「憲法96条の改正発議要件の緩和に反対する請願」不採択に反対討論

 市議会最終日、憲法改正発議のハードルを低くする96条の改定問題について、標記の請願を不採択すべきとした総務委員会委員長報告に反対討論をしました。内容は下記の通りです。
 この請願に対する議決では、市民ネット2人、共産党5人、改革ながのの5人のうち4人、無所属議員3人の計14人が賛成しましたが、賛成少数で否決となりました。

 32番、市民ネットの布目裕喜雄です。

 請願第6号「憲法96条の発議要件緩和に反対する請願」を不採択すべきものとした総務委員会委員長報告に反対の立場で、すなわち憲法第96条の改正発議要件は緩和すべきではないという立場で討論します。

 日本国憲法が施行されてから66年余、主権在民、平和主義、基本的人権の尊重を掲げた日本国憲法は、この66年間、私たちが進むべき方向を示してきました。また、日本が国際社会、とりわけアジア近隣諸国から信頼をかちとるうえで重要な役割も果たしてきました。

 今日、憲法は最大の危機に直面しています。安倍政権が本格的な改憲への準備として、まず第96条の憲法改正の発議要件を「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」から「過半数の賛成」に緩和しようとしているからです。
 最高法規である憲法の改正に、通常の立法よりも厳格な発議要件が課されるのは当然の事であり、時の政権や政治状況によって揺れ動くものであってはなりません。
また、内閣が政府の方針として「憲法改正」を掲げること自体が第99条にある憲法尊重擁護義務違反であって、立憲主義の本質を破壊するものといわなければなりません。
 さらに、改正の具体的な目的も示さず、手続きだけを先行させる手法は、国民を欺くものともいわなければなりません。

 96条の改正発議要件は厳格すぎるとの意見があります。しかし、他国の事例を見ても決してそんなことはありません。日本国憲法以上に高いハードルを設定している国があり、その厳格な要件のもとで憲法改正も行われています。
 最高法規である憲法の改正には厳格な要件が定められて然るべきなのです。
 
 時の為政者、政府与党である自民党の「日本国憲法改正草案」は、96条を改定し、憲法改正発議のハードルを低くした後に何が待っているのかを示しています。

 「公益及び公の秩序」の名の下に、表現や思想・信条の自由、集会結社の自由などを制限し、これまで「侵すことの出来ない永久の権利」であった基本的人権を歪め、時の為政者の都合で国民を縛り支配する社会が待っています。
 現憲法が定める「公共の福祉に反しない限り」との規定は、「他の人の人権を侵さない限り」と解釈されていることは論を待ちません。「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に置き換えることが重大な人権蹂躙につながることを注視しなければなりません。
 そして、国民に国防の義務を課し、国防軍という軍隊を創設、集団的自衛権の行使を容認し「戦争をする国」が待ち受けています。

 こうした96条改定後に何が待っているのかをさておいても、憲法の基本原理、立憲主義の原則は、権力に対して厳しい規制や制限を加え、主権者たる国民の権利を保障するものであることの重大さは、いささかも揺らいではなりません。この憲法の基本原理を180度変えて、憲法を権力側が国民を縛り支配する道具に変えることにつながる96条の改定は認めるわけにはいきません。

 「憲法が時代に合わない」、「国民の手に憲法を取り戻す」と言っている政府自らが、憲法理念と現実を乖離させてきたことを見過ごしてはなりません。1票の格差問題をはじめとした、立法不作為を解消し、憲法の理念に向けて現実を変えていくことこそが、憲法尊重擁護義務を負う政府と国会の責務でしょう。

 戦後、私たちの尊厳や生命や暮らしは、憲法によって支えられ守られてきました。憲法は主権者たる国民のものという大前提を譲ってはなりません。

 請願者の願意はここにあります。この請願を不採択すべきとした議員の皆さん、最高法規である日本国憲法の基本理念と基本原理に改めて思いをいたし、良識を持って態度表明されることを願い、反対討論とします。

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