全県に医療特別警報…対策は感染拡大抑止に有効か

新型コロナ感染症の「第7波」が猛威を振るう中、県は28日、全県に「医療特別警報」(確保病床使用率35%以上。28日で35.6%)を発出し、県独自の感染警戒レベルを木曽地域の「4」を除く地域でレベル「5」(感染が顕著に拡大しており、今後、医療提供体制のひっ迫が見込まれる状態)に引き上げました。

ご案内の通り、長野市内の感染拡大が顕著になっています。

行動制限に踏み込まず…

県は、「医療非常事態宣言(確保病床使用率50%以上)の発出を回避し、確保病床使用率35%を安定的に下回ることをめざす」としつつ、「現段階では、過去のレベル5で実施したような、会食における人数・時間制限やイベントの中止・延期等の要請、公共施設の休止等の強い措置は行わない」とし「重症者の発生を最小限に抑えるとともに、陽性者の増加を食い止め、医療の負荷を軽減することにより、医療のひっ迫を回避し、社会経済活動を維持することができるよう全力を挙げる」と強調します。

長野県の対策…自己検査の徹底など7項目

➊自己検査の推奨(受診前に検査キットで自己検査を。簡易検査で陽性の場合は、PCR検査を受けずに「見なし陽性」として確定診断)

➋診療・検査医療機関に検査キットを配布

➌宿泊療養施設を北信地域に増設(8月中)

➍高齢者施設従事者に対する検査の実施

➎高齢者施設等における自主検査を補助(検査キットの購入とPCR検査の実施費用全額)

❻社会経済活動を維持するための検査の活用(薬局における無料検査の継続、長野駅・松本駅で臨時検査拠点を開設、保育所等への検査キットの配布)

➐入院が必要な人、重症化リスクのある人への保健所業務の重点化

➡長野県の発表より

感染警戒レベル5の圏域の県民への「お願い」

➊重症化リスクが高い人の感染を防ぐ

65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人、その同居者は感染リスクの高い場面・場所を避けて行動。

65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人は、のどの痛み、せき、発熱等の症状がある場合、かかりつけ医に電話の上、速やかに受診。

60歳以上の人、基礎疾患のある人、医療従事者・高齢者施設従事者は、4回目接種の検討を。

➋陽性者の増加に歯止めをかける

感染防止対策(適切なマスク着用、喚起など)の徹底

65歳未満で基礎疾患がなく重症化リスクの低い人で、のどの痛み、せき、発熱等の症状がある場合、外出を控え市販薬などで経過観察。症状が続けば受診を。

帰省や旅行をする人、祭り等に参加する人、中高生やその家族は、感染リスクを下げるため、3回目のワクチン接種の検討を。

➌医療機関の負荷を軽減する

重症化リスクの低い人は、受診前に検査キット(薬事承認された抗原定性検査キット)で自己検査を推奨。

保健所は入院が必要な人、重症化リスクのある人への対応を重点に限定。


重症者の発生を抑える、医療負荷を軽減することにはまったく異論はありませんし大事な対処方針です。しかし、「陽性者の増加を食い止める」という点において、有効な対策が講じられているのか、いささか疑問が残ります。陽性者の傾向は全県で20代以下で46.1%で約半数、40代以下では77.3%で約8割です。長野市も同様の傾向です。子どもの感染、親世代の感染をいかに抑えるのかという視点からの対策が必要なのではないでしょうか。小児科における医療ひっ迫状況は、夏風邪等の流行もあり深刻化していることを考えるとなおさらでしょう。

子ども世代・親世代の感染をいかに抑止するか

陽性者のほとんどが「軽傷・無症状」です。無症状であることが意図せず感染を広げることにつながっているのではないか、保健所の業務軽減から濃厚接触者の特定を行わず、陽性者の責任で濃厚接触者に連絡し感染予防を喚起する方針に転換していますが、この転換が無症状感染を広げているのではないか、感染力の強いオミクロン株「BA.5」の特性、派生株でより感染力が強いとされる「BA.2.75」への置き換わりを見据え、濃厚接触者対応の強化が必要なのではないか、専門的知見はありませんが、そのように考えます。

そのためには、早期発見・早期待機の環境をつくること、すなわち検査体制の拡充が必要でしょう。

県では、発症していない県民を対象に「無料検査」(ほとんどが抗原定性検査)を再開しました。この機会の利用を周知するとともに、ワクチン接種の勧奨をはじめ、学校や幼稚園、保育所(保育所等は県が検査キットを提供することに)、児童センター・こどもぷらざ・児童センターへの抗原定性検査キットの無償配布と検査実施を市行政に働きかけたいと思います。高齢者施設、自宅介護世帯への対応も併せて実施すべきだと思います。少なくとも、県の対策事項が市で徹底されることをチェックすることが重要です。

また、7月29日段階で3,078人におよぶ自宅療養における健康観察が十分に機能しているのかのチェックも必要です。

いずれにせよ、民間イベントの中止を含めた制限、公共施設等の休館制限、感染リスクの高い世代の外出自粛等の行動制限を明確にした対策が必要ではないかと考えます。


ここ連日夕刻頃から、長野市内で大雨警報(土砂災害警報)が発令されています。戸隠では避難指示も出されました。防災無線をはじめ、気象情報・警戒情報に十分留意し、「いざ」に備えていただきたいと思います。

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