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05年4月8日記
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図書館に防犯カメラ、プライバシーは大丈夫か?(その1)


写真は図書館1F(上2枚)、2F事務室(下2枚)

◆4月8日の信濃毎日新聞の報道をどのように受け止められたでしょうか。

 長野市立図書館に「議論なく防犯カメラが設置され、記録された映像の管理基準がない」という問題です。8日の午前中に教育委員会から事後説明を受けましたが、その後、早速図書館を訪問し、吾妻図書館長の案内で防犯カメラの設置状況やモニター・記録装置を見聞きしてきました。:経過を含めて所感を述べたいと思います。

◆防犯カメラ設置の経過
 昭和60年、現在の市立図書館建設にあたり、監視カメラ4台を設置。受付フロントを中心に監視するもので、モニターのみ(映像記録装置はなし)の設置。
 平成15年12月の議会で「長野市立図書館の施設改修費、冷暖房、空調施設の更新で1億1050万円の補正予算」が計上。予算を審議した経済文教委員会では「冷暖房、空調の中央管理システム、給排水の改修を行う費用」と説明されただけで、防犯カメラの更新については説明がないまま、補正予算案は可決。映像記録装置を伴う防犯カメラの設置の是非についての議論はないまま推移。
 平成16年7月、館内の冷暖房施設の取替え工事にあわせて、1階に4台、2階に2台のカメラが設置、2階事務室にあるカメラのモニター装置等が更新され、合わせて映像記録装置が導入。防犯カメラ装置の更新費用は142万円ほどだそうです。
 現在、カメラは受付フロントやロッカー、フロントから死角となる書棚のコーナーなどを常時監視、そのデジタル映像は約1ヶ月間保存される状態になっています。6台のカメラはモニターで1台ずつのアップ映像に切り替えることができます。ただし、ズームアップはできない状態です。保存データはフロッピーなどにコピーし持ち出せないように管理されているとしています。また館内には「防犯カメラ設置」のプレートが約20箇所に掲示されています。

◆二つの問題、議論がなかった議会の問題とそもそもカメラが必要かという問題
 私は、教育委員会の説明の際にも問題提起しましたが、今回の件では二つの問題があると考えています。一つは、予算の内容をチェックする議会において、防犯カメラ設置の是非について論議する情報が提供されず、いわば「ノーチェック」で終わったことです。予算の多寡を問わず、人権にかかわる問題だけに、行政サイドの認識度合いも問われるという問題です。もっとも、議員として公共施設の管理運営についてアンテナが低かったことも反省しなければならないと思いますが…。二つは、そもそも公共施設である図書館に防犯カメラの設置が必要なのかという問題です。よしんば設置するとしても個人映像が記録保存されるだけに個人情報の保護管理が厳格に行われているのかという問題があります。個人情報の保護、肖像権の尊重、市民への周知といった観点から、慎重な対応が求められる課題だと思うからです。

◆プライバシーが侵害、監視社会の問題点。映画「踊る大捜査線」の話
 今日、犯罪が多発し、いわゆる「不審者」チェックのために防犯カメラの設置が「当たり前」のようになりつつあります。子どもの安全を図るためにと学校の門に防犯カメラを設置する動きも高まっています。しかし、一方でこうした動きは「監視社会」を助長する危険性があるのではないでしょうか。本人が知らない間に自分の情報が管理・監視される、自分に関する情報を自分でコントロールできないという問題です。ここにプライバシー権、個人情報の保護が強調される所以があります。大ヒットした「湾岸署」を舞台とする「踊る大捜査線ザ・ムービー」の映画の一場面を思い出します。映画では、容疑者を探すために防犯カメラを駆使します。街のあちらこちらに設置された防犯カメラのモニター(映画では、このモニター室が確か警察署の地下に極秘に設置されていたと思います)で容疑者を探し出す場面です。映像と自由にズーミングができ、音声もひろえます。誰が誰と何を話しているのかも把握できるといったものでした。「それは映画の話」と言われるかもしれませんが、警察が管理する交通監視カメラや防犯カメラが増えていることを考えると、あながち荒唐無稽な話とはなりません。既に始まっていることかもしれません…。

◆カメラは犯罪抑止につながっているか
 吾妻館長は、カメラの使い方としては、「受付フロントの込み具合や児童コーナーでの子どもの集まり具合を確認し対応する場合に重宝している」とのこと。また「酔っ払いやホームレスと思われる人々の図書館利用や本の不正な持ち出しを抑止する効果はあると思う」と述べました。一方、監査委員からも対応策を求められたという「行方不明の所蔵本は1200冊」については、傷んで廃棄した本や貸し出しで戻ってこない本も数には含まれているとのこと、いわゆる「不正持ち出し」の割合は少ないとのことでした。確かに図書館は女性職員が多く、安全な職場の確保は大切なことです。しかし、これは防犯カメラの有無で解決する問題だとは一概に思えません。記録保存なしのモニターのみの稼動でも十分対応できるのではと思うのですが…。

◆「そもそも」の論議から
 図書館という場所で「自分が見られている」ことは決して気味のよいものではありません。ましてや、記録データの管理についてルールがない状態ではなおさらです。
 教育委員会では、今回の図書館に限らず、博物館なども含めて防犯カメラの設置状況を調査した上で、管理運用のルール作りを急ぎたいとしています。私としては、そもそも図書館に防犯カメラが必要かという出発点からの論議が必要だと考えます。皆さんはどのように思われますか。

◆経済文教委員会の開催を申し入れ
 また、8日には所属する会派・市民ネットとして、この問題について議会として議論するため、経済文教委員長に経済文教委員会の開催を申し入れました。議会の規則では、委員会を開くには、委員の過半数の請求が必要とされていますが、委員の総意によって開催するよう求めたものです。私自身が現在、経済文教委員会の所属であることから強く要請しました。委員長は「議論することは必要」と述べ、早急かつ前向きに検討する姿勢を示しています。

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