小・中学校のエアコン整備着手へ…来年夏までに30校、再来年夏までに30校で計画

市教育委員会は、19日の政策説明会で、小中学校クール化プロジェクト=冷房設備の整備方針を明らかにしました。

長野市では、これまでに市長の任期中である2021年度までにエアコン整備を完了させる方針を示し、今年度、温湿度環境調査や小中3校でのテスト機器設置による実証、民間のアイデアを募るサウンディング型市場調査を実施、このほど国のH30年度補正予算で小中学校のエアコン整備にかかる臨時交付金が決定したことから、前倒しでエアコン整備に着手することになります。

12月補正予算に24億円、ほぼ1年かけて60校にエアコン設置へ

小中学校78校・1595教室(普通教室・特別教室・職員室など)の内、来年度中までに60校、1566教室でエアコンを整備する計画で、12月市議会定例会に約24億円の補正予算案を提出します。

具体的には、来年夏までに30校、再来年夏までに30校の計画で、小学校を優先し、特に小学1年生の教室は来年夏までに完了させる計画です。

整備予定の学校リストは下記の通り(2018年11月19日現在)。

このリストによれば、来年夏までに全教室に整備する30小学校、小学1年生の教室優先の小学校7校での整備が進み、第2段階として来年度中に整備する中学校17校計54校が確定している計画となります。

60校分で補正予算を計上していますが、事業そのものが来年度にまたがることから、今後の検討により優先順位が上がる学校があるということでしょう。

上記のリストでは、④の23小中学校で、2019年の状況をみたうえで対応を判断するとされ、また、標高が高く低地より室温が低い学校や小規模校は、既に冷房機器が整備されている教室の活用や運用面での工夫による対応も進めるとされています。

状況を見ながらというのもやむを得ないところでしょうが、児童・生徒の健康管理に不公平感が生まれないようにすることが重要でしょう。

店舗事務所用の3相200ボルト、天井吊型エアコン

整備方針策定にあたっては、内部設計と外部設計委託の併用や商用電力と発電機の併用により、整備期間の短縮を図ることや、冷房機器の能力を必要最小限に抑えること、さらに国補正予算に伴う有利な財源を活用することに留意し、PFI方式やリース方式をとらず従来型の発注方式で整備を進めることにしたとされます。

各教室に店舗事務所用の3相200ボルト、天井吊型エアコンを1台整備することになります。

整備機器の基本的な考え方では、1回の普通教室の冷房能力を通常の60%程度、2回以上の普通教室では通常の80%程度になるような機器を設置するとします。温湿度調査の結果を踏まえ、個々に判断選択する考えのようです。28度設定を基本にしつつ、教室の面積や学級の生徒数に応じ、必要な冷房能力を持った機器ということのようです。

電源は商用電力(キュービクル改修が必要)と発電機の併用で、発電機は冷房使用期間のリースとする考えです。
ただし、発電機の場合は、安全対策や騒音・排気ガスへの配慮が必要となることから、設置可能な学校を調査した上で確定するとのことです。

各学校で、設計が完了し次第、順次、入札に入りたいとしました。

機器の耐用年数は13年から15年を想定しています。

いずれにしても、全ての小中学校で全ての児童・生徒の健康管理が行き届く学習環境の整備につながることを願うものです。

全78校整備の総事業費27億5,000万円の内、12月補正で約24億円を計上

市教育委員会では、全78校の約1,600教室すべてにエアコンを整備する場合の総事業費を約27億5,000万円と試算、H30年度補正予算で約24億円を計上するとします。

24億円の財源は、国庫支出金7億6,700万円、補正予算債による借金が16億2,100万円、一般財源は900万円です。

補正予算債は、元利償還金の60%が交付税措置されることから、実質的な市の負担額は事業費の27%、6億5,000万円程度になるとします。

でも、地方交付税には明細がありませんから、6割が交付税措置されるといわれても、確証があるわけではありませんし、借金は借金です。国の借金も膨らみます。

とはいえ、国の制度を活用しない手はありませんから、全体的な事業費の圧縮につながるよう今後ともチェックが必要でしょう。

当初、エアコン整備事業費は約40億円と試算されていました。この試算額の合理的な確実性は定かではありませんが、40億円から27億5,000万円に減額、圧縮化されたことは評価したいと考えます。店舗用業務エアコンとしたことや期間限定で発電機を併用することで、経費の圧縮がされたものと受け止めています。

サウンディング調査による民間アイデアは活かされたのか

市では、クール化プロジェクトの実施にあたり、民間アイデアを募るサウンディング型市場調査を7月に実施しました。

10月1日付「長野市立小中学校クール化プロジェクトに関するサウンディング型市場調査の対話結果の公表について」

今回の整備方針の策定にあたり、市教委では「整備手法や冷房機器の種類の違いによる特徴が明らかになった」としていますが、国の臨時交付金の決定に伴う対応や早期整備の必要性に迫られ、民間アイデアを十分に検証する余地がないまま、整備方針を策定せざるを得なかったのではないかと推察します。

調査では電気・機械設備や金融・リース、機器製造販売など41事業者が参加し、整備する機器では、三相EHP(電気利用)やGHP(ガス利用)、単相200ボルト(家庭用ハイパワー)、地中熱や蓄電池の活用が、また整備手法ではリースをはじめ従来型手法、PFIなどの提案があったとされます。それそれの機器の優位性や多様な整備手法が示された格好ですが、PFIは時間がかかりすぎること、リース契約は国の臨時交付金の対象とならないことなどから、ある意味、オーソドックスな機器と手法が選択されたように受け止めています。

環境負荷が少なく持続可能性を考えると、地中熱や蓄電池の活用手法に魅力を感じますが…。

また、ハード、ソフト両面で市場調査を行いましたが、ソフト面での提案は少なかったようです。今回の整備方針でもソフト面での室温調整策は提示できていません。整備後の状況を的確に検証しながら、これからの課題となります。

児童センター、子どもプラザにもエアコン整備

放課後子ども総合プランの施設である児童館・児童センター、学校内の子どもプラザへのエアコン整備も急務です。とくに夏休み中にも使用する施設ですから、万全の対策が求められます。

市こども未来部では、小中学校クール化プロジェクトに合わせ、児童館・児童センターでは26施設で来年6月までにエアコンを整備し全施設で完了させ、子どもプラザでは、来年度予定していた16施設の内、14施設で前倒し整備する方針を示しました。

児童館・児童センターでは、主に運動で使用する遊戯室や廊下、トイレは整備対象から除くものの、事務室や学習スペースとして使用している遊戯室は整備対象としています。

子どもプラザでは、専用室の場合と共用室の場合で、財源が異なることもあって整備時期に違いが生じるようです。

来夏には間に合わないが2019年度中の整備を含め検討するとされる子どもプラザ施設は9小学校で、専用室が安茂里・共和・寺尾・真島・信州新町・鬼無里、共用室が松ヶ丘・塩崎・中条の各小学校です。

改めて、早期の整備方針の明確化を求めていきたいと考えます。

学校ごと、或いは数校にまとめての入札・発注に…市内事業者が受注できることがカギ

従来型の入札・発注方式で事業者を選定することになります。市教育委員会は、学校ごとに設計ができ次第、数校にまとめる方法も含めて順次、入札にかける考えを示していますが、機械設備工事、電気設備工事を市内事業者が受注できる環境を保障していくことが重要です。

今後、発注の方法、市内事業者優先の方法等の明確化を求めていきたいと考えます。

それにしても、全国的にエアコン整備が進みますから、エアコン機器の供給が追い付かず、整備が間に合わないという事態に陥らないよう、細心の注意と情報収集が不可欠です。

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