少子化に対応した「新たな学びの場」を質す【12月議会の質問より➎】

「少子化に対応した子どもにとって望ましい教育環境の在り方」を審議してきた「活力ある学校づくり検討委員会」が答申した『審議のまとめ』について、市教委は答申を尊重し取り組みを進めるとしています。

昨年11月、小中の在り方調査研究特別委で視察した芋井小学校3年生の授業

『審議のまとめ』について、どのように市民と共有していくのか、さらにまとめが提示した「発達段階に応じた新たな学びの場」の具体は何なのか等について代表質問で取り上げました。

再質問したい答弁内容だったのですが、時間がなく取り上げられませんでした。まずは第一弾の質問という位置づけにしときます。

「少子化に対応した子どもにとって望ましい教育環境の在り方」…審議のまとめのポイント

『審議のまとめ』のポイントは、小学校6年間と中学校3年間を連続した9か年ととらえ、小学校低・中学年期における「個の育ち」、小学校高学年期における「集団の中での育ち」、中学生期の「自立への育ち」といった「発達段階に応じた新たな学びの場」が必要であること、そして「新たな学びの場」を「できる限り地域に学校を残したい」との観点と「多様性ある集団の中での学びを創る」観点の双方から創造していきたいといった視点、考え方を打ち出していることにあります。

また、「小学校は一つの学年に複数の学級が望ましい」「中学校は小学校より大きな集団が望ましい」との考え方も示されました。

長野市のすべての児童生徒にとって、義務教育課程9年間を連続・連携させ、それぞれの発達段階に応じ、地・徳・体バランスの取れた人間力、たくましく生き抜く力が養われる教育環境づくりの指針となることを期待している一人ではあります。

問われる「新たな学びの場」の具体

しかしながら、こうした視点、考え方に基づき、「どのように発達段階に応じた新たな学びの場を作り出していくのか」具体策が提示されていないことが課題であると考えています。

私は、共有すべき視点と具体的な対策が一体となって初めて、それぞれの地域の特性に応じた教育環境の再構築に対する合意形成を図ることができるのではないか、小中学校の在り方は地域ごとに優れて個別具体的な課題であり、であるからこそ、具体策の原案を早期に整理し、市民に提示し、議論を起こし合意のもとにまとめ上げていくことが重要であると考えます。

こうした問題意識を持ちながら質問しました。

中学校区単位の説明会を

教育委員会では、『審議のまとめ』について市PTA連合会をはじめ、校長会、住民自治協議会等への説明会に取り組んでいます。寄せられている特徴的な意見は何か。さらに、今後、中学校区単位の説明会、意見交換会に組織的に取り組む必要があると提案しました。

教育長は、『審議のまとめ』をうけ、「『これからを生きる子どもたちの教育』と題して市PTA連合会に説明し、また、連携推進ディレクターが学校長と個別に対話を進めている。多くの校長が答申の内容に共感し、異学年合同授業などの改革に取り組み始め、多様性のある集団の中での学びを話題にしながら、保護者・地域と一体となって考えていくことが大事であると認識するようになっている」、さらに11月30日には第一地区住自協からの要請により連携推進ディレクターが説明を行い、「ある程度、理解いただけた」とし、「現在、地区の役員と未就学児の保護者をはじめ地域に説明・共有する場をつくり、理解を深めてもらえるよう、連携推進ディレクターが各地を訪問中」としました。

今後は、「まずは住民自治協会と説明会の持ち方等について意向を確認し取り組む」とし、「中学校区単位の説明会については、将来、必要になるであろう」と答弁するにとどまりました。

『審議のまとめ』が打ち出した視点、考え方を共有するには、まずは住自協を単位として学校・地域・保護者による意見交換の場を優先したいする考え方は理解します。

しかし、「新たな学びの場」の具体を共有していくためには、小中連携教育に取り組み始めていることを踏まえ、中学校区単位での合意形成についてしっかりとした問題意識を持ってもらいたいと考えます。

「小学校低・中学年だけの学校」「高学年の統合授業」の具体は

教育委員会が『審議のまとめ』に基づき、説明会用に作成した資料では、小学校の低・中学年、1年生から4年生について、「地域の見守りの中で育つことや通学距離の問題も配慮し、児童数が減少した場合には、低・中学年だけの学校も考える」と初めて具体的な方向を示しました。

信濃毎日新聞が昨年2月に報じた「5・6年生の高学年は2学級以上になるように統合する」考えを公式に追認した格好です。

すでに児童数が減少している現実を踏まえれば、少子化に対応する一つの打開策とも考えられますが、メリット、デメリットをどのように整理し、考え方を提示したのかが全く見えません。

パブコメでは、「学校区の変更や高学年同士の編成による学校設立が必要」という意見と、「小規模の学校は1~4年生だけとなり、最上級生としての6年生の育ちがなくなってしまう」との不安を表明する意見が両論示されました。議会が主催した市民との意見交換会でも「違和感」を指摘する意見が相次ぎました。

小学校高学年の統合授業方式の具体像は、今後、いかなる工程で原案をまとめ、市民に提示し市民合意をつくる考えなのかを質しました。

教育長は、10月の市P連懇談会で、「18歳までに育てたい具体的な姿や能力・態度」と「発達段階に応じた新たな学びの場」をわかりやすくするために「小学校低・中学年」と「高学年」の二つに分けて説明したものと述べ、活力ある学校づくり検討委員会の審議の過程で、「『小学校は複数の学級があるとことが望ましい』とされる一方、『低・中学年は地域の見守りの中で育つこと』『現状の地域に近いところに学びの場かあってほしい』との願いが共有され、『小学校低・中学年だけで構成する学びの場を考えてはどうか』」とまとめられたものと答弁。

また、「審議の中では、現在とは異なる学校の形態を想定したメリット、デメリットを整理されていない」と述べました。

そのうえで、「新たな学校の形態については、今後、各地で未就学児の保護者をはじめ、市民に説明し理解が深まる中で、具体像が明確になってくるものと考える」と答弁しました。

また、小学校高学年の統合授業方式の具体像については、「答申」を受けて、「異学年合同の連学年授業、一部教科担任制の試み、中学校区における小中教員の一緒の研修などの動きが出始めていることから、こうした取り組み等への理解が深まる中でイメージが具体化されるのではないかと考える」としました。

何だか他力本願的というか、市民の議論の成り行き次第的な感じで、釈然としない答弁という印象です。

市民の理解を深めることが大切であるという問題意識は無論、共有しますが、教育委員会として、学校と連携し、どんな「新たな学びの場」「新たな学校の形態」を目指すのか、抽象の域を出ないばかりか、全く意味不明な答弁との印象がぬぐえません。

理想として掲げた「新たな学びの場」の具体像がたたき台として提示されなければ、市民の合意形成はままならないと考えます。教育委員会の主体的な取り組みが問われます。

学校の統廃合問題にどのように対応するのか

『審議のまとめ』は、いわゆる「学校の統廃合や規模適正化等の配置計画の類ではない」ことを強調しました。

それでは教育委員会は学校の統廃合についてどのように考えるのかが問われるでしょう。まとめを踏まえ、小学校低・中学年の学校を維持する、高学年は統合授業により中学校との連携・接続を円滑に行うという考えであれば、その段階で、小規模中学、大規模中学が併存する中、中学校の統廃合という問題が浮上するのではないのでしょうか。

学校の統廃合問題にどのように対処・対応しようとする考えなのかを質しました。

また、少なくとも学校の統廃合は、上からの押し付けではなく、当該校区の地域住民の発意によることを原則にすべきと求めました。

教育長は、「(統廃合問題は)子どものことを第一に考え、将来の児童生徒数の推移も併せて説明し、議論を深める中で、統廃合等の問題を解決してもらえればと考える」「学校の統廃合は住民の発意によることを大切に進めていく」と答弁

「住民発意による」姿勢を明確にした点は評価したいと思いますが、「議論の深まり」を待っている間に、どんどん深刻さが増していくことも危惧されます。中山間地域では人口減少・少子化が急ピットで進行します。後手に回らないよう、教育委員会としての対応を注視するとともに、他自治体の取り組みを調査・勉強し、具体的な提案につなげていきたいと考えます。

夏休みの延長にどう対応するのか

小中学校のエアコン整備計画がまとめられました。確実に整備が進むことを大いに期待するものです。

そのうえで、県教委が「夏休み期間の延長の検討」を打ち出したことを受け、全小中学校で足並みをそろえ実現する方向で早期に対応方針を示すべきではないかと質問しました。

教育次長は、「延長の方向性を大切に考え検討していく」とし、「授業時間をどう確保するか」「休み中の子どもの居場所をどう確保するか」「本当に子どもにとっていいのか」等の意見、課題への対応を、県の動向を踏まえながら検討していく姿勢を示しました。

現段階として、延長の方向で課題解決の道を探るといったところです。

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