてもテーマとし説明を受けた。南部清掃センター施設は焼却炉130t/日×3炉、灰溶融路は三菱重工業の黒鉛電極式プラズマアーク炉で40t/日×2基。灰溶融路は三菱重工が初めて設置したもの。1300度〜1450度の音頭管理で2基を半年毎にローテーションさせ稼動、1年に1回補修する。メンテ費用は年2億円。溶融スラグは年2448tで埋立処分、アスファルトの砕骨材として活用することを検討中。メタルは年65t、精錬工場に有価物として売却している。時間の関係から突っ込んだやりとりができず、若干不十分な調査となった。

小樽市…2年連続で赤字予算編成、財政危機脱出の苦悩の取り組み

(1)人口145,674人、世帯数67,400、面積243.13Ku、人口密度599人/Ku。道西海岸の中央部に位置し、海と山に囲まれた商工港湾都市。北海道開拓史の中で海陸輸送の要の役割を果たす。海洋性気候で寒暖の差は小さい。ニセコ、積丹にも近く、歴史的建造物も多い、観光資源に恵まれた「坂の街」。港や運河、石造倉庫等の歴史的遺産を活かしたウォーターフロント地区が人気。観光拠点の整備・美化、ガラス工芸等の参加・体験型観光の促進とともに、回遊性のある散策ルート形成に努力。
(2)港湾観光都市として北国での華やかさをイメージする小樽市であるが、財政再建が喫緊の課題となっている。視察のテーマはH17年3月にまとめられた「財政再建推進プラン」の内容と効果の見通しについてである。小樽市ではH13年度から17年度までを計画期間とした「財政健全化計画」を策定、健全化に取り組んできた(最終2年間で34.2億円の削減)とするが、市税収入の減、三位一体改革による交付税の減、高齢化率26.1%による扶助費の増などにより、H16年度当初予算案(一般会計財政規模683億円)の段階で、22.5億円の財源不足、約19億円の不足分を「諸収入」で計上する「赤字予算」とせざるを得なかった。H17年度予算(一般会計財政規模633億円)でも職員給与の5%削減による人件費の抑制を図ったが、約10.4億円の財源不足、6.5億円を他会計から借り入れ、約3.9億円の「赤字予算」となり、2年連続で赤字予算編成となっている。総務省が赤字予算編成は「違法」と指摘、「カラ財源」も望ましくないとしたことで、記憶に新しいところだ。H12年度には36.4億円あった基金もH13年度以降、毎年取り崩さざるを得ず、H16年度末で1.4億円と底つき状態に。H17年度予算で普通建設事業費は11.7億円に過ぎない。財政力指数はH15年度で0.461。このままではH19年度には財政再建団体への転落が現実のものとなる危機感から、H21年度までの5年間で財政再建団体への転落を回避しH21年度に単年度収支の黒字化(4000万円の黒字見込み)を図る「財政再建推進プラン」をまとめるに至った。「プラン」は基本方針に@スリムな行政Aスリムな組織B聖域なき見直しC市民との協働を掲げ、H18〜21年度の4年間で約88億円を改善するとしている。H17年度中に50項目となる「実施計画」を策定し具体化する。
(3)プランで際立っているのは、歳出削減対策として人件費の抑制で△34億円、退職者を不補充とし早期退職制度を導入するとしていること。事業見直しで△27.9億円、事業の繰り延べを基本としていること。歳入増では2.3億円しか見込めていないこと、あと補うべき24億円がその他の改善必要額とされているが「中身はこれから検討、市民負担をお願いすることになるだろう」ということなどがあげられる。結局、退職者180人の不補充と給与削減を柱とする人件費の抑制が大きなウェイトを占めている。事務事業の見直しや市民との協働という視点からどんな「実施計画」がまとめられるのか、今後に注目したい。特に「公平で適正な負担のあり方」で「行政サービスの範囲と負担の見直し」が課題とされているが、どんなメニューが具体化されるのかが要チェックであろう。
(4)自治体を取り巻く財政問題は、国の地方にしわ寄せする「三位一体改革」により、いずこも厳しいものがある。長野市においても財政構造改革プログラムの策定に乗り出したことから小樽市を視察地としたものだが、財政構造改革懇話会における本市の審議状況を見ると、いわゆる改革メニューはほぼ同じである。基礎的な体力の差はあるにしても、小樽市と同じような結論とならない取り組みが求められている。

函館市…中心市街地の小学校統廃合の取り組み

(1)人口298,660人、世帯数137,683、面積677.77Ku、人口密度441人/Ku。道の南端部に位置し、道内でも温暖で降雪量も少ない。1856(安政6)年、横浜・長崎とともに日本最初の貿易港として開港。欧米文化の影響を受け、今も街並みに面影を残す。04年12月1日に戸井町・恵山町・椴法華村・南茅部町を編入。道南の中核都市。3つの海流が流れ込む津軽海峡に面する地理・自然的条件や、学術研究機関や関連産業の集積を活用し、学術研究拠点都市の形成を図る。旧函館ドック跡地への「国際水産・海洋総合研究センター」の整備も検討されている。函館市の西部地域においては、H14年4月に東川小、大森小を統合し新設の「あさひ小」を開校、合わせて統合による通学区の見直しが実施されている。長野市中心市街地の3小学校の統廃合をめぐる問題にあわせ、PTA等への理解をどのように進めたのか、地域への説明・理解をどのように進めたのかとの問題意識で、視察を行った。
(2)函館市の2小学校の統合は、学校教育審議会(常設審議会・25人で構成)による統合の答申から10年越しで実現している。統合問題は、これにさかのぼることH5年の学校教育審議会の答申「西部地域における小学校の適正配置に関しては、今後の児童数の推移を慎重に見守るとともに、将来的にはより好ましい教育条件の下に教育活動の一層の充実が図られるよう、具体的な計画の推進に努めること」に始まる。西部地域においてはアパート・マンション建設による定住対策が講じられてきたが児童数の減少傾向は収まらず、H9年9月に審議会に「両校の統合」を諮問、H10年2月に「統合実施」の答申を受け、H10年度の期間に学校やPTA、同窓会、町会地域住民への説明会、懇談会を重ね、H10年度末に両校のPTAから統合同意書及び要望書の提出にいたり、具体的に統合新設校の計画・建設に着手、H14年度4月、大森小跡地に「あさひ小学校」という新しい名称で開校したものである。建設費は17億円。東川小学校PTAがまとめた要望事項は@現代教育のニーズに合った施設整備の整った新校舎の建設A教育環境の整備B通学路の安全確保C適切な教職員の配置D住民の意見を踏まえた東川小跡地利用、東川の名称が残る記念碑建立の用地確保E統合校の名称に東川を存続させることF遠距離通学の場合の隣接校通学への弾力的対応の7点、すべて実現はしていないが、PTAとの間で協議が合意してスタートしている。
  *統合前の両校の児童数・学級数については未検証
  *新設「あさひ小学校」は40人学級編成で11クラス
(3)函館市の場合、どの小学校も築年が古く(校舎が古いため、寒く暗い学校となっている)、新しい校舎への期待が住民にあったこと、両校ともに通学距離の負担(2km以内、文科省では4km以内が目安)が大きくないことなどが統合をスムースにしたといえる。なお、あさひ小学校の通学区は統合された東川小・大森小の両校区。市の説明のように教育環境の充実、地域に開かれた学校づくりの実現といった施策が住民のニーズに合致したものと思われる。また、統合の進め方については文部省通達の受け止めが強調された。いわく「小規模学校の統合の推進を図る」とされたS31年の文部省通達「公立小中学校の統合方策について」が、S48年の通達では「学校が持つ地域的影響を考え…学校規模を重視する余り無理な学校統合を行い、地域住民等との間に紛争が生じたり、通学上著しい困難を招いたりすることは避けねばならない…」とされた点を十分に受け止めて「関係者の理解と協力を得る努力」をしてきたとする点だ。S48年文部省通達の趣旨を単なる「枕ことば」にしないことが強く求められよう。学ぶ点としては、合意形成・説明責任という観点から、「常設」の学校教育審議会で学校の統廃合、通学区域の見直しが検討されていることにある。そして審議会には教員をはじめ関係町内会、地域代表が参加している点だ(統合問題は10人の小委員会で原案作り)。

このページのトップへページトップへ