自治政策講座in横浜[その1]

 13日~14日、自治体議会政策学会の第16期自治政策講座に参加してきました。「これからの自治体政策―持続可能な社会への視点―」をテーマにした5つの講座が内容で、今回は横浜市内で開かれました。

13日、横浜は小雨。ランドマークタワーには重い雲がかかっていました

13日、横浜は小雨。ランドマークタワーには重い雲がかかっていました


第1講義 地方制度調査会答申と自治の仕組み
      …「住民自治の根幹としての議会」を創り出す…
      江藤俊昭 山梨学院大学教授
第2講義 TPPと自治体の課題…グローバル経済と地域再生の道…
      鈴木宣弘 東京大学教授
第3講義 介護保険制度改正について…高齢者福祉と自治体の課題…
      結城康博 淑徳大学教授
第4講義 地域子育て支援の体制づくり…子育て新システムと自治体…
      渡辺顕一郎 日本福祉大学教授
第5講義 低炭素・気候変動適応型社会へ…自治体の対応と課題…
      白井信雄 法政大学地域研究センター特任教授

 1講義2時間。そうそうたる講師陣で、内容は濃いものでした。取り急ぎ速報です。

《地方制度調査会答申と自治の仕組み…「住民自治の根幹としての議会」…》
 第1講義の江藤教授は、国の地方制度調査会委員を務め、会津若松市議会の政策サイクルの形成に関する議会改革にも携わってきた方です。
 地方制度=地方行政改革が広域連携・自治体間連携へと進む中において、議会が果たすべき役割は何かという視点は新鮮でした。
 「住民福祉の向上を目的とする議会改革を束ね、通年的・通任期的発想を持って議会を政策サイクルの形成の場へと改革を集約していくとき」「自治体間連携が進められることで、広域連合などの役割が拡充していくことを見越し、広域連合議会の見える化を考えるとき」という視点です。
 「議会はとんでもない権限を持っていることを自覚すべき、だからこそ議決責任=議決に対する説明責任が重要」との指摘は、会津若松市議会の取り組みのポイントとなっているものですが、改めて強く認識しました。

《TPPと自治体の課題…グローバル経済と地域再生の道…》
 第2講義の鈴木教授は、TPP反対論者の急先鋒の一人です。極めて明快で、スッキリでした。
 「はじめに」の指摘から抜粋します。
 「総合的・長期的視点の欠落した『今だけ、金だけ、自分だけ』しか見えない人々が国の将来を危うくしている。自己の目先の利害と保身しか見えず、周りのことも、将来のことも見えていない。人々の命、健康、暮らしを犠牲にしても、環境を痛めつけても、短期的な儲けを優先する、ごく一握りの企業の利益と結びついた一部の政治家、一部の官僚、一部のマスコミ、一部の研究者が、国民の大多数を欺いて、TPPやそれと表裏一体の規制改革、国家戦略特区などを推進している。これ以上、一握りの人々の利益さえ伸びれば、あとは顧みないという政治が強化されたら、日本が伝統的に大切にしてきた助け合い、支えあう安全・安心な地域社会は、さらに崩壊していく」というものです。
 「『米国の企業利益のために邪魔なものは命や健康を守る仕組みでも一切許さない』というTPPの本質を見抜くべきとの主張は同感です。
 これから先の見通しについて、鈴木氏は「日豪FTPの合意内容はレッドゾーンにはならない。TPPは嘘に嘘を重ね、コメも無傷ではすまないが、合意するだろう。そのうえで国内対策で理解を求めることになるだろう。国会承認が最後のハードルだが、飲み込まれてしまうのでは」との厳しい見方を示しました。
 また、遺伝子組み換え(GM)食品の拡大や、農薬・食品添加物の基準緩和、学校給食における地産地消策の大転換など、命や健康が蝕まれてしまう危険性が強く指摘されました。

《介護保険制度改正について…高齢者福祉と自治体の課題…》
 第3講義の結城教授の講義は2回目です。
 介護保険制度の見直しでは、要支援1・2の予防給付が地域支援事業として市町村の仕事になり、介護保険自己負担2割の導入や特養の申し込み要件(要介護3以上)の変更、サービス付高齢者住宅への住所地特例の導入、地域包括支援センターの強化、地域ケア会議の法制化などが打ち出されています。通常国会で法衣の改悪が行われ、7月頃にガイドラインが示されるとのことです
 市町村の現場力の力量差から、全国1,700自治体の2割程度でしか成功しないとの厳しい予想を示しています。
 「介護の社会化」を目標としてスタートした介護保険制度ですが、目指すべき理念からはドンドン離れて行ってしまっています。なかなか示唆に富む講義でした。

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