9月議会の質問より➊…”子育て支援先進都市ながの”の具体を質す

 9月市議会定例会が閉会してから、早いもので1週間が経ってしまいました。
 随時、質問と答弁、今後の取り組みの課題をまとめながら報告します。

 まず、シリーズ1回目「“子育て支援先進都市ながの”の具体を質す」です。
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市長…日本一の子育て支援先進都市を目指す

 市長は就任以来、「子育て支援先進都市長野」を標榜し、時には、勢い余ってか、「日本一の子育て支援先進都市をめざす」と述べたこともあります。
 こども未来部の創設、子ども相談室の充実に始まり、子どもの医療費助成の拡大、病児・病後児保育の拡大、ながの版ネウボラとして子育て世代を包括的に支援する総合相談窓口のモデル開設、貧困の連鎖を断ち切るため、生活困窮世帯や一人親家庭の児童への学習支援の開始など、特筆していい施策展開が図られてはいます。
 しかし、市長が「日本一」の「子育て支援先進都市」を標榜するには、他市に比べて抜きんでた施策展開が問われます。言行一致を求めながら質しました。

施策優先度合いが高い「子育て支援の充実」

 H27年度のまちづくりアンケートの「行政施策の優先度」では、「子育て支援の充実」が26.5%で5位。子育て世代の30歳代では55.0%にのぼり、子育て支援をもっと優先してもらいたいという民意が伺えます。
 つまり、子育て世代は、減少の施策に満足していないということになります。

【まちづくりアンケートより】

H27年度まちづくりアンケートより「行政施策の優先度」…特に力を入れてもらいたい施策

H27年度まちづくりアンケートより「行政施策の優先度」…特に力を入れてもらいたい施策


施策優先度、昨年との比較より

施策優先度、昨年との比較より

不満足度が高い子育て支援策

 まちづくりアンケートの「満足度調査」に、その傾向が如実に表れています。

 「満足度調査」では、「安心して子どもを産み育てることができる環境が整っている」との設問に対し、「そう思う」「ややそう思う」が32.2%、「そう思わない」「あまりそう思わない」が44.9%。
 「子どもたちがいきいきと学ぶ環境が整っている」では、高い評価が34.4%、低い評価が39.5%。
 「地域ぐるみで子どもを育てていく環境がある」では、高い評価が31.5%、低い評価が44.7%。

 すなわち、子ども・子育てに関する設問では、いずれも不満足度の割合が高く、子育て世代が満足できる施策展開が喫緊に求められているということです。

【まちづくりアンケートより…下段三つが子育て支援策に関する項目】
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子育て支援先進都市の具体像を質す

 さらに、子育て世帯が求める公的支援の第1位は「金銭的支援」、長野市の人口分析調査のアンケートでも、「経済的負担の軽減」を求める声が多数となっています。

 「日本一の子育て支援先進都市」…「日本一」「先進」の中身が問われます。掛け声倒れでは困ります。
 子育て支援先進都市を目指すにあたり、アンケート結果をどのように評価し、どんな具体像を描くのか、子育て世代が求める経済的負担の軽減にどのように応えていくのかを市長に質しました。

市長…「このまちで子育てができて良かった」と思える魅力的な都市「ながの」へ

 市長はまず、「市長就任以来、こども未来部の創設をはじめ、H27年4月からは『子ども・子育て支援事業計画』をスタートさせ、89の子育て支援事業を設定し全庁を挙げて取り組んでいる」と答弁しましたが、「子ども・子育て支援事業」のスキームは国の施策に沿ったもので、市独自の取り組みではありませんから、あまり胸を張れるものではありません。

 そのうえで、「めざす『子育て支援先進都市』のあるべき姿は、市民に『このまちで子育てができて良かった』と思ってもらえる魅力的な都市『ながの』」であると述べ、「家庭を築く基盤となる働くの場の確保、教育環境や居住環境の整備など、総合的に、バランス良く施策を推進し、さらに魅力的な子育て支援先進都市を目指したい」と答弁するにとどまりました。

 質問が総論的でしたが、答弁も総論でした。先進都市の具体が見えてきません。

市長…「不満足の割合が高いのはPR不足」

 まちづくりアンケートで子育てに関する満足度調査で不満足の割合が高いことについて、「新規事業をはじめ、市民に十分伝えられていないことも考えられる」と述べ、「今後、お知らせの方法も工夫しながら広報・PRにも力を入れたい」と答弁しました。
 PR不足に不満足の原因を求める市長の姿勢では、「子育て支援先進都市」は、やはり掛け声倒れに終わりそうと思うのは私一人でしょうか。

「特に支援が必要な世帯の経済的負担の軽減に取り組む」

 経済的負担の軽減では、H27年5月の人口分析調査・市民意識アンケートの「理想の子どもの人数を持つために何が必要と思うか」の問いに対し、「働きながら子育てしやすい環境の整備」が第1位、「雇用の安定」が2位、「子育て世帯に対する経済的支援の充実」が3位で、特に20代・30代の若い世代の要望が多いことを紹介しつつも、保育料の軽減や子どもの福祉医療の対象拡大、ひとり親家庭等への学習支援を例に挙げ、「サービスに対して適正な負担を求めながら子育て世帯への独自の経済的支援を進めている」、「低所得世帯や多子世帯、ひとり親世帯など、特に支援が必要な世帯の経済的負担の軽減に取り組み、子育て世代へ切れ目なく支援を進める」としました。

 低所得者層等に対する特別な負担軽減はもちろん必要ですが、子育て世帯に対し「子どもへの投資」といった考えのもと、広く負担軽減策を講じていくといった発想には立っていません。

 市では、放課後子ども総合プランに利用者負担を導入しようとしています。公平な税負担という論理で有料化を図ろうとするものです。
 この問題は、続く質問で取り上げました。

第五次総合計画で子育て支援策の具体的な指標と目標の設定を

 市では、第五次総合計画(長野市のまちづくりの最も基本となる計画)の策定を進めていますが、この中で、子育て支援先進都市を推進するため、具体的な指標と目標を設定すべきと質しました。
こども未来部長は「第五次総合計画では、市民の主観によるアンケート指標と客観的な統計データに基づく統計指標の2つを施策単位に設定し、他市との比較なども参考にして、目指す状態の進捗度合いや成果を測定することにしている」と述べました。
 
 そのうえで、「少子化対策、切れ目ない子ども・子育て支援」の分野では、4つのアンケート指標[➊子どもを産み育てやすい地域である、➋子育てしている家庭を温かく見守り、必要な時には手助けしている、➌幼稚園・保育所・認定子ども園における教育・保育が充実している、➍子育て中の保護者が悩みを抱えたときに相談できる体制が整っている]と3つの統計指標[➊合計特殊出生率、➋市内幼稚園・保育所等の保護者アンケート結果、➌高等職業訓練促進給付金事業による就業率]で調整中としました。

 目標については、現状地を踏まえ今後設定することとし、審議会における審議を予定しているとしました。

 学齢期における子育て支援のアンケート指標・統計指標をチェックする必要がありますが、全体的な格差と貧困の拡大、子どもの貧困対策という観点からも吟味していくことが必要です。

棚上げになっている「子どもの権利条例」の早期制定を質す

 市ではこれまで「子どもの権利条例の制定は検討課題」との認識を示しつつ、「子ども・子育て支援事業計画の策定後に検討を進める」としてきました。

 支援事業計画が策定され実施段階に移行していることから、子どもの権利条例の早期制定を改めて求めました。

 しかしながら、こども未来部長は、長野県がH26年7月に、「子どもへの支援は子どもの人権が尊重されることを旨としなければならない」ことを基本理念とする「長野県の未来を担う子どもの支援に関する条例」を制定し、子どもの人権侵害救済機関等の設置を盛り込んでこと、また、国がH28年5月に児童福祉法を改正し「児童は適切な養育、健やかな成長・発達や自立を保証される権利を有する」との理念を明確にし、児童虐待の禁止や児童相談所の体制強化を盛り込んだことなどから、「ここ数年で、子どもの権利を守るための法的・組織的な整備が進んできている」といった新しい状況認識を示し、「県条例の効果等を見極めながら、条例の必要性・方向性も含め、改めて関係各課で調査検討していきたい」とトーンダウン、後退姿勢を明らかにしました。

➡【関連記事】140314「3月議会の質問より➍…子育て支援先進都市のさらなる具現化を」

 「国や県が取り組んでいるから」と他力本願でよいのか!、市独自に「長野市は子どもの権利を尊重し施策展開を図っている」とする主体的な市民への、そして何よりも子どもたちへのメッセージを送ることが重要なのではないか!ということです。

 仕切り直さなければなりません。

経済的負担の軽減を具体的に質す…放課後子ども総合プランの有料化

 子育て支援に関する今回の質問では、まず、総論的に市長がめざす子育て支援先進都市の具体を質したうえで、各論の質問に移りました。

 放課後子ども総合プランの有料化問題と、ひとり親家庭の子どもの学習支援の問題です。

 次回は、9月市議会の質問より「放課後子ども総合プランの有料化を質す」を届けます。

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