生活保護申請窓口への防犯カメラ設置を考える

松本市議会…設置中止を求める請願否決に

松本市役所の生活保護課の窓口などへの防犯カメラ設置が問題として浮上し、設置中止を求める市民団体の請願は市議会総務委員会で賛成少数により不採択となり、本会議でも否決されてしまいました。

松本市は、来年1月の設置に向け業者との契約を進める方針と伝えられています。

市側は新たに設置する防犯カメラは録音や常時監視をせず、撮影データは原則7日間保存後に上書きするとし、「利用や第三者への提供は厳格に制限する」要項により運用するとしています。

松本市における生活保護窓口への防犯カメラ設置は、今年2月に来庁者が同窓口で刃物をちらつかせるなどして公務執行妨害の疑いで逮捕された事件などを踏まえ「犯罪防止が目的」としてきました。

金沢市役所で3月、職員4人が刺傷される事件が発生したことも背景となっているようです。金沢市では事件後に防犯カメラを16台から34台に増設して対応しているとされます。

相談を委縮させ、生存権を侵害しかねない重大な問題

しかし!です。

果たして、生活保護申請窓口などに防犯カメラを設置し監視する必要があるのでしょうか。

松本市側は「来庁者を監視するつもりはない」とする一方、「委縮は全くないと言い切れない」との認識を示しました。議決を得たからと事を粛々と進めるのではなく、いったん立ち止まり、相談者の人権尊重と職員の安全確保の両面から、十分な検討をし直す必要があると考えます。

役所側がどれだけ「市民を監視するつもりはない」と強調しても、生活保護窓口など福祉関係の窓口を訪問する市民にとっては、カメラの存在が心理的な圧力となり、相談をしづらくさせ、結果として憲法が保障する生存権を抑制することにつながる問題であり、なおかつ市民のプライバシー権を侵害する問題であると考えます。

庁内への防犯カメラの設置は施設の安全確保という観点から一概に否定するものではありませんが、市民の相談窓口におけるカメラの設置は、同じ土俵で論じられるものではありません。経済的にも心理的にも追い詰められた状況で来庁・相談する市民の拠り所へのカメラの設置は、「犯罪防止を目的」とした特定市民の監視に他ならないことを重大視すべきでしょう。

長野市…相談窓口に防犯カメラ設置せず

長野市役所では本庁の第一庁舎と第二庁舎に20台の防犯カメラを設置しています。

第一庁舎では、庁舎と直結する芸術館が夜間まで開いていることと庁舎内の来庁者用の階段が閉鎖されずオープンなことから、1階出入り口とエレベータの前、各階の階段を監視する防犯カメラが設置され、第二庁舎では、1階出入り口のみに設置されているとのことです。

生活保護申請の窓口となる生活支援課をはじめとする相談窓口及び各種申請窓口には設置されていません。

ただし、生活支援課では、威圧や不当要求があった場合に限り、職員がハンディカメラとICレコーダーで撮影、録音できる態勢はとっているとします。

撮影前に相手に告知することなどを定めて管理運用基準も設けているとのことで、実際に使用した事例はなく、「安心して相談できる環境や市民のプライバシーと職員の安全を守ることの両方に配慮し、現在の方法を採用している」としています。

例えば、こうした長野市のような取り組み事例を参考に松本市においても再考願いたいものだと考えます。

いずれにしても、松本市の事案を他山の石として、長野市における市民のプライバシー保護、安心な相談窓口の環境確保を図っていきたいものです。