長野以北並行在来線への新駅設置の現状と課題

 H26年度末の北陸新幹線金沢延伸に伴い、JR東日本から経営分離される長野以北の並行在来線は、第三セクターであるしなの鉄道が経営を引き受けることに決定しましたが、利用者数の現況や豪雪地帯であることから厳しい営業を強いられることは必至であり、利便性の向上・利用促進策の強化が迫られている課題です。
 長野以北の並行在来線は、長野市にとって通勤・通学・通院・買い物等の日常生活にもとより、全国につながる交通ネットワークの一部として観光・ビジネス面においても重要な社会基盤となっています。
 こうした中、新駅設置への具体的な動きが報道されたこともあり、31日の特別委員会でテーマの一つにあげて調査・協議を行いました。

特別委…新駅設置調査の資料より。小さくてわかりづらいですが、ご容赦を。


◆沿線地区の新駅要望は2カ所
 報道では北長野駅~三才駅間に新駅設置とされていましたが、実は2カ所で要望が出されていることが判明。一つは北長野駅~三才駅間(2.9㎞)で、古里・若槻地区住民自治協議会と長野高専から要望されているもの、二つは長野駅から北長野駅間(3.9㎞)で、今年5月に第二・第三・古牧・三輪地区住民自治協議会から要望されているものです。

◆H24年度内に新駅設置の調査実施、具体化はH27年以降
 市では、H24年度の新規事業として新駅設置の調査費を計上しています。具体的には、新駅利用見込み数や周辺の地勢、路線等を調査し、長野駅から豊野駅までの各駅間での候補地を選定した上で、候補駅の形態や規模等を比較検討し、整備計画の作成を展望するものとなっています。
 新駅は、新幹線の延伸に伴う並行在来線の経営を引き受けるしなの鉄道の新駅となることから、H27年度以降に具体化される見通しとなります。

◆北長野駅~三才駅間では北部幹線と鉄道の現JR鉄路とのクロス部分が有力?
 特別委でのやり取りでは、北長野駅~三才駅間においては、東に延伸される都市計画道路・北部幹線がJR鉄路をガードでくぐること、また単線区間であることなどから、用地買収等を勘案するとガード上に新駅を整備することができる可能性に言及、有力な候補地であることを示唆しました。これからの調査検討が大前提ではありますが…。
 一方、長野駅から北長野駅間では、複線区間に加え車両センターへの引き込み線があり線路が3本あること、さらに長野電鉄長野線など他の公共交通機関への影響や駅用地の展望等を考慮すると新駅設置に課題が多いことを滲ませました。

◆新駅整備に約2億円
 S60年にJRの新駅として整備された安茂里駅(1日平均利用者=1,046人・H22年度調査)は、跨線橋の費用を除き約9,000万円の事業費。H9年に新設された今井駅(1日平均利用者=1,743人・同調査)は五輪の選手村駅として整備されたことから事業費は6億5,000万円(駅舎の1億円含む)と桁違い。
 極めてアバウトですが、新駅には駅関連設備の整備と併せて約2億円位との見通しも示されました。

◆長野電鉄とのアクセス、路線バスとのアクセスを見通し、しっかりとした需要予測、費用対効果予測を
 しなの鉄道・長野以北区間への新駅設置は、駅周辺住民にとっては利便性向上につながる有効策であることは間違いありませんし、市域を縦断し、かつ他都市と結ぶ基幹線である現信越本線を守り、充実させることは不可欠です。
 しかし、一方で、長野電鉄や既存のバス路線、コミュニティバス路線など他の公共交通機関への影響や需要予測、費用対効果を見極めることが重要であることは言うまでもありません。
 また、調査研究が始まっている新交通システムの導入可能性、将来的な公共交通ネットワークのビジョンと関連させて、慎重に検討を進める必要があると思います。
 駅間の中間点を起点とする半径2㎞内の「駅勢圏人口」の数字も示されましたが、長野市北部の地勢や人口動態には現実感がないため、よくわからないというのが実情(これではいけないのですが)。
 市ではH13年度に実施したパーソントリップ調査結果の係数是正により、人口動態や市民の動線、利用交通モードを把握するとしていますが、市独自に最新のパーソントリップ調査を行い将来ビジョンにつなげていく必要性を痛感します。

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