「緊急事態宣言」発令…自粛と補償を一体で

7日、東京や大阪など7都府県に対し、緊急事態宣言が発令されました。5月6日までの1か月間を期限としています。

自粛と補償を一体で

安倍首相は、宣言発令にあたり、「接触機会を7~8割減らすことで、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができる」と強調しました。その効果を担保させる条件は、十分な補償です。

野党は「自粛と補償を一体で」と強く求めていますが、首相は「民間事業者や個人の個別の損失を直接補償することは現実的ではない」とし、補償を行き渡らせることを拒否する姿勢を示しています。

補償なき「緊急事態宣言」では感染拡大は防げないと考えます。

中小零細企業に働く労働者、フリーランスの労働者、個人事業主等に対する休業補償・損失補償が不可欠です。

緊急事態宣言が出された区域の知事は、強制的に臨時の医療施設をつくるため、所有者の同意なしで土地や建物を使うことが可能になり、薬や食品の保管を命じられるようになります。違反した場合に罰則があるのは、この2つだけで、学校や大規模な施設、イベントについては、休校や休館などを要請・指示にとどまります。

交通遮断を伴う「都市封鎖」(ロックダウンという言い方は定義が曖昧です)は、新型インフルエンザ等特措法による緊急事態宣言では想定していません。

特措法は「国民の生命及び健康を保護し、国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、都道府県知事は住民に対し、生活の維持に必要な場合を除きみだりに居宅から外出しないことなどを要請することができる」としていますが、交通遮断に関する規定はなく、従って、あくまでも外出自粛の要請に留まっているのです。

感染症法第33条では、「都道府県知事は感染症の蔓延を防止するために緊急の必要があると認める場合は、72時間以内の期間を定めて、感染症の患者がいる場所や汚染された地域の交通を制限し、又は遮断することができる」としています。新型コロナウィルスも、その対象となりますが、新型コロナウイルスの封じ込めで必要とされる長期間の都市の封鎖を想定したものではないため、これを根拠に交通を遮断することは困難と考えられています。

首都東京を封鎖するということは、首都圏の通学・通勤情況を考えれば、現実的にも不可能でしょう。

「不要不急の外出を自粛する」という言い方も、何をもって「不要不急」とするかは曖昧ですが、感染拡大防止のためには、自制的な行動が問われるということですね。

さらに政府の対策本部では、医療体制の方針なども決まりました。PCR検査体制を一日2万件に増やすことや、病床の確保については、現在の2万8,000床を5万床まで増加、重症者の治療に必要となる人工呼吸器についても1万5,000台を確保するとともに、さらに増産を行うとしています。また、感染者がさらに増えた場合、軽症者は自宅療養が原則となり、東京五輪のために準備した警察のためのプレハブ施設なども活用するとしました。

医療崩壊を回避できる十分な体制になることを願わずにはいられません。

➡4月7日付の社民党「談話」を参考に転載します。


緊急事態宣言の発出について(談話)

社会民主党幹事長 吉田忠智

1.本日、安倍首相は、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に対し、5月6日までを期限として、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を発出した。新型コロナウイルスの感染を収束させることができず、人と人との接触を極力減らし、医療体制を整えるため、緊急事態宣言を出さざるを得ない事態に至ったことは残念であり、改めて厳粛に受け止める。初動の遅れをはじめ、この間の政府の対策が、後手後手で不十分だったことも影響しており、その対応は厳しく検証されなければならない。

2.緊急事態宣言の発出に当たって、衆参の議院運営委員会に事前に報告され、質疑が行われた。安倍首相は、「国家や国民がどのような役割を果たして国難を乗り越えていくべきかを、憲法にどのように位置付けるかは、極めて重く大切な課題だ」と述べたが、緊急事態宣言を改憲の露払いとすることは断じて許されない。政府が万全を期すべきは、感染拡大の防止と収束であり、安倍首相に猛省を強く促したい。緊急事態宣言は、私権制限を伴い、国民生活や経済活動に大きな影響を与えるものであり、国会の監視機能の強化がより要請されている。改めて集中審議の実施を求めていく。

3.緊急事態宣言に基づく総合調整や緊急事態措置の実施にあたっては、特別措置法第5条及び附帯決議を遵守し、国民の自由と権利の制限は必要最小限のものとし、私権を過剰に制限することのないよう強く求める。あわせて、懸念される医療崩壊を防ぐためにも、医療機関や保健所、医療従事者への支援、検査実施の拡充、万全な治療体制の整備・確立に全力をあげるべきである。

4.感染症のみならず、法律や経済、教育・福祉・社会保障など専門家の意見を踏まえ、科学的根拠に基づいた新型コロナ対策が求められている。不必要な混乱を避け、国民が冷静で的確な行動がとれるよう、政府及び自治体は相互に連携し、科学的見地から正確で必要十分な情報発信を適時・適切に行うとともに、周知徹底をはかる必要がある。また、後の検証に資するため、プロセスの透明性確保や記録の保存も重要である。

5.ひとりひとりが自らの生命と健康を守るため、自主的・主体的に判断して行動することが求められている。科学的根拠に基づいたウイルス感染の正確な知識と情報の提供、自粛や使用制限を求める政府や自治体への信頼が重要である。なによりも、生活や事業への補償がないままの大規模な行動制約によって、不安が激増し、多くの生活困窮者を生み出しかねない。感染拡大を防ぐためにも、外出自粛や休業には十分な補償がセットでなければならない。

6.感染症やその対策が、弱い立場の方へしわ寄せされたり、分断や差別につながったりすることがあってはならない。たとえば、外出の自粛や在宅勤務が呼びかけられる中、家庭でのストレスによるDVや児童虐待の増加を懸念する声が上がっている。国連のグテーレス事務総長も緊急の声明で、「経済的社会的な圧力が強まるにつれて、女性に対する家庭内暴力が世界中で恐ろしいほど急増している」と警告し、感染対策を実行する際に、女性に対する暴力の防止に重点的に取り組むよう求めている。相談窓口を閉めないことや、被害者の一時保護を柔軟に行える体制を整えることなど、DVや児童虐待への対応を強化する必要がある。

7.新型コロナウイルスの拡大は、これまでの政治、経済、社会のひずみや問題も明らかにしている。社民党は、厳しい状況に置かれているすべての皆さんの声をしっかりと受け止め、政府に対し必要な対応の実現を強く求めるとともに、感染拡大の防止と収束に向け、ただすべきはただし、協力すべきは協力する立場で全力をあげる。

以上


緊急経済対策の決定について(談話)

社会民主党幹事長 吉田忠智

1.政府は本日、「GDPの2割に及ぶ、世界的に見ても最大級の経済対策となった」と強調する、事業規模108兆円の緊急経済対策を決定した。しかし、財政出動は39兆円にすぎないし、補正予算案の総額も16兆8057億円にすぎない。納税や社会保険料の支払い猶予、融資枠を積み増して規模を水増ししたが、各国の対策に比べれば全く不十分である。「前例にとらわれることなくあらゆる政策手段を総動員することで思い切った措置」というが、期待外れも甚だしいし、今まさに困っている皆さんを支えるものとはいいがたい「不要不急」の対策が多く盛り込まれており、失望した。

2.「一定の水準まで所得が減少した世帯に対し、1世帯当たり30万円を給付する」というものの、実際の支給対象は限定的であり、ぎりぎりで生活している庶民の実態を理解しておらず、裏切られた思いである。所得が減っていなくても、学校の休校や介護の在宅切り替えなどで出費が増えた家庭の悲鳴は聞こえないのだろうか。個人ではなく世帯に支給することで、世帯主以外の解雇や減収は考慮されないし、1人暮らしも4~5人家族も同じ支給額となり、不公平感が高まる。最も困っている人たちに届く支援が求められるのに、DVなどで避難・別居している被害者にも届かない。自己申告方式は、資料作成と審査の手続きが煩雑になり、国民及び自治体の負担が増え、申告漏れや特殊詐欺の誘発の恐れもある。申請窓口に人があふれる等して、クラスターが起きるとすれば、本末転倒である。

3.新型コロナで困っていない人などほんの一握りであり、国民の大多数が何らかの被害や影響を受けている。「前代未聞の規模の経済対策だ」とどれほど強調されても、支給対象にならない世帯にとっては全く意味がなく、不平不満を招き、国民連帯どころか分断や憎悪、不信感を募らせるだけである。社民党は、選別主義的な現金給付ではなく、普遍主義的な現金給付を求める。安心して休業できるためにも、手間を省き、迅速に対応するためにも、要件を課さずに最低でも一人一律10万円給付などの支援を、政治決断で早期に実行するべきである。そのうえで、子育て世帯、高齢者世帯、障がい者等、事情に応じた上乗せを講じるとともに、住まいから追い出されないための支援、学生の奨学金免除やアルバイトできなくなっている学生が退学にならないようにするための授業料免除などの措置を実施すべきである。

4.フリーランスや個人事業主には最大100万円、中小企業には最大200万円の現金給付を行うというが、具体的な要件な内容が明示されていないし、支給も遅すぎる。「緊急」対策であるにもかかわらず、具体的な記述が少ない。それを隠すかのように、「一刻も早い再起動」、「一気に進める」、「思い切った支援策」、「V字回復のための反転攻勢」、「一気呵成に」など、言葉が踊っているようである。しかも、外出自粛を要請している中、「Go Toキャンペーン」や「国立公園等の自然の魅力を活かした誘客・ワーケーション」、「国土強靱化等に資する公共投資」の推進など、緊急対策にふさわしくない対策が多く盛り込まれている。

5.社民党は、自由にきめ細かく、より地域の実情にあった対応ができるよう、自治体向けの交付金を求めてきた。「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(仮称)」は一定評価するが、まだまだ不十分である。また、新型コロナの影響は全自治体に生じていることから、地方交付税の不交付団体や特別区を含め、必要な財源を措置するべきである。

6.とりわけ保育園や特養等、子どもや高齢者が集団で暮らす施設への配慮が大切であり、そこで働く保育・医療・介護従事者への支援も欠かせない。さらに強化すべきである。

7.「接待を伴う飲食業」や「風俗業」が除外されていることについて、本日、ようやく保護者への休業補償に風俗業従事者も対象に加え、雇用調整助成金も風俗業へ適用することになった。職業や事業を差別することなく、誰もが取り残されないような支援策を迅速に打ち出すべきである。また、厚生労働省が、緊急事態宣言に基づいて営業停止の要請・指示がされた場合、「労働基準法上、不可抗力として休業するものであれば、使用者に休業手当支払い義務は生じないと考えられる」としていたことから、「企業が休業手当を支給しなくてすむ」といった臆測が出ていた。本日、加藤厚労相は、特定の施設の使用が制限された場合の休業手当について「一律に、直ちに支払い義務がなくなるものではない」と述べた。安心して休業要請や外出自粛にこたえられるように、きちんとした対応や他の代替策を明確にすべきである。

8.全世帯に布マスク2枚を配布することも盛り込まれた。マスクを配布するのであれば、医療機関や保育所、学校、介護施設、公共交通機関などに優先して供給するようにすべきである。

9.経済的損失に対する補償がなければ、自粛要請は実効性のあるものとならない。政府は、政府の要請によって生ずる様々な課題に対して、責任を持って対応するべきであり、そのことが感染拡大の防止につながる。政府による自粛要請で生じる損失の補償に関し、「民間事業者や個人の個別の損失を直接補償することは現実的ではない」という姿勢を転換すべきである。社民党は、一人も取り残さないという社民主義の観点から、国民の生活全般に広がる不安と影響を少しでも和らげることを最優先にした支援策の強化を引き続き求めていく。

以上

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