長野市公共施設白書[その1]…白書のポイント

 7日の会派総会、理事者からのレクで、『長野市公共施設白書』が公表されました。1年がかりで策定にこぎつけたもので、「箱もの」である施設をはじめ、道路や橋梁・上下水道管などインフラを含めた公共施設の全体像をとらえ、公共施設が置かれている現状と課題を市民と情報共有することを目的としています。
 今後、試算された施設更新費用などのデータを基礎資料として、公共施設の将来のあるべき姿を検討し、「量」(施設の統廃合・複合化、再配置計画の策定)と「質」(施設の長寿命化・効率化と民間活力の導入)の見直しに向けて取り組むとしています。
 【長野市公共施設白書・概要版】…長野市ホームページより

◆公共施設白書のポイント
 公共施設白書は345ページとボリュームのあるもので、概要版でも45ページに及びます。
 概要版の概要版から、ポイントを拾ってみました。
 まず、[その1]です。詳細な検証は、順次まとめていくきたいと思います。なお、掲載している図は「概要版のポイント」からの抜粋です。

★白書の対象施設は815施設、2,082棟
 延床面積が原則200㎡以下の小規模施設・軽易な倉庫・公衆トイレ・文化財を除く
 道路・橋梁・上下水道管路のインフラ施設は、将来コストの試算対象に位置づけ

★建物は目的・用途別に10分類に分類し、施設分類ごとに現状と課題を整理
 学校教育施設や生涯学習・文化施設、体育施設、保健福祉施設、市営住宅など10分類に区分け。施設分類ごとに現状と課題が整理され、個別施設の課題にも部分的に言及されている。
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★施設の延べ床面積は約154万㎡、市民1人当たり約4.0㎡
 約半分が学校施設と市営住宅で占める。総務省調査によると人口1人当たりの公共施設の延べ床面積の全国平均は3.2㎡で、長野市と同規模の中核市6市と比べると、支所、保育所、児童館、公民館、体育館、野球場、保健センターなどの保有数が多く、集会室の機能を持った施設が多いことが特徴とされる。
 この辺りの数字は、五輪施設の存在をはじめ、合併し中山間地域が増大している長野市の地域的特性を度外視したもので、いかにも公共施設が多く、集会室機能が多いから、再編が必要へと誘導する狙いが見え隠れする。施設を通した公共サービスの必要度・満足度の視点から、全国的な位置、類似都市との比較をしてもらいたいものである。

★長野市人口、2040年(H52年)には約30.2万人、高齢化率は38%に
 公共施設の将来を考えるにあたり、人口動向を基礎に据え、37年後には2010年(H22年)に比較し、約8万人(21%)減少すると予測、老年人口が増加し高齢化率は約25%から38%に上昇すると見込む。中山間地域では、約36700人から21000人と約15000人(43%)減少し、高齢化率48.4%を予測。推計とはいえ、厳しい人口減少時代の到来を根底に置く。
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★投資的経費は194億円(過去5年間平均)、公共施設には83.1億円、道路・橋梁には33億円
 公共施設への投資的経費が、現在の財政規模においてどれだけなのかを算出したもので、過去5年間(H19年度~H23年度)の平均値を示す。
 公共的施設に係る投資的経費は平均83.1億円で、約6割が学校施設の耐震化工事。道路・橋梁に係る投資的経費は平均33億円、区画整理や公園整備・農村整備に係る経費が約54億円、用地取得にかかる経費約25億円などとされる。
 過去5年間の平均とはいえ、H21年度以降、大規模プロジェクトの実施により投資的経費が増加していることは要チェックである。
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★今後40年間に必要な公共施設・インフラの更新費用…1兆730億円
 現状の施設規模・施設内容の維持を前提にした、今後40年間の改修・更新費用のトータルは1兆円を超えると試算。
 ➊建物の改修・維持費用 5,858億円
 ➋道路・橋梁の更新費用 1,598億円
 ➌水道管の更新費用   1,835億円
 ➍下水道管の更新費用  1,439億円
 なお、建物の改修・更新費用は、㈶自治総合センターの「公共施設及びインフラ資産の更新に係る費用を簡便に推計する方法に関する調査研究」報告書を参考に、大規模改修は、建設後30年で行い、その後30年(築60年)で建て替えると仮定して試算されている。

★1年あたりに換算すると毎年268.5億円と試算
 ➊建物の改修・維持費用  146.5億円⇒直近5カ年平均83.1億円の1.76倍
 ➋道路・橋梁の更新費用   40.0億円⇒直近5カ年平均33億円の1.21倍
 ➌水道管の更新費用     46.0億円
 ➍下水道管の更新費用    36.0億円
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★だから、公共施設の見直しが必要
 試算では、現状の投資的経費を超える改修・維持、更新費用がかかることになり、「全ての公共施設を将来にわたり維持していくために、この経費を確保し続けていくことは極めて難しい」と結論付け、「公共施設の見直しが必要である」とする。

★見直しは「量」「質」「利用者負担」の3つの視点で
 公共施設見直しの基本的な考え方として、「量の見直し」「質の見直し」「利用者負担の見直し」をあげる。そして、見直しを進めるにあたり、公共施設の統括的なマネジメントが必要であり、➊施設情報を一元的に管理する「公共施設マネジメント支援システムの必要、➋ファシリティマネジメントの考え方を取り入れた、全庁的な公共施設のマネジメント方針の明確化、➌公共施設マネジメント推進体制の検討、➍職員の意識改革が必要であるとする。
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★H26年度に個別施設の分析・評価とともに公共施設マネジメント指針を策定

★H27年度に公共施設再配置計画・長寿命化計画を策定
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 白書では、施設分類ごとの現状と課題をまとめていますが、この点については[その2]で簡単にまとめたいと思います。

◆自前の白書作成に拍手
 多くの自治体では、公共施設白書の作成にあたり、職員自前でなく「コンサルタント」に外部委託している事例が多いのですが、長野市の場合は自前で作成されました。ご苦労だったと思います。この点は率直に評価したいと思います。

 今日の説明の折に、「再配置計画も自前で策定していく考えか」を聴いたところ、「基本的にはそうしたい。しかし、専門家などアドバイザー的な組織は必要に応じ検討する」とのことでした。公共施設をマネジメントする全庁横断の統括部、或いは統括局が必要でしょう。

 また、「施設の更新費用の算出スパンが40年とされる根拠」を聴きましたが、「前述の自治総合センターの調査研究報告書に基づくもので、明確な根拠はない」とのこと。人口推計などとの整合性がイマイチなのではと思いますが、要調査です。

◆いずれにせよ、公共施設白書は第一歩
 私は、昨年9月議会で、公共施設の見直しが市民生活に直結することから、市民とともにつくる公共施設白書、市民とともにつくる公共施設見直し計画を求めてきました。維持費に毎年約5億円投入する五輪施設に加え、広範な中山間地域を抱える長野市にとって、公共施設の維持管理は行財政運営の最重要課題に浮上することは必至だからです。
 また、今年の3月議会では、公共施設施設維持将来を見据え、「公共施設維持管理基金」を創設すること、行政内に公共施設をマネジメントする総合部局を編成することなども提案してきました。
 【参考】2012.09.30 9月議会の質問より➊…公共施設白書の課題を質す
     2013.05.15 3月議会の質問から…公共施設維持管理に向け、基金創設を提案

◆「市民とともに考え、つくる」を基本にして
 今後、「総論賛成・各論反対」となるような厳しい状況が想定されますが、市民にとっての必要度・満足度に照らし、「市民とともに考え、つくる」を基本に据え、冷静に検討・検証を深めていきたいと考えます。
 とにかく、まずは「白書」を熟読玩味です。

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