長野市公共施設白書[その2]…施設分類ごとのコストと課題

 [その1]では、白書の全体の概要についてまとめてみましたが、[その2]では公共施設全体に対する経費及びトータルコスト、10の施設分類毎のトータルコスト、施設分類毎の課題についてポイントをまとめてみます。
 【長野市公共施設白書・概要版】…長野市ホームページより

◆公共施設全体に要する経費は年間約500億円、市負担分は344億円
 H24年度で、公共施設全体に要する経費は年間約500億円、教職員の人件費・県負担分を除く市負担分は344億円。年間予算の約23%を占めることになる。
 学校教育施設が約4割(36%)を占め、次いで行政施設、医療施設となっている。
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◆減価償却を含むトータルコストは423億円
 公共施設サービスに係る経費は、維持管理費・事業運営費・人件費(現金支出を伴う経費)に加え、現金支出を伴わない施設の減価償却費約79億円を含め、トータルコストとして年間約423億円に上る。
 施設分類別の年間トータルコスト一覧は下表のとおり。『白書』概要版からまとめたもの。数字には、積算等による差異がありますが、傾向をつかんでください。
  *減価償却費=建物の取得(建設)費を使用する期間(耐用年数)に応じて割り振ることで、建物の仕様1年あたりのコストに換算したもの。
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★学校教育施設
 トータルコストで施設全体の36%を占める。耐震化が進められているものの、小学校の7割、中学校の4割の建物が築30年以上経過していて、老朽化対策が課題となる。
 今後、児童・生徒数は減少すると予測されるが、小中学校の配置や規模は、災害時の避難所や地域コミュニティの中心的存在を考慮し、地域に対する影響を踏まえながら検討。
 学校給食センターは、第四学校給食センターの建設を含め、計画的に改修・更新が必要。
 教育センター(築31年)、青少年錬成センター(築25年)は、大規模改修がされておらず、老朽化対策が課題。改修・更新にあたっては、他施設の余剰スペースの活用、機能の移管・統合などを含めて検討。

★生涯学習・文化施設
 公民館やホール、図書館、博物館が対象。
 城山公民館別館(築46年)、篠ノ井市民会館(築46年)など築30年以上経過している建物が約4割を占めることから、老朽化対策が課題。
 公民館の利用者1人当たりのトータルコストは平均約700円。施設の稼働率は公民館の半数、集会所の6割が20%未満。
 公民館をはじめ市民文化・コンベンション施設など集会機能を持った施設が多く、既存施設の相互利用や機能・役割分担を考慮し、適正な配置・規模を検討。
 同種の事業が民間でも行われていることから、事業内容や料金の適正化を検討。
 14施設ある博物館は、博物館再編基本計画を策定する中で、施設の適正配置を検討。

★観光・レジャー施設
 松代荘やリンゴの湯、戸隠スキー場・キャンプ場、エムウェーブ、茶臼山動物園などが対象。
 17施設ある温泉保養施設の内、中山間地域の13施設は、稼働率が著しく低く、利用者1人当たりのコストも非常に高いことから、廃止に向け協議中。
 施設の見直し、移管や廃止などについて、地域に対する影響を踏まえながら検討。

★産業振興施設
 農村環境改善センター、職業訓練センター、特産物販売施設などが対象。
 中山間地域を中心に36施設あり、内26施設が合併により引き継いだ施設。特に大岡地区には11施設と際立つ。
 市域全体のバランスや地域特性、各施設の位置づけなどを考慮し、適正な配置・規模、効率的な施設運営を検討。

★体育施設
 社会体育館や総合運動場、市民プール、テニスコート、真島総合スポーツアリーナ、スパイラルなどが対象。
 オリンピック関連施設は、築16~17年経過し、多額の改修経費が必要となり、13~14年後には一斉に築30年を迎え、更なる老朽化対策が必要。
 スパイラルは利用者1人当たりのコストが高く、一方、体育館・屋内運動場は稼働率が高く、コストも抑えられている。

★保健福祉施設
 保育所や児童館・児童センター、老人憩いの家、保健センターなど162施設が対象。
 トータルコストでは、保育所が30億円、約55%を占める。公立保育所の適正規模・配置は「市公立保育所の適正規模及び民営化等基本計画」(H25年4月策定)に基づき、検討。
 児童館・児童センターは「長野市放課後子どもプラン」に基づき整備、登録児童数の増加による必要スペースの拡大は、小学校施設を活用。
 民間でも行っているサービスがあることから、サービスの提供の方法、施設のあり方について検討。

★医療施設
 長野市民病院と診療所、6施設が対象だが、その大半を市民病院が占める。
 長野市民病院は、公設民営方式で運営、独立採算性が原則。
 診療所は、鬼無里・大賀・中条地区で唯一の医療機関、年間受診者数は2.7万人、年々減少傾向。

★行政施設
 本庁舎・支所、保健所、清掃センターなど195施設。年間トータルコストは106億円で全体の18.3%。約4割の施設が築30年以上経過し、老朽化対策が課題。
 支所では、篠ノ井・七二会・中条・信里(連絡所)・若槻・更北・芋井・長沼の8支所施設が築30年以上、老朽化対策が課題。
 中央消防署は築30年以上経過、早期に耐震化対策が必要。
 行政施設は、市民サービス・災害時の拠点であることから、予防保全的な改修等を計画的に行う必要がある。

★市営住宅等
 87団地(656棟・3708戸)ある市営住宅の内、約半分が築30年以上。
 「公営住宅等ストック総合活用計画」を策定し、今後30年間の長期的な方向性を具体的に示している。
 合併地域においては、別途政策的な判断。将来的な用途廃止、地域への影響・後利用などを含め検討。

★その他施設
 5つある市営駐車場や、戸隠・鬼無里・信州新町・中条のケーブルテレビ施設、上下水道施設が対象。
 老朽化した駐車場は、将来的に市が運営する施設として適当かどうかを含め検討。
 屋外ケーブルは耐用年数が20年程度であることから、近い将来、張替が必要だが、より効果的な方法について研究。収入確保も課題。
 上下水道事業は市が経営する企業として運営され、独立採算性が原則。もっとも重要なインフラであり、「長野市水道ビジョン」「長野市下水道10年ビジョン」を策定し、計画的な改築・更新を進めるとともに、施設規模の見直しや統廃合等を進める。

◆雑感として…
 こうしてみると、やはり五輪施設の維持、中山間地域の施設維持が課題として浮上してきます。
 観光・レジャー施設に分類される温泉保養施設は、中山間地域においては観光資源ではなく地域振興資源として位置づけ直す必要もあるのではないでしょうか。
施設分類別の範疇においても、縦割り行政が反映していてわかりづらいところもあります。
 例えば「子育ち・子育て」という政策面から、横軸を設定し施設をまとめる分類で、ライフサイクルに応じた関連施設の重要性を課題として明確にできるのではと考えてしまいます。市民に理解を深めてもらうためにも。
 いずれにせよ、人口減少と財政の健全化維持の観点、更に公平な市民サービスの享受という観点から、深く検討する必要性を痛感します。
それにしても、防災・災害拠点である中央消防署の耐震未対応は問題です。決算特別委員会でも課題として指摘されましたが、早急な対応が求められます。
 廃止を含め施設の統廃合・複合化を考えるにしても、施設の利用度・利便性を高めるためには、施設への移動交通手段をどのように確保するのかという視点からのアプローチも必要でしょう。

◆「公共施設のあり方調査研究特別委員会」
 議会内では、「公共施設のあり方調査研究特別委員会」が新たに組織されました。この特別委員会で、白書でまとめられた施設の現状と課題、施設見直しの基本的な方向性などについて、集中的に調査研究することになります。
 私は、残念ながら所属していませんが、総務委員会の所管事項ともなることから、総務委員会の中で議論・検討を深めたいと思います。

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